いま、海外で注目を集めている「ブルーゾーン」とは、世界のなかでも特に長寿の人が多い地域を指す概念です。ここから派生した「ブルーゾーン・ダイエット」という言葉が使われることも。これは特定の食事法を指すものではなく、長寿地域に暮らす人々の食習慣や生活環境の共通点を整理した考え方で、日本ではまだあまり知られていませんが、健康寿命を考えるうえで多くのヒントが含まれています。本記事では、ブルーゾーンの特色と、食事を中心とした特徴をわかりやすく解説します。
ブルーゾーン・ダイエットの基本
そもそも「ブルーゾーン」って何?
ブルーゾーンとは、イタリアのサルデーニャ島、アメリカ・カリフォルニア州のロマ・リンダ、コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島、そして日本の沖縄県という、主に5つの長寿地域を指します。 この概念を広めたのは、アメリカの探検家で『ナショナル・ジオグラフィック』のフェローであるダン・ビュイトナー氏です。2000年代初頭、ビュイトナー氏は人口統計学者や老年医学の研究者と協力し、既存の疫学データや現地調査をもとに長寿の人の割合が高い地域をブルーゾーンとして定義し、それらに共通する生活様式を紹介しました。 健康長寿を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれるブルーゾーンのライフスタイルに迫っていきましょう。
期待できる効果
ブルーゾーンでは、食事内容、日常的な身体活動、社会的なつながりなどに共通した特徴が見られ、結果としてがんや心疾患、糖尿病などの慢性疾患が少ない傾向にあることが、各地域の疫学研究から報告されています。 たとえば、サルデーニャでは日常的な歩行量の多さと健康状態との関連が指摘されており、ニコヤ半島では人生の目的意識(生きがい)が精神的健康によい影響を与えていると考えられています。また、家族や地域との強い結びつきも、複数の地域に共通する特徴です。
「ブルーゾーン・ダイエット」という言葉から食事が注目されがちですが、実際には食事だけでなく、生き方そのものに健康的に資する要素が含まれている点が特徴といえるでしょう。
ブルーゾーン・ダイエット食の特徴
肉類は控えめ
ブルーゾーンに暮らす人々は、肉類を日常的に大量摂取することはほとんどありません。肉を食べる頻度は月に数回から週に1回程度とされ、主に特別な日や行事の際に食べられます。加工肉を食べるケースは少なく、摂取するとしても量は控えめです。 サルデーニャでは日曜日や祝日に肉料理が登場することが多く、沖縄では豚肉文化があるものの、伝統的には少量を野菜や豆類と組み合わせて食べられてきました。多くの地域では、豆類や魚、発酵食品などからタンパク質を補っています。
肉類や加工肉の摂取頻度が低い食生活は、脂質や塩分の過剰摂取を防ぎ、植物性食品を中心としながらも一定量摂取することは、栄養バランスを整えやすく、栄養学的にも多くの利点があると考えられます。
植物性食品が中心
ブルーゾーンの食事で共通しているのは、野菜、果物、豆類、全粒穀物などの植物性食品が中心である点です。ロマ・リンダでは菜食を実践する人が多く、イカリア島やニコヤ半島でも、日常の食事は植物性食品が主体です。 また、自家栽培や地元産の食材が使われることが多く、加工食品が食卓に並ぶことはほとんどありません。ビュイトナー氏は、ブルーゾーンでよく食べられている食品として、豆類(インゲン豆、ひよこ豆など)や、季節の野菜・果物を挙げています。
砂糖・卵・乳製品も控えめ
ブルーゾーンにおいて、精製された砂糖や甘い加工食品の摂取はまれです。甘味が必要な場合でも、果物や少量の伝統的な甘味料が使われる程度にとどまります。 卵や乳製品も日常的に大量摂取されることはなく、卵は週に数個程度、乳製品はヤギやヒツジ由来の発酵食品が少量使われるケースが目立ちます。いずれも「完全に避ける」のではなく、「量が少ない」ことが特徴です。
主食は全粒穀物
ブルーゾーンでは、精製度の低い穀物が主食として親しまれています。サルデーニャでは全粒小麦のパン、ニコヤ半島ではトウモロコシが日常的に食べられてきました。これらの穀物は食物繊維やミネラルを含み、結果としてエネルギーの過剰摂取を防ぐ食事につながっています。日本で取り入れる場合は、雑穀米や玄米を取り入れるなど、無理のない工夫が考えられるでしょう。
間食にナッツ類を
ブルーゾーンにおいては、ナッツ類が間食として利用されることがあります。イカリア島ではアーモンド、ロマ・リンダではクルミなど、地域ごとに親しまれている種類は異なりますが、いずれも少量を日常的に摂る点が共通しています。ナッツ類を間食に取り入れることは、血糖値の急上昇を防ぎ、良質な脂質やミネラルを補給できる点で、栄養学的にも理にかなった選択といえます。
水分をしっかり摂る
水を中心とした十分な水分摂取が習慣化しているのも、ブルーゾーンの特徴です。ニコヤ半島でミネラルを豊富に含む水が飲まれていることが紹介されることもありますが、水分補給そのものが健康に寄与していると考えられます。
ブルーゾーンの考えを取り入れる際の注意点
ブルーゾーン・ダイエットはライフスタイル全体の考え方
ビュイトナー氏は、長寿地域に共通する要素として「パワー9」と呼ばれる9つの特徴を紹介しています。これには上記の食の特徴に加え、腹八分目の食習慣や適度な飲酒といった食事に関する要素のほか、日常的な身体活動、社会とのつながり、人生の目的意識なども含まれます。
つまりブルーゾーンでの食事法にのみ注目するのではなく、ライフスタイル全体が健康を支えている点が重要といえます。そのうえで、日中はしっかり食べ、夕食を軽めにするといった食事リズムも複数の地域に共通して見られる特徴です。
できることから取り入れてみよう
ブルーゾーンにおける人々の思考や食の特徴を紹介しました。すべてを一度に取り入れる必要はありませんが、植物性食品を増やす、加工食品を減らす、食べすぎないといった点は、日常生活の中でも実践しやすい工夫といえるでしょう。これらは必ずしも「万能な健康法」ではありませんが、健康寿命の延伸を考えるうえでヒントとなりうる考えです。自分の生活に合った形で、無理なく取り入れてみてはいかがでしょうか。



