「うちの子(ペット)は言うことを聞かないから」と割り切ってはいないだろうか。テレビや雑誌で活躍するペットモデルたちも、普段は一般家庭で暮らす普通のペットである。
モデル育成の第一線で活躍するアニマルプロの細波麻裕美さんと石井敏樹さんは、トレーニングの本質は「人との共生を深める遊び」だと語る。プロが教える日常のしつけのヒントや、場所を選ばず集中力を高めるコツについて、トレーナーのふたりに話を聞いた。
家ではできるのに外ではできない! まずは「環境慣らし」が大切
――アニマルプロでは、モデルを目指す子たちのためのレッスンも行っているそうですね。
細波さん:以前からオーディションに落ちてしまった方に「ここを直してまた来てくださいね」とアドバイスはしていたのですが、難しいという声が多くて。「それなら自分たちで教室を開いて、いいモデルを育てよう」と始めたのがきっかけです。
石井さん:昨年の11月から本格的に始めましたが、私が「そろそろオーディションを受けてもいいと思いますよ」とOKを出した子の合格率は80%を超えています。レッスンを受けていないワンちゃんたちの合格率は20〜30%なので、しっかり効果が出ていると思います。
――80%! すごいですね。普通のしつけ教室とは何が違うのでしょうか?
石井さん:ペットモデルの訓練は、少し特殊なんです。ただ「待て」をすればいいわけじゃなく、「飼い主が隠れていても待てるか」とか「声を出さずに呼べるか」といったことも重要で、受講されている飼い主さんからは「今までのトレーニングと全然やり方が違った」「集中力の付き方が変わった」といった反響をいただいています。
――日常の暮らしにも活かせる「しつけのアドバイス」を教えてください。
細波さん:まずは、いろんな環境に慣らすことですね。家ではできるのに外ではできない、というワンちゃんが多いんです。たとえばお散歩中に信号待ちをしているときに、ちょっと「伏せ」って言ってみる。車が通っても、人がたくさんいても、飼い主の指示を聞けるか。そういう意識を日常から持つだけで全然違ってきます。
石井さん:あと、“飼い主さん側の癖”を自覚することも大事だと思います。よくあるのが「お座り」と言ったあとに、無意識に必ず「伏せ」と言ってしまうパターン。そうするとワンちゃんは、言葉を聞く前に「次はこれやるんでしょ」と勝手に動くようになっちゃうんです。
細波さん:おやつを見せるだけで勝手にお座りして、お手・おかわりを始めちゃったり。それは「指示を聞いている」のではなく「癖でやっている」だけなんですよね。「実は、こういう癖をつけたのは飼い主さんなんですよ」ということに気づいてもらうのもレッスンの面白いところですね。
しつけは特別な訓練ではなく、あくまでコミュニケーション!
――ワンちゃんは若いうちのしつけや社会化が大事だと言われていますが、大人になったワンちゃんでも覚えられるのでしょうか?
細波さん:時間はかかりますが、何歳からでも不可能ではないですよ。犬は本来、人間とパートナーとして何かをやりたいという思いを持っている生き物なんです。しつけを「やらされている」と感じさせるのではなく、その思いを引き出してあげることが大事です。
石井さん:そのためには、ワンちゃんに「欲」があることも重要ですね。食べること、遊ぶこと、褒められること。指示に応えて、飼い主さんが喜んでくれて、しかも自分も嬉しい。そのサイクルを作ってあげると、ワンちゃんも自分から喜んで動くようになります。
――トレーニングでいろいろなことを覚えると、ワンちゃん自身の幸福度も上がりそうですね。
細波さん:本当にそう思います。犬嫌いの人は、大体「噛まれた」「臭い」「おしっこされた」といった理由が多いんです。飼い主さんがちゃんと人間社会のルールを教えて、社会のルールを守れるようになれば、犬も人ももっと気持ちよく生活していけるはずです。
石井さん:うちの事務所に入っているワンちゃんたちも、仕事をしていない時は普通に家で愛されている、ただの家庭犬なんです。特殊な訓練を受けたエリートなわけじゃなく、誰にでもモデルになれる可能性はあるんですよね。
細波さん:しつけを特別な訓練と思わず、愛犬とのコミュニケーションとして楽しんでほしいですね。それが、ワンちゃんにとっても猫ちゃんにとっても一番幸せなことだと思っています。





