
2019年に結成された「横浜青葉NEXUS」の練習は週末の半日のみ。「何が何でも勝つ」ことよりも「野球は楽しむもの」を大事にして立ち上げられた少年野球チームだ。前回取材に訪れた7年前は14人だった部員も今では45人になったという。現在の「横浜青葉NEXUS」をグラウンドに訪ねた。
<知恵を絞った公園でのウォームアップ>
この日練習が行われたのは青葉区内の公園。結成当初から連盟には属していないが、連盟未加入を理由にグラウンドを貸して貰えないことは今でもあるという。
2月のオフシーズンということもあり、練習前のウォームアップに多くの時間が割かれていた。低い手すりを平均台に見立ててバランスをとりながら歩いたり(最後に子ども達が手すりをタオルで拭いていたことも付記しておきます)。その手すりの下を四つん這いでくぐるリレーや、リレー形式の階段ダッシュなどが行われていた。

階段ダッシュリレーでは、途中に数字が不規則に配列されたボードを持ったお父さんが立つ。子どもはお父さんの前でストップして、言われた3つの数字をそのボードの中から見つけ出さないと再び走り出すことができない。有酸素運動をしながら脳を使うのは意外と難しく、多くの子ども達が苦戦していた。こうすることで、学年や男女の差に関係なく競争ができるため、競争は白熱し、子ども達は大いに盛り上がりだった。

限られたスペース、環境でできることをポジティブに考える。校庭や球場が使えなくても、できることはたくさんある。横浜青葉NEXUSが6年間で身につけた逞しさのようにも映った。
監督の佐藤慶太さんはこう話す。
「単に体を沢山動かすのではなくて、そこに対決要素やゲーム要素を取り入れる。子ども達はそういうのが好きなんですよね」
子ども達が多く集まるチームを取材して思うのは、野球以外の色んな運動、トレーニングなどを取り入れているチームが多いということだ。
「野球って道具も使うし難しいじゃないですか? でも最近の子どもは昔に比べて外遊びとなどで色んな体の使い方をしていない。そんな子達に対して、ボールをこう捕れ、こうやって投げろ、打てとか、それは難しいよなと感じています。だったら遠回りになるかもしれませんが、野球の技術を教える以前に、自分の体をコントロールすることに重きを置いてやった方がいいのかなと思っています。そこをしっかりやることが全ての運動の土台になる部分ですから」
今の時代、少年野球チームだからといって野球だけをやっても、子どもはなかなか集まらないのかもしれない。
<保護者が手伝いたくなる環境と雰囲気>

前回の取材から6年間が経って部員数は3倍になった。連盟に属していないため参加できる大会の数には限りがあり、全国大会などもない。チームが強いわけでもない。それでも口コミやネット検索を通じて、多くの保護者に「このチームが良い」と選ばれてきた。保護者のお父さんはこう話す。
「このチームが良いと思ったのは練習日数の少なさと練習時間の短さですね。小学生のうちは週末の全部を野球に費やさなくていいと思うんです。
ネットでいくつかチームを探して、ここが自分の考えに近いかなと思いました。子どもも楽しそうにやっていますし、平日はサッカースクールやスイミングや空手、塾などに行っていますし、週末も練習が半日なので家族で出かけたり、他のことにも時間を使えるのもいいですね。野球の入口としてはこういうチームが入りやすくていいなと思います」
佐藤監督は野球を通じた人間形成も大切にしている。「野球が出来るのは当たり前の事ではない。親に感謝しなければいけない」。そんな話を子ども達に常々しているのもその一環だ。
「保護者の方からは、学校とは違った経験や『人として大切な部分の話をしてくれることがとても嬉しい』と言われることが多いです。このようなことが数珠繋ぎとなり、こども達がNEXUSに集まってくれている要因の一つになっているのかもしれません」
この日のグラウンドには13人の保護者の姿があった。だが当番制はない。あるのは保護者が手伝いたくなる環境と雰囲気だ。前述のお父さんが話す。
「グラウンドで手伝うことは全く負担と思っていません。練習時間が短いのもありますし、強制じゃないから負担と思わないです。子どもが楽しそうにしているから、一緒にやりたいなという感じです」

強さよりも楽しさを大事にするチームを取り上げると「そんなチームでやっても上手くならない」「次のステージで通用しない」ということを言う人も一定数いる。
「それがですね、中学で活躍している子も結構多いんです。ほとんどの子が中学で野球を続けていますし、今日練習を手伝いに来てくれた一期生の子と、その代のキャプテンの子が同じシニアに進んでいるのですが、この春の全国大会に出場するんです。話を聞くと『小学校の時にここで楽しく野球をやれたことが自分の土台、ベースになっています』なんて言ってくれて・・・・・・。このチームを立ち上げて良かったなと思いましたね」
横浜青葉NEXUSは子ども達の「野球が楽しい」と思う気持ちを満タンにして、次のカテゴリーに送り出している。そんな姿勢も保護者に選ばれる理由の一つになっているに違いない。(取材・写真:永松欣也)
*佐藤監督のインタビューに続きます。