20年ぶりの「里帰り」がもたらした衝撃|グッディング・クリスティーズ、パリ・レトロモビルで記録的デビュー

2026年2月、パリの冬を彩る世界最高峰のヒストリックカー・イベント「レトロモビル」において、ひとつの大きな転換点が訪れた。これまで長らく公式オークショニアを務めてきたアーキュリエルに代わり、クリスティーズ傘下のグッディング&カンパニー(以下、グッディング・クリスティーズ)がその大役を担ったのである。

【画像】総落札額は約80億円!パリのレトロモビルを彩ったフェラーリやランチアストラトスなど(写真28点)

今回のオークションは、2024年にクリスティーズがグッディングを買収して以来、欧州初の大規模な共同開催イベントとなった。クリスティーズにとってレトロモビルは、2002年から2007年まで自社のモーターカー部門がオークションを主導していた、いわば「約束の地」である。約20年ぶりの復帰は、単なるビジネスの拡大ではなく、ヘリテージ文化への回帰という文脈を含んでいる。

総落札額5000万ユーロ超、驚異の「80%」が物語る市場の熱狂

初陣となったパリでのセールは、総落札額5000万ユーロ(約80億円)を突破し、落札率は80%以上という極めて高い水準を記録した。これは同週に行われた他のオークションと比較してもトップクラスの数字であり、グッディング・クリスティーズという新体制に対するコレクターたちの信頼を証明する結果となった。

特筆すべきは、記録的な高値で落札された個体たちの顔ぶれだ。

1984年 フェラーリ 288 GTO: 911万7500ユーロ(約16億7000万円)で落札。1カ月前に樹立されたばかりの世界記録を約200万ユーロも塗り替える歴史的快挙となった。

2018年 フェラーリ FXX K Evo: 698万ユーロ(約11億円)で落札され、同モデルのオークション記録を更新した。

1975年 ランチア・ストラトス HF ストラダーレ: セレステ(空色)のカラーリングを纏った完璧な個体は、81万5000ユーロで落札。モデル別の世界記録を樹立した。

日本との邂逅: チーム・タイサンの「458 GTE」が刻んだ歴史

日本の読者にとって見逃せないトピックは、2013年フェラーリ 458 GTEの登場だろう。ミケロットによって製作されたわずか52台のうちの1台であり、かつて日本の名門「チーム・タイサン(Team Taisan)」に新車デリバリーされた個体である。この458 GTEが公のオークションに出品されるのは今回が初であり、113万ユーロ(約1億8000万円)という価格で落札された。かつて富士や鈴鹿で咆哮を上げたマシンが、今や世界的なコレクタブル・カーとしての地位を確立し、パリの地で新たな歴史を刻んだ事実は感慨深い。

大西洋を越え、舞台はニューヨークへ

グッディング・クリスティーズの勢いは、このパリの成功だけに留まらない。彼らはすでに、2026年11月に開催される「レトロモビル・ニューヨーク」への参画を表明している。ジャヴィッツ・センターを舞台に行われるこのイベントは、レトロモビルにとって初のアメリカ進出であり、グッディング・クリスティーズが公式オークショニアを務めることが決定している。

欧州の伝統とアメリカのマーケットパワー。この二つをクリスティーズのネットワークが繋ぐことで、クラシックカー・マーケットはまた新たなフェーズへと移行しようとしている。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI