第19回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は、準決勝2局、決勝1局の計3局が大阪府高槻市の「高槻城公園芸術文化劇場」で行われました。このうち、藤井聡太竜王・名人と伊藤匠二冠の間で行われた決勝は94手で藤井竜王・名人が勝利。相掛かりの中盤戦で力を発揮し自身5度目となる優勝を決めました。
ファン感激の舞台設定
午前に行われた準決勝で藤井竜王・名人は佐藤天彦九段に、伊藤二冠は阿部健治郎七段にそれぞれ勝って決勝に進出。2018年の本棋戦決勝では伊藤匠三段が記録係として、藤井聡太五段(段位は当時)の初優勝を見届けており、縁のある舞台設定にファンも「これは胸熱」「ドラマですね」と興奮を隠せません。振り駒が行われた本局は伊藤二冠の先手番で相掛かりへ。
後手となった藤井竜王・名人の作戦は先手に横歩取りを許すもので、代償として1筋の端歩を取り込めるのが主張です。前例ある展開で両者かなりのハイペースで指し手を進めるなか、端をめぐる折衝が一段落すると盤上は第二次駒組みへ。先手からの桂頭攻めが見送られたことで戦いは先送りと思われた矢先、4筋に角を据えたのが伊藤二冠決断の打開策でした。
魔法のような守りの歩
角を切って攻め続ける伊藤二冠ですが、その勢いとは裏腹に形勢は後手へと振れ始めます。丁寧な自陣角で飛車の侵入を防いだのが藤井竜王・名人のいい辛抱。先手が攻めを続けるには飛車を切り飛ばすよりないのを見越しており、好機に反撃に出れば手にした豊富な持ち駒で敵玉攻略が見えてきます。伊藤二冠は仕掛けについて局後、「強引な気がしていた」と明かしました。
優位に立ってからの藤井竜王・名人の指し回しは冷静でした。自玉そばに馬を作られた局面はいかにもピンチですが、軽く歩を打って詰めろを受けたのが魔法のような軽妙手で、先手からの攻めがピッタリ止まっています。終局時刻は15時51分(対局開始14時15分)、最後は自玉の受けなしを認めた伊藤二冠が投了。一度もリードを許さず快勝、5度目の優勝を決めた藤井竜王・名人は「朝日杯は初めて優勝した棋戦で思い入れがある」と感慨を語りました。
水留啓(将棋情報局)
