NTT西日本は2月3日、顧客のビジネスゴールの達成に向けて、デジタルトランスフォーメーションを加速させるDX推進拠点「LINKSPARK(リンクスパーク) OSAKA」を、大阪・京橋のNTT WEST i-CAMPUS PRISM 1階にリニューアルオープンした。

「LINKSPARK OSAKA」がリニューアルオープン

「LINKSPARK OSAKA」は、もともと2019年に大阪・梅田のグランフロントに設立された施設。当時、経済産業省のDXレポートにて「2025年の崖」と表現された通り、基幹系システムの老朽化や複雑化によるシステム維持・更新のためのコスト増大、IT人材の不足が懸念されており、「この壁を乗り越えるためには、DXの推進が大きな経営課題の一つとなっていた」と、NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の北村亮太氏は振り返る。

  • NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の北村亮太氏

    NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の北村亮太氏

しかし、DX推進にあたって、当時の企業や自治体には、DXを実現するためのデジタル技術に精通した「デジタル人材の不足」、ビジネスゴール達成に向けた「テーマ設定」、デジタル技術を活用するための「ICT環境準備」といった大きく三つの課題があった。こうした課題が、NTT西日本によるLINKSPARK設立の背景になったという。

LINKSPARKでは、こうした課題に対応するため、さまざまな支援を行う。まず、NTT西日本が抱えるデータサイエンティストやSEなどの専門家による「伴走型のサポート」を通じて、「デジタル人材の不足」を補う。また、デモ展示やDXコンサルタントによる「アイデア想起」や「デザインシンキング」を通じて、「テーマ設定」を支援する。さらに、「DXを実現できる環境の提供」によって、「ICT環境の整備」も後押ししていく。これらを通じて、企業や自治体のDX推進を総合的に支援することを目的としている。

この「LINKSPARK」という名称には、人やアイデアがつながるという“LINK”と、新たなひらめきを生み出すという“SPARK”をかけ合わせた「LINKSPARK」、そして、誰もが気軽に集まれるという“LINKS”と、思いもよらない可能性が広がっていく場としての“PARK”をかけ合わせた「LINKSPARK」という2つの思いが込められている。

また、黄色と黒色を基調としたカラーリングについても、未来、希望、知性、エネルギーなどを想起させる黄色をメインカラーとし、何ものにも染まらない強さと不変性を備えた黒色で支えるといったことが意図されているという。

「LINKSPARK」は、2019年8月に大阪に設立されて以降、2020年10月に名古屋、2021年3月に福岡、2023年1月に広島に開設。「広く西日本エリアのお客様にとって、新しい価値を創造する拠点としての機能を果たしてきた」と北村社長は自信を示す。実際、2019年以降、施設利用件数は1,000件を超え、DXプロジェクト創出数は3,000件以上、DX推進支援額も300億円以上になっており、企業と地域の課題解決、価値創造に貢献してきた。

また、LINKSPARK設立以降の5年間で、DXに取り組む企業の割合は41.2%から77.8%まで拡大。多くの企業がDXに取り組んでいるという状況になっているが、一方で、システムの老朽化や複雑化、そしてデジタル人材の不足は、予測を上回る深刻化が進んでいる。

さらに、DXを推進するだけでなく成果を重視する動きが強まる中で、費用対効果がより厳しく問われるようになっており、その評価基準が不明確な点も新たな課題となっている。2022年のChatGPTのリリースを契機に生成AIの有効活用が「DXを推進する上でも非常に重要な要素となっている」と北村社長は強調する。

こうした社会情勢に加えて、LINKSPARKに対する期待も変化している。開設当初は、検証支援が約半数を占めていたが、2024年には、実ビジネスにDXを適用する実装支援が98%を占めるようになっているなど、実証から実装へと期待が変化。それにあわせてリニューアルオープンした“新LINKSPARK OSAKA”では「次のあたりまえを形にするDX推進拠点」という新たなコンセプトを掲げる。

