
ホールド性を高めたスポーツシートは、あくまで高いGのかかるモータースポーツやスポーツ走行向けで、街乗りメインの使い方には少々オーバースペックなのでは?というイメージを持つ人は多いはず。
■東京←→名古屋間の一般道走行でスポーツシートを試す
そこで、運転席と助手席をブリッドのセミバケットシート「ユーロスターⅡクルーズ・グラデーションロゴBE(17万1600円~)」に換装したハイエースバン スーパーGLロング標準ボディ標準ルーフ(FR・ガソリン)で東京−名古屋間を一般道オンリーで往復。総走行距離が約900kmに達したロングドライブが苦行になるのか、楽しくなるか、スポーツシートの疲労軽減効果やいかに……
出発地は東京都心で、目的地は侍ジャパンの強化試合に沸く名古屋市内(取材日は2026年2月27日)。「大谷翔平と同じ空気を吸いたい」という物見遊山的な発想と、いかにも名古屋らしいカットが撮りたくて、名古屋城の天守閣とクルマが一緒に写せる名城公園脇の「御深井大堀」にセット。高速道路を使えば3時間足らずだが、あえて下道を選択。夕方の帰宅渋滞と重なったため、カーナビの検索結果では国道1号→23号を使って到着予想時刻は約8時間後。
覚悟を決めてユーロスターⅡクルーズに換装されたハイエースのコックピットに収まると、座り始めこそタイトな印象を受けるものの、なじんでくると両脇とももまわりの包み込まれる感じが心地よく、長丁場でも頑張れそうな気分になる。
一方、スーパーGLの純正シートはヘッドレストが分割式でホールド性を高めた形状にするなど、商用車のシートとしてはおごった仕様だが、ハイエースバンベースのキャンピングカーやトランポ、ノーマル車に数多く乗ったことのある筆者としては、リヤサスが乗り心地に不利なリーフリジッドということもあり、お世辞にも快適とは言い難い。
夕方の酷い渋滞にハマりながらスタートから約3時間費やし、休憩を挟まずに神奈川県を抜けて静岡県に入ったあたりでも腰や肩まわりの疲労は感じられない。
長時間座り続けてみて純正シートとブリッドの違いをもっとも感じたのが、座面や腰まわりのクッション。純正は時間の経過とともにクッションが利かなくなりお尻と腰が痛くなってくるが、ブリッドは長年のシート作りの知見を生かした絶妙な配分のウレタンフォームが体圧を分散し、体への負担を和らげてくれる。
加えて、エンジンとタイヤの真上に運転席があるキャブオーバー車の構造上避けられない、路面からの入力やエンジン・駆動系の振動がシートに伝わるのを抑えて、疲労軽減に寄与する。
ホールド性に優れるブリッドのシートは、長時間座っても体のズレが少ない。純正シートはシートポジションを正しく取り、深く腰かけているのに時間が経つとお尻と座面、背もたれがズレてきて、その都度姿勢の修正を余儀なくされる。
ブリッドは両脇とももが自然に引き締められ、腰まわりが背もたれから離れず猫背にならない。骨盤を立てた正しい運転姿勢を意識せずにキープできるのでドライバーの身体的ストレスが軽減される。
■あえてスポーツシートで仮眠を試みる
静岡県内は高規格のバイパスを使って一気にスルー。愛知県に入ったあたりで日付が変わったので、国道23号線(名豊道路)の「道の駅とよはし」に立ち寄り、あえてリヤシートではなく、運転席のユーロスターⅡクルーズをリクライニングさせて2時間弱仮眠してみた。
ハイエースバンには貨物車ならではの装備で、キャビンと荷室を仕切るルームセパレーターバーがBピラーに付いているのでリクライニングの角度が制限されるが、サイドサポートが体を優しく包み込み、体圧を分散させるクッションが効いているおかげで熟睡でき、起床時にも体の痛みはなかった。
名古屋城には休憩2回を挟んで約8時間で到着。390km走った。「3時間・300km疲れないシート」を目指して作られているブリッドシートの快適性は下道ドライブでも十分に体感できた。
■復路は峠道を寄り道
東京への復路は国道19号・20号で木曽から諏訪湖をかすめて山梨に抜ける「中山道・甲州街道」ルートで。ワインディングでの着座感も確かめてみたくなり、道中は「東濃なんじゃもんじゃ街道」や塩尻峠の裏道、中央本線沿いに走る「七里岩ライン」に寄り道。
ユーロスターⅡクルーズはお尻と背中がシートから離れないことにより、正しい運転姿勢をキープできることは往路で確認済みだが、コーナリング中に強い横Gがかかるワインディングではいっそうメリットを体感できた。
張り出したショルダーとももをカバーするサイドサポートが体全体をホールドし、Gの影響を受けず適切なシートポジションを保てるうえに、振動を抑えるウレタンクッションのおかげで大きなピッチング(上下動)でも視線がブレない。
コーナーが続きステアリングを切り返す場面では脇と肩の引き締め効果でスムーズな「ハンドルさばき」をアシスト。ペダル操作に対してはももが開くのを防ぐサイドサポートにより、体が偏りやすいコーナリング時でも微細なペダル操作が可能になり、ブレーキの踏力を確実にペダルに伝えられる。
ハイエースの標準幅車にユーロスターⅡクルーズを装着する場合に留意点がある。それはガソリン車のみが適合するということ。ディーゼル車はBピラーとシートのショルダー部が干渉するために装着できない。
試乗車はガソリン仕様のFRだが、Bピラーやリヤクーラーとのクリアランスも確保されている。高級感のあるスウェード調生地が、バン上級グレードのスーパーGLだけの表皮巻きフロントドアトリムと調和する。
ユーロスターⅡのスポーティなデザインをベースにショルダー幅を抑えてサイドサポートを浅く、座面をフラットにしたエルゴスター(16万3900円~)は、ハイエースのようなコクピットがタイトな車種にも適している。
■BRIDEシート“こだわり”ポイント
バックレストのリクライニング角度を調整しやすいスーパーリクライナーを装備。スムーズなポジション調整を可能にするクイックレバーはピラーとの緩衝を防ぐコンパクトでスリムな作り。
ドライバーの使いやすさと疲れにくさを重視したニューエルゴノミクスデザインを採用。体を優しく包み込むように設計されたフォルムと高密度ウレタンフォームがドライバーへの面圧を均等にし、体圧を分散するために快適性とホールド性に優れる。
ユーロスターⅡクルーズはリニューアルを機に、バックレストのポケットとヘッドレスト後面のBRIDE刺しゅうが追加された。別売りのアームレストやオプションのシートヒーターも設定する。
■デイリーユースも難なくこなし、安全運転にもつながるカスタムだ
タイムを削り、速く安全に走るためのスポーツ走行に適した設計であること=一般道での運転のしやすさや、正しい姿勢を無意識のうちに保てることがロングドライブでの疲労の少なさにつながることを実感。快適性を高めて疲労を減らし、ステアリングとペダルの操作性を高めるシート交換は費用対効果が高く、ドライバーと同乗者に優しく安全運転にもつながるカスタムであることを再認識できた。
<文と写真=湯目由明>
■問い合わせ先
ブリッド
TEL:052-689-2611
https://brideseats.com/