電通は2026年3月5日、「2025年 日本の広告費」の調査結果を発表した。それによれば、インターネット広告費が初めて日本の総広告費の半数を超えた。

関係者は「正直、思っていたよりも早かった、という受け止めです。私たちは1947年から日本の広告費について調べていますが、2025年は1つの大きな転換点となりました」と総括している。

  • デジタル領域に詳しい各社が「2025年 日本の広告費」について解説した

    デジタル領域に詳しい各社が「2025年 日本の広告費」について解説した

ネット広告の存在感が増す

電通ホール(電通本社)で開催されたメディア説明会。はじめに電通 マーケティング統括センターの森永陸一郎氏が登壇し、日本の総広告費と業種別広告費を推定した「2025年 日本の広告費」について説明した。

  • 日本国内に投下された1年間(1月~12月)の広告費について調査している

    日本国内に投下された1年間(1月~12月)の広告費について調査している

まずはサマリーから。

1.日本の総広告費は4年連続で過去最高を更新し、ついに8兆623億円(前年比105.1%)に達した。8兆円を超えたのは史上初。
2.インターネット広告費は4兆459億円(前年比110.8%)で、初の4兆円超え。総広告費に占める構成比は50.2%と、初めて半数を超えた。
3.プロモーションメディア広告費における「イベント・展示・映像ほか」は4728億円(前年比111.2%)と二桁成長を記録。大阪・関西万博、東京2025世界陸上などの大型イベントが寄与した。

  • 「2025年 日本の広告費」のサマリー

    「2025年 日本の広告費」のサマリー

直近10年間の日本の総広告費の推移を見てみると、2020年にコロナショックで落ち込んだものの、2021年には回復基調となった。森永氏によれば「すべてインターネット広告費の成長が寄与したもの」だという。

2023年には新型コロナウイルスが5類感染症となり、イベント・展示・映像の分野の広告費が伸長。結果的に、日本の総広告費は4年連続で過去最高を更新している。

  • 日本の総広告費の推移

    日本の総広告費の推移

日本の広告費は、大きく3つのカテゴリに分類される。

それは「マスコミ四媒体広告費」(新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのマスコミ四媒体に投下された広告費のこと)、「インターネット広告費」(インターネット広告媒体費、物販系 EC プラットフォーム広告費、インターネット広告制作費のこと)、「プロモーションメディア広告費」(詳細は後述)。

年々この割合が変化しており、2025年には総広告費に占める「インターネット広告費」の構成比が初めて50.2%と半数を超えた。動画やSNSの広告が成長を牽引している。

  • 媒体別広告費の割合

    媒体別広告費の割合

ここで森永氏は「単純にマスコミ四媒体広告費が減少した分だけインターネット広告費が増えた、ということではなく、広告市場全体が構造変化を遂げたと分析しています」と話す。

「2025年の数字を実数ベースで見てみると、マスコミ四媒体広告費は400億円ほどのマイナスでした。そしてプロモーションメディア広告費は300億円超のプラスで、この差分は100億円程度です。でもインターネット広告費に関してはこの1年間で4,000億円近く増えています。これが何処から来たのか、ということを考えました。もしかしたら、販売促進費がどんどんインターネット広告に集まってきているのかも知れません。そこで広告市場全体が構造変化を遂げた、という見立てを申し上げました」と森永氏。

ちなみにインターネット広告費の中で急成長しているカテゴリは「テレビメディア関連動画広告」で、前年比123.3%増の805億円に到達。いわゆるテレビ番組の無料配信サービスに出てくる広告のことで、視聴者数の増加にともない広告費も伸びているという。

  • インターネット広告費の詳細

    インターネット広告費の詳細

  • マスコミ四媒体広告費の内訳

    マスコミ四媒体広告費の内訳

「プロモーションメディア広告費」とは、屋外(看板、屋外ビジョン、屋外デジタルサイネージなどの製作費と掲出料)、交通(電車・バス・タクシー・空港などの交通広告の掲出料)、折込(全国の新聞に折り込まれたチラシの折込料)、DM(ダイレクト・メールに費やされた郵便料・配達料)、フリーペーパー(フリーペーパー・フリーマガジンの広告料、電話帳の掲出料)、POP(店頭販促物の制作費)、イベント・展示・映像ほか(広告業が取り扱う販促キャンペーン、ポップアップストア、スポーツイベント、PRイベント、展示会、博覧会、PR館などの製作費、シネアド・プロモーションビデオなどの制作費や上映費など)の合計。

2025年はインバウンド需要もあり「屋外広告」「交通広告」「POP」が増加。大型イベントの開催、大型商業施設のオープン、ホテルの新装・改装、都市の再開発などが成長を牽引した。

  • プロモーションメディア広告費の内訳

    プロモーションメディア広告費の内訳

  • 電通 マーケティング統括センター メディアイノベーション研究部 主任研究員の森永陸一郎氏(左)、CARTA HOLDINGS グループコミュニケーション本部 リレーションマネジメント室 室長の高松幹夫氏(右)

    電通 マーケティング統括センター メディアイノベーション研究部 主任研究員の森永陸一郎氏(左)、CARTA HOLDINGS グループコミュニケーション本部 リレーションマネジメント室 室長の高松幹夫氏(右)

インターネット広告媒体費の内訳と2026年の予測

続いてCARTA HOLDINGS グループコミュニケーション本部の高松幹夫氏が、インターネット広告媒体費の内訳を分析して2026年の予測を加えた「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」について説明した。

その冒頭、サマリーをまとめた。

1.ビデオ(動画)広告は初めて1兆円を突破した。
2.ソーシャル広告は1兆3,067億円に達した。
3.2026年のインターネット広告媒体費は3兆5840億円に増加すると予測。

ビデオ(動画)広告市場は前年比121.8%と急伸している。このうち「インストリーム広告」(動画コンテンツの視聴中に挟まれるCM動画)は5,246億円、「アウトストリーム広告」(ウェブサイトの広告枠などに表示されるCM動画)は5,029億円となっている。

  • ビデオ(動画)広告市場

    ビデオ(動画)広告市場

ビデオ(動画)広告市場は2026年も二桁成長を維持し、前年比114.7%の1兆1783億円になると予測する。

  • 2026年の推移予測

    2026年の推移予測

ソーシャルメディアのサービス上で展開される「ソーシャル広告」は前年比118.7%の高い成長率で、インターネット広告媒体費の約4割を占める主要分野となった。今後もさらなる成長が見込まれている。

  • ソーシャル広告市場

    ソーシャル広告市場

2026年のインターネット広告媒体費は、ビデオ(動画)広告+ソーシャル広告の高い成長率を受けて、全体で前年比108.3%の伸びを予測。総額で3兆5,840億円まで増加すると予測している。

  • インターネット広告媒体費 総額(予測)

    インターネット広告媒体費 総額(予測)

質疑応答で、新聞の広告費が落ち込んでいる理由を問われた森永氏は「購読部数の減少、ページ数の減少が影響しています。新聞広告の年間の出稿料も減少しています」と指摘。 従来なら新聞に広告を出していた食品(通販系のサプリメントなど)、流通・小売業(通信販売の商品など)、交通・レジャー(旅行パックなど)といった業種が、軒並みネット広告、テレビ広告などに流出している背景も明かした。