  • コンセプトは「次のあたりまえを形にするDX推進拠点」

    コンセプトは「次のあたりまえを形にするDX推進拠点」

「新LINKSPARK OSAKAでは、お客様に寄り添い、お客様の少し先のあたりまえを、人とテクノロジーを使って共に実装し、形にしてまいります」という北村社長は、次のあたりまえをカタチにするために、人財・体験・伴走・智の結集の4つの価値提供を約束。人財については、新LINKSPARK OSAKAが位置する京橋のNTT西日本本社は約6,000人の社員を抱えており、多様な専門人財が集結。そして、これらの人財が、それぞれ個別に関わるのではなく、知見や強みといったものを持ち寄りながら横串で連携していくことによって、より実践的で厚みのある支援を提供していくという。

体験については、NTTの研究成果やIOWNをはじめとする最新技術に加えて、NTT西日本が社内で実際に取り組んでいるサイバーインシデント対策など、社内のアセットを活用した展示、また、生成AIやワークプレイス改革などの実装を具体的にイメージできる展示など、トータルで約30種類のデモ環境を用意。「こうしたデモを体験いただくことで、これまで以上にお客様のDX課題を具体化し、明確化していただけるのではないか」と北村社長も期待を寄せる。

そして、伴走については、新LINKSPARK OSAKAが持つアセットを最大限に活用し、プロ人材が、課題の気づきから検証、実装までを一気通貫で伴走支援。デモ体験で課題に気づき、独自メソッドのワークショップでテーマを明確化した上で、データサイエンティストやAIコンサルタント、京橋に集う専門人材が検証を行い、顧客環境での実装までを責任持って支援していくという。

智の結集については、新LINKSPARK OSAKAがハブとなり、隣接するオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」やNTT研究所をはじめとするNTTグループが持つアセット、知見を提供することによって、「より価値の高い成果を実現してまいりたい」と力を込め、4つの価値を最大限に活用することによって、2030年までに、プロジェクト創出数1万件とDX推進支援額1,000億円の達成を目指すという。

LINKSPARK OSAKAが、京橋のNTT WEST i-CAMPUSを新たな拠点としたことにより、QUINTBRIDGEとの相乗効果はもちろん、大阪の東エリアに集う、大阪公立大学や大阪産業技術研究所、そのほかのイノベーション拠点との連携を強化することで、「この東エリアを日本の一大イノベーション集積拠点にしていきたい」と宣言する北村社長。さらに関西全体へと展開していくことによって、「大阪・関西エリアの発展、ひいては日本の国際競争力の復活に貢献してまいりたい」と締めた。

「LINKSPARK OSAKA」のリニューアルオープンに際して、大阪府 CDO兼スマートシティ戦略部長の市瀬英夫氏、公立大学法人大阪 理事の酒井隆行氏、サントリー 事務長の名取宏氏が、それぞれ来賓として登壇した。

  • (写真左より)サントリー 事務長の名取宏氏、NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の北村亮太氏、大阪府 CDO兼スマートシティ戦略部長の市瀬英夫氏、公立大学法人大阪 理事の酒井隆行氏

    (写真左より)サントリー 事務長の名取宏氏、NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員の北村亮太氏、大阪府 CDO兼スマートシティ戦略部長の市瀬英夫氏、公立大学法人大阪 理事の酒井隆行氏

大阪府のスマートシティ戦略を手掛ける市瀬氏は、LINKSPARK OSAKAやQUINTBRIDGEを活用し、市町村向け生成AIのハンズオンセミナーやスマートシティ関連のモデル実証を通じたDX推進を実施。「イノベーションを起こす時は、場の雰囲気が大きい」と語る市瀬氏は、「入るだけでワクワクする空間で、アイデアソンやハッカソンを行ってきた」経験を踏まえ、リニューアル後も、DX推進の拠点として活用していきたい考えを示した。

