
現地時間3月6日午後8時から、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会開会式が行われた。会場はオリンピックの閉会式と同じ「ヴェローナ・オリンピックアリーナ」。古代ローマ時代の西暦30年に、剣闘士の戦いの場として建設された円形競技場で、今大会をきっかけに安全性とアクセス性の向上に重点を置いた改修が行われた。
日本代表選手団は映像でも参加開会式は、「Life in Motion(動き続ける生命)」というテーマのもと、「VIBES」、「SPACES」、そして「LOVES」の3部で構成された。
第1部の「VIBES」では生命の誕生をイメージさせるパフォーマンスの後、イタリアの国歌斉唱と国旗掲揚。パラリンピックの歩みを振り返る映像が流れ、選手団が入場した。
ただし、実際に選手らが入場したのは、大会に参加する55ヵ国・地域のうち、28ヵ国・地域にとどまった。イランは渡航が困難となったため、大会自体に不参加。また、昨年9月のIPC(国際パラリンピック委員会)総会の投票結果により、ロシアとベラルーシが国の代表として大会に参加するが、これに抗議するウクライナなど7ヵ国が開会式をボイコット。さらに、競技会場と開会式会場が離れていることから開会式参加を見送った国もあった。入場には最小限の人数で参加し、あらかじめ録画された映像で参加した選手も多かった。
日本もその一つ。パラアイスホッケーの中村俊介と福西朱莉らが満面の笑みで入場行進し、その背後にあるビジョンに33選手を含むTEAM JAPANの79人が笑顔で手を振る姿が大きく映し出された。日本代表選手団の大日方邦子団長によると、選手団の映像は3月3日に事前収録したとのこと。

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「プラザなど複数でパブリックビューイングがある。各国で交流しながらワイワイ開会式を見るのでは」という大日方団長の言葉通り、パラアイスホッケーチームらが画面を通して、笑顔でチームメートの雄姿を見守った。
日本は全競技に計44人の選手が参加予定だ。日本代表選手団の旗手のひとりパラスノーボードの小須田潤太は、「現地に入ってからはもちろん、出国前にもたくさんの方から応援の声をいただき、あらためて、本当に多くの方の支えがあってここにこれているなと、感謝の気持ちでいっぱいです。初めての有観客開催、本気で楽しんで最高の結果を目指します。挑め、こころをひとつに! TEAM JAPAN!GO‼」とコメントした。

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また、今シーズン開幕直前の合宿で左の鎖骨と左肩腱板を損傷したパラアルペンスキーの村岡桃佳も、「たくさんの方々のサポートのおかげで、パラリンピックの舞台に立つことができています。感謝の気持ちを第一に、パラリンピックのレースを精一杯楽しみたいと思います」と、4度目となるパラリンピック冬季競技大会への意気込みを語った。
なお、今大会は600人以上の選手が出場予定。IPCが実施した冬季パラスポーツ発展のためのスポーツ開発プログラム「スポーツ・フォー・モビリティ」をきっかけに出場する39人の選手と4人のガイドも含まれている。また、エルサルバドル、ハイチ、モンテネグロ、北マケドニア、ポルトガルの5ヵ国は、パラリンピック冬季競技大会初出場となる。
なかでもエルサルバドルは、オリンピックとパラリンピックの冬季競技大会参加自体が初。2人の選手、ダビド・チャベスとホナタン・アリアスがパラクロスカントリースキーに出場予定だ。チャベスは「2023年に初めて雪を経験し、母国のビーチでトレーニングをしていた」というから、本番のパフォーマンスに大いに注目したい。
ほか、冬季スポーツにおける女性アスリート数を増やす取り組みの一環として、IPCの支援により、10人の女性アスリートと2人の女性ガイドも大会に出場予定だ。
なお、筋肉信号を読み取るセンサーで繊細かつ精度高く義肢を動かす「筋電義肢」を左手に装着し演奏するDJミキ・ビオニクもパフォーマンス。障がいと最新技術、創造性、そしてアートとの融合で新たな世界線を生み出す姿は、パラスポーツとも重なる。短時間ながらもパラリンピックの意義を端的に伝え、選手や競技への期待を高めた。
「パラリンピックのメッセージはかつてないほど重要」第2部の「SPACES」では、錯視を利用した「オプティカルアート」で、障がいの有無にかかわらず多様な人たちが協力し合うことで壁を乗り越え、人間の可能性を広げうることを表現。ラ・カンパネラの演奏と共に、聴覚障がいのあるダンサー、カルメン・ディオダートが舞いを披露した後、ミラノ・コルティナ2026大会組織委員会のジョバンニ・マラゴ会長が次のように挨拶した。

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「パラリンピックのメッセージはかつてないほど重要。ヴェローナは、大会のおかげでバリアフリー化が進んだ。大会は力強いゲームチェンジャーだ。若い皆さん、変革の聖火ランナーになってください。社会をわずか10日で変えられないことはわかっているが、希望の灯を灯すだろう。ビバ! ミラノ・コルティナ2026冬季パラリンピック!」
また、IPCのアンドリュー・パーソンズ会長は、パラリンピックの第1回大会がローマで開かれたことを踏まえ、次のように挨拶した。
「チャオ! ヴェローナ! イタリアは私たちにとって第2の故郷のようなもの。障がいは人の多様性の驚くべき側面であることを知るだろう。限界はまやかしに過ぎない。この歴史的舞台で次の一章が始まる。グラツィエ!」

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第3部の「LOVES」では、芸術家のエミーリオ・イズグロが愛についての詩を制作して朗読。続いて、中世ヴェローナが舞台の戯曲『ロミオとジュリエット』をベースに、対立するもの同士が和解し融合するまでを描き出した。
その後、パラリンピック賛歌とパラリンピック旗の掲揚。選手、コーチ、審判代表らによる宣誓の後、501人の聖火ランナーによってイタリア国内でつながれてきた聖火が聖火台に灯された。

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芸術的でありながらわかりやすく表現されたメッセージの数々は、観る人の心に素直に響き、大会への期待を十二分に高めてくれたのではないか。動画配信やテレビ放送を通じて、パラリンピックを余さず楽しんでほしい。
text by TEAM A
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