NTT東日本は1月28日、東京・調布市のNTT中央研修センタにおいて招待制のイベント「NTT東日本グループ 地域ミライ共創フォーラム2026」を開催した。本イベントの講演の模様やイノベーション人材育成の取り組みについては別記事にて紹介しているが、ここでは同時に公開された「NTTe-City Labo」の新設コンテンツについてレポートしよう。

  • 建設重機の超遠隔操作のデモンストレーション

    建設重機の超遠隔操作のデモンストレーション

IOWN APNを活用した新しい映像体験を創出

「NTTe-City Labo」は、NTT東日本が地域の課題解決に向けて取り組んでいるソリューションを体感できる施設。最先端農業ハウスやスマートストア、自動運転、再生可能エネルギー、ドローン、eスポーツ、文化芸術、DX人材育成などさまざまな展示施設が用意されている。実際の産業で活用される機器や資材が稼働しており、資料やオンラインでは伝わらない“現物”を五感で感じられるのが大きな特徴。今回、その展示に新しく加わったのが、高速・大容量・低遅延ネットワーク「IOWN APN」を活用したコンテンツだ。

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)はNTTが提唱する次世代の情報通信基盤構想で、APN(All-Photonics Network)はフォトニクス(光)ベースの高速・大容量・低遅延な伝送技術のこと。APN IOWN1.0(APN step1)やAll-Photonics Connect(APN step2)などのサービスがすでに商用化されており、データセンター間の接続や遠隔医療など、拠点間を高速・低遅延でつなぐ必要のあるシーンで活用されている。

「NTTe-City Labo」に新設されたコンテンツのうち、キヤノンとの協業による「All-Photonics Connect powered by IOWN×ボリュメトリックビデオシステム」は、立体映像の新たな活用シーンを創出する試み。ボリュメトリックビデオシステムとは、約100台のカメラで同時に撮影した映像から空間全体を3Dデータ化し、自由な角度からの視聴を可能とするキヤノンの技術で、スポーツ中継や音楽ライブ配信など幅広い用途で活用されている。

大容量データを扱うため、従来は撮影から映像生成、視聴までの全工程を撮影拠点で行っていた。しかしAll-Photonics Connectによって高速・低遅延の通信が利用できるようになったため、撮影拠点と映像生成拠点、視聴拠点を分散させることが可能となり、遠隔地でもボリュメトリック映像を活用できるようになる。

イベントでは実際に川崎にあるキヤノンスタジオで撮影されたダンスパフォーマンスをほぼリアルタイムで3Dデータ化し、調布市の会場モニターでカメラの視点を自由に操作しながら視聴するデモンストレーションが行われた。もちろんライブ映像以外にも適用可能で、会場では事前収録したボクシング映像を使ったデモンストレーションも行われた。

  • 「IOWN APNを活用したボリュメトリックビデオシステム」の展示

    「IOWN APNを活用したボリュメトリックビデオシステム」の展示。上の画面が川崎のキヤノンスタジオにおいてグリーンバックで撮影された映像。下が3Dデータ化され背景がクロマキー合成された映像

  • ダンスパフォーマンスの視聴デモ

    3Dデータのため別の背景を合成したり、視点を操作して自由な角度から視聴することもできる

  • 事前収録したボクシング映像を使ったデモンストレーション

    事前収録したボクシング映像を使ったデモンストレーション

IOWN APNを活用したもうひとつのコンテンツが「建設重機の超遠隔操作」だ。これは、栃木県那須塩原市にある西松建設の実験施設「N-フィールド」とNTTe-City LaboをIOWN APNとローカル5Gで接続し、200km離れた場所にある建設重機を遠隔操作するというもの。

  • 建設重機の超遠隔操作

    建設重機の超遠隔操作

西松建設ではトンネル工事の安全性の問題や、高齢化による担い手不足などの課題に対応するため、従来から建設重機の遠隔操作の実証実験を進めてきた。しかしこれまでのシステムでは拠点間にインターネットVPNを、現場の無線環境にWi-Fiを使用していたため通信品質が安定せず、画面が乱れたり遅延が発生したりして操作感が悪くなるなどの課題があった。

そこでIOWN APNとローカル5G(ギガらく5Gセレクト)を活用することに。従来のシステムだとエンコーダーやデコーダー、カメラの遅延なども含むとトータルで1秒以上の遅延が生じていたところ、おおよそ200ms程度に抑えることができたという。今後はトータルでも100ms以下を目指して試行していくとのことだ。

  • 西松建設の山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS」の画面

    西松建設の山岳トンネル無人化・自動化施工システム「Tunnel RemOS」の画面

会場では、実際に遠隔操作コックピットが設置され、モニタに表示される映像を見ながら重機を操作できるようになっていた。重機の操作や動きに合わせて座席が振動するなど臨場感も重視されており、リモートとは思えないほどリアルな操作が可能だった。

電話音声フェイク検知やARナビゲーションへの取り組みも紹介

近年の生成AI技術の進化は目覚ましいものがあり、専門知識がなくても簡単にツールを使って本人そっくりの声を作成することが可能。日本ではまだフェイク音声を使った被害は大きな問題になっていないが、アメリカではAIによるなりすまし詐欺だけで2024年に15億円の被害が出ており、香港でも38億円を騙し取られた被害が発生している。こうした今後想定される脅威に対応するため、NTT東日本ではフェイク音声を見抜ける電話アプリを開発中とのことだ。

フェイク音声検知は、NTT東日本が提供しているひかり電話と検知エンジンを連携させ、着信側の電話端末から検知エンジンに通話データをタイムリーに送り込むことでフェイクかどうかを判定するという仕組みで行っているという。

会場では、実際にフェイク音声を生成して電話をかけるデモンストレーションが行われたが、なりすましとは分からない自然な音声にもかかわらず着信側の端末に「ディープフェイク検知」通知が表示されており、しっかりと検知機能が働いていることが見てとれた。

  • 電話音声フェイク検知のデモ1
  • 電話音声フェイク検知のデモ2

    電話音声フェイク検知アプリがフェイク音声を検知すると、このように通知で知らせてくれる

このほか、会場では本田技研工業の施設内移動用モビリティ「UNI-ONE」とARグラス、スマホを使ったARナビゲーションのデモンストレーションも行われた。

  • ARナビゲーションのデモ

    本田技研工業の施設内移動用モビリティ「UNI-ONE」とARグラス、スマホを使ったARナビゲーションのデモンストレーション

これは、レーザー光を利用して対象物との距離を測るリモートセンシング技術のLiDARを活用して構築したデジタルツインと、ARナビゲーションアプリ「e-City Navi」を組み合わせて実現したもの。来場者はUNI-ONEに乗ってARグラスをかけることで、そのグラス越しにARナビゲーションを見ながらNTTe-City Laboの施設内を周遊することができる。AR技術は画像情報から自己位置を測定するVPS技術を使用しているため、GPSが使用できない室内でも活用でき、ビーコンなどの位置特定技術も不要。

NTT東日本では、NTTe-City Laboでの実証で得られたARナビゲーションのノウハウやデータを、地域の商業施設や観光地の賑わい創出のために活用し、集客力向上や滞在時間の延長、それに伴う収益増加などにつなげていきたいとのことだ。