「まちづくり」「ひとづくり」を軸に、NTT西日本と連携協定を結ぶ大阪公立大学の酒井氏は、「LINKSPARKは、OMU(大阪公立大学)の研究・教育にとって心強いパートナーになる」と期待を寄せる。また、産学官民が連携し東西をつなぐ新たな軸を築くことで、「大阪・関西の未来を先導するエリアにしたい」と意欲を示し、2025年2月3日のリニューアルオープンを「第一歩となる記念すべき日」と位置付けた。

1977年に竣工した栃木 梓の森工場が2027年に50周年を迎えるにあたり、サントリーの名取氏は、「安全と品質を前提に、次の50年に向けた改革を進める」ことが重要だと語る。そのうえで、「現場主体で改革を進めるには、新LINKSPARK OSAKAやQUINTBRIDGEの活用が不可欠」と強調。新LINKSPARK OSAKAが、「アイデア創出から実装までを支える共創拠点」となることに期待を寄せた。

新LINKSPARK OSAKAで最新技術のデモ体験

約30ものデモ環境が用意されているという新LINKSPARK OSAKAだが、リニューアル当日も多くのデモ展示が行われたので、そのいくつかを紹介しよう。

■ロボット・ドローン
ロボットを活用した点検・案内業務の自動化により、人手不足の解消、業務品質の向上、そして働き方改革の実現を目指す現場DXを紹介。ローコードにより、専門的な知識を必要とせず、誰でも簡単にロボットを活用した業務改革を行える点が大きな特徴となっている。

  • ローコードでロボット活用を簡易に

    ローコードでロボット活用を簡易に

また、ドローンによる映像をリアルタイムで取得し、生成AIが即座に状況を理解・解析する最新デモも実施。取得した映像をもとに、現場の状況把握や異常検知、判断支援をその場で行うことによって、これまで人に依存していた業務の高度化・省力化を実現する。

  • ドローンで映像をリアルタイム取得

    ドローンで映像をリアルタイム取得

■データ分析
世界で46名、日本では3人の選ばれた「Tableau Visionary」である酒井佑太氏による「Tableau ダッシュボード」を使ったデータドリブン経営を体験。経営ダッシュボードを使うことで、KPIをタイムリーに可視化できるほか、意思決定のスピードも質も向上させることができる。

  • データ分析の解説を行う「Tableau Visionary」の酒井佑太氏

    データ分析の解説を行う「Tableau Visionary」の酒井佑太氏

■AIブース
AIブースでは、汎用型から業務特化型まで、用途別の生成AIサービスなどを幅広く展示。「ローカル生成AI」では、オンプレミス環境で機微情報の取扱いに特化した生成AIとして、NTT研究所が開発した「tsuzumi2」を採用し、外部環境にデータを出さずに生成AIの高度な機能を活用できる仕組みが紹介された。

  • 「tsuzumi2」を採用したローカル生成AI

    「tsuzumi2」を採用したローカル生成AI

■EX(従業員体験)向上
NTT西日本が開発した「生成AIを活用したDE&I推進ツール(KarafuruAI)」を用い、職場の多様性・公平性・包摂性(DE&I)を高めるためのAIによる対話型バイアスチェックやトレーニングを紹介。VRを使って実際のシチュエーションを体感したり、Webブラウザ上で自分自身の考え方や職場の課題に対する回答を入力することで、AIが即座にフィードバックや専門家アドバイスの提示などが体験できる。

  • VRを使ってパワハラなどのシチュエーションを体感

    VRを使ってパワハラなどのシチュエーションを体感

■サイバーセキュリティ対策
実際にNTT西日本内で行われているサイバー防衛の取り組みを、可視化されたダッシュボードを通じて体験。また、サイバー攻撃が発生した状況をシミュレーションすることで、実際にどのような対処が必要なのかを追体験できる没入型デモや、ランサムウェアが端末に侵入した際の「感染の初動→暗号化→影響拡大」までが、シミュレーション形式で体験できる。

  • サイバー防衛の様子を可視化されたダッシュボードで紹介

    サイバー防衛の様子を可視化されたダッシュボードで紹介