「扶養内で働きたいから、月8万8000円を超えないように調整しなきゃ……」。こうした106万円の壁を意識した働き方をしている人は少なくありません。しかし近年、最低賃金が大幅に引き上げられたことで、社会保険加入条件のうち「賃金要件」は実質的に意味を持たなくなってきました。※サムネイル画像:PIXTA

「106万円の壁」を意識して、月8万8000円を超えないようにシフトを調整している人は多いでしょう。ところが、最低賃金の大幅な引き上げにより、この壁の根拠になっていた「賃金要件」は実質的に機能しなくなりつつあります。

なぜそういえるのか、社会保険の加入条件を確認しながら整理していきます。

◆「106万円の壁」が存在していた賃金要件とは?

そもそも、なぜ「106万円」が壁といわれてきたのでしょうか。

短時間労働者(パート・アルバイト)が勤務先の社会保険に加入する条件は、次の5つです。

①従業員数51人以上の企業に勤務していること(2026年1月現在の基準)

②週の所定労働時間が20時間以上であること

③月額賃金が8万8000円以上(年収約106万円)であること

④2カ月を超える雇用の見込みがあること

⑤学生ではないこと(夜間・通信などを除く)

この中でも特に多くの人が意識していたのが、③の「月額8万8000円」の賃金要件です。

「手取りを減らしたくないから、月8万8000円を超えないように働く時間を抑えるべきか……」と悩む原因になっていました。

◆令和7年度から最低賃金が全国平均1121円に!

ところが、この「8万8000円」という基準が実質的に消えつつあります。理由は最低賃金の大幅な引き上げです。

2025年度の最低賃金は全国平均で時給1121円となり、最も低い地域でも時給1023円まで上がりました。

実際に計算してみましょう……

時給1023円×週20時間×52週=年収106万3920円(月額8万8660円)

つまり、全国どこで働いていても時給が1023円以上で週20時間働くと、この時点で月額8万8000円を超えてしまうのです。

2025年度には全都道府県で最低賃金が1023円を超え、2026年度以降さらに1050~1250円程度まで上がる可能性もあります。

◆「週20時間働いても、時給が低いから社保に入らなくてすむ」が不可能に

これまでは、「時給が低いから週20時間働いても月8万円未満。だから社会保険に入らなくていい」というケースもありました。

しかし現在では最低賃金が上昇したため、週20時間以上働く=月8万8000円を超える、という状況になり、賃金要件は実質的に意味を持たなくなったといえます。

そのため今後は「106万円の壁」を意識してシフトを調整する必要は薄れていくでしょう。

◆これからは「壁を避ける」より「社会保険の恩恵を活かす」意識へ

これからの働き方は、「壁にぶつからないようにブレーキを踏みながら働く」のではなく、「老後資金づくりのために、社会保険のメリットを受けながらしっかり働く」という意識がより重要になっていくのかもしれません。

最低賃金も上がっています。手取りを増やしながら、将来の保障も整える働き方を考えていきたいところです。

【参考】

厚生労働省 令和7年度地域別最低賃金の全国一覧

文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)

銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。

文=拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)