高級コレクターズカー市場の先行指標「アメリア・アイランド」は今年も絶好調!

2026年のコレクターズカー・オークション・シーズンは、フロリダ州アメリア・アイランドで幕を開けた。その直前、2月28日には米国とイスラエルがイランへの大規模な軍事作戦(米国側:Operation Epic Fury、イスラエル側:Operation Roaring Lion)を開始。中東情勢を一変させ、ホルムズ海峡では150隻超の貨物船・タンカーが立ち往生するなど、世界の原油・海上輸送にも影響が今なお及んでいる。

そんな物騒な空気を尻目に、フロリダの陽光と潮風の下に集結した富裕層たちは財布の紐を緩めるどころか、争うように解いてみせた。相次ぐ落札価格記録更新で、今年のコレクターズカー市場は、出だしから”全開”の様子である。

1996年、ジャクソンビルのビジネスマンでカー・コレクター、そして『ロード&トラック』誌のカメラマンでもあったビル・ワーナー氏が、アメリア・アイランドの地にコンクール・デレガンスを立ち上げた。当時の出展車両はわずか163台、来場者約2,200人。”カリフォルニアにペブル・ビーチがあるように、フロリダにも格調あるクラシックカー・イベントを”という思いひとつから始まった小さな催しが、やがて世界規模の市場を動かすイベントへと育っていった。2021年には、クラシックカー保険最大手でモータースポーツ文化の担い手でもあるハガティ社が運営権を取得。イベントはさらなる進化を遂げ、現在は「The Amelia(ジ・アメリア)」として知られる。

コレクターズカー・オークションにとって、会場選びは戦略の核心だ。良い車を持つコレクターと、良い車を買いたい富裕層バイヤーを、同じ場所・同じタイミングに集める必要がある。そのためにオークション会社は、熱心なカー・エンスージアストが自然に集まる場所、すなわち権威あるコンクール・デレガンスの会期に合わせて開催する戦略を採る。最初に乗り込んだのはRMオークションズ(後のRMサザビーズ)で、コンクール黎明期から会場のリッツ・カールトン内でオークションを開始。そして、グッディング&カンパニーやボナムスが続き、アメリア・アイランドはオークション激戦区へと変貌していった。

「3月上旬、冬が明け切らない東海岸において、陽光降り注ぐフロリダで開催される」というロケーションも見逃せない。

現在、アメリア・アイランド周辺には複数のオークションハウスがそれぞれ独自の会場を確保して競い合っている。ブロードアローはハガティ傘下として、コンクール公式オークションの座をリッツ・カールトンに構える。グッディング・クリスティーズは車で10分ほどのオムニ・アメリア・アイランド・リゾートに陣取り、ボナムスはフェルナンディーナ・ビーチのゴルフ場を会場とする。

そして今年最大のニュースが、RMサザビーズの「離脱」だ。RMサザビーズは2023年のアメリア・アイランド開催をもって同地でのオークションを終了すると発表し、2026年はマイアミで自ら育てた「ModaMiami」コンクールと連携する新フォーマットを選んだ。アメリア・アイランドで約24年に及ぶ歴史を持つ最古参オークション会社の撤退は、業界全体に少なからぬ衝撃を与えた。

もとい。

グッディング&カンパニー(現在はグッディング・クリスティーズ)には少し説明が要る。グッディング&カンパニー創業者のデイヴィッド・グッディング氏はもともとクリスティーズでキャリアをスタートし、同社の自動車部門グローバルヘッドにまで上り詰めた人物だ。その後独立し2003年に立ち上げたグッディング&カンパニーを、クリスティーズが2024年末に買収・改称したのが現社名である。

そんなグッディング・クリスティーズは3月5〜6日、オムニ・アメリア・アイランド・リゾートで開かれた16回目となるオークションでは、総落落札価格7,100万ドル超、成約率94%という圧巻の結果を残した。出品124ロットのうち13台が100万ドルを超え、2010年の初開催以来、同会場で歴代2位の総額となった。

1960年式フェラーリ250 GT SWBカリフォルニア・スパイダーで1,650万5,000ドル。落札の瞬間、会場から割れんばかりの拍手が沸いた。続く1951年式フェラーリ212エクスポート・スパイダーは341万5,000ドル。映画監督ロベルト・ロッセリーニがイングリッド・バーグマンとトリノ・モーターショーを訪れた際、一目惚れして購入した伝説の個体だ。ロッセリーニの美意識はスクリーンの外でも徹底していた、ということだろう。

100万ドル超えの13台に加え、今回は5つの世界オークション記録が塗り替えられた。1932年式ミラーFWDスペシャルが330万5,000ドルで従来の記録を100万ドル上回り、1969年式ランボルギーニ・ミウラP400 Sが259万ドル、1974年式フェラーリ・ディーノ246 GTSが132万5,000ドルでそれぞれモデル記録を更新した。そして、1992年式メルセデス・ベンツ500Eは凄まじかった。走行距離がわずか2335マイル(約3760㎞)、アメリカの有名コメディアン、ジェリー・サインフェルドが所有していた履歴、と好条件がそろっていたが、なんと落札価格は35万7,000ドルに達した。これは従前の最高落札記録の3倍超(!)だ。

東海岸の冬がまだ明け切らない3月上旬というジ・アメリアの開催時期は絶妙で、業界ではこの週の落札結果をその年の高級コレクターズカー市場の”先行指標”として注視している。混沌とした世界情勢とは裏腹に、コレクターズカー市場は絶好調な出だしだ…

文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)