デビューから25年――“ミュージカル界のプリンス”として第一線を走り続けてきた俳優の井上芳雄に、初めての試練が訪れた。声が出ない。舞台に立てない。俳優として最も恐れていた瞬間と、そのとき支えになった言葉とは――19日放送のテレビ朝日系『徹子の部屋』(毎週月~金曜13:00~)で、井上が胸の内を静かに語った。
20歳でデビュー後、46歳の今も第一線で活躍
東京藝術大学在学中の20歳で舞台デビューし、46歳となった現在も第一線を走り続ける井上。だが、40代半ばを迎え、体に変化を感じるようになったという。
「25年間、健康でやってこれたんですが、40代半ばになってきてから、自分の思っている以上に怪我をしてしまったり」
さらに昨年末には、俳優人生で初めての事態に直面した。
「声とかもずっと壊したことがなかったんですが、風邪をこじらせてしまって、初めて声が出なくなってしまった」
コロナ禍で休演したことはあっても、“自分の声”が原因で舞台を休むのは初めて。しかもそれは、初日直前の出来事だったという。
「ゲネプロをやっているときで。ゲネプロを2回やる予定だったのですが、1回目はなんとかやれたんですが、終わったあとにガサガサになってしまって……2回目のゲネプロの前に病院に行かせてもらった」
治療を受け、翌日に迎えた初日公演には立ったものの、その作品はミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』。初日の舞台上には井上と上白石萌音の2人しかいない構成だった。
「上白石萌音ちゃんとの2人ミュージカルだったので、どちらかが常にしゃべっているか歌っているか……ずっと枯れたまま歌ってしゃべっていた」
上白石が井上にあわせて声量を調整するなどフォローを重ね、なんとか初日を終えたが、翌日にはさらに悪化。結果として、5日間8公演を代役に託すことになったそう。
突然訪れた休養期間。たまたま家族も不在で、孤独感に包まれていた井上は「自分がわからなくなってしまった」と振り返る。
そんなとき届いたのが、大竹しのぶからのメッセージだったという。
「しのぶさんから、『大丈夫?』と励ましの連絡があって。その前から常に僕が舞台に出続けていることを心配してくださっていたんです。『今までちゃんと出ていたことが奇跡だったのよ』と言ってくださって。声が出ていたことがラッキーだということを思い知るために休んだんだなと思えたんです」
走り続けてきたからこそ、立ち止まる怖さも知った井上。だがその経験があったからこそ、改めて舞台に立てることの尊さを実感したという。25年を経てもなお進化を続ける“プリンス”の裏側には、そんな静かな転機があったという。
井上が出演した19日放送の『徹子の部屋』は、Tverで26日まで見逃し配信中。
【編集部MEMO】
『徹子の部屋』は、1976年にスタートしたテレビ朝日系トーク番組。2026年で50周年を迎え、放送回数は1万2,000回を超えている。
