
江の島ヨットハーバーには多くのヨットたちが係留している。カーボン、アルミニウムといった素材で作られた最新鋭のスポーティーなヨットたち。どれも優雅で格好いい。そしてその中に、ひときわ目を引く大きな木造帆船がある。1962年に建造された歴史ある船『帆船やまゆり』だ。
『帆船やまゆり』紹介
白く堂々とした大きな船体。全長は43フィート(約13メートル)ある。船上には、まるで空を突き抜けるかの様に木製のマストが天空を目指す。オブジェの様に美しい船。まさに海に浮かぶ芸術品。「湘南の貴婦人」と呼ばれるのも頷ける。
かつては、第18回東京オリンピック大会(1964年)の海外・国内の来賓船として、または警備艇として大活躍している。大会終了後は、一般社団法人江の島ヨットクラブ(EYC)のフラッグシップ(旗艦)として活躍した後NPO法人の管理の元で64年もの間、相模湾にその美しい姿で運航されてきた。2025年には日本船舶海洋工学会から、日本の残すべき「ふね遺産」として認定され現在に至る。
画像出典:NPO法人 帆船やまゆり保存会
『帆船やまゆり』Youtube
NPO法人 帆船やまゆり保存会(団体概要)
岡田理事長インタビュー
現在は、『NPO法人 帆船やまゆり保存会』が管理・運営にあたっています。今回、岡田昌己理事長に 『NPO法人 帆船やまゆり保存会』 の活動、そして海の魅力をたっぷりインタビューして来ましたのでご紹介致します。
海の魅力とは何でしょうか?
「人の力で出来ることは、本当に限られているのだなっていうことを海に出ると素直に感じられるんです。日常生活だといろんなことが便利ですが、船の上では、自分の知恵と力だけが頼りです。潮風を読み、瞬時の知恵と判断力で船を進める。自然を感じるっていうのは、ものすごく感覚が研ぎ澄まされていきます。」
たしかに何でも便利な時代にいて、とっさの判断で動くことが少なくなってきています。自然を楽しみながらヨットを体験するのは、日常に無い良い体験をすることになるのかもしれませんね。
「船の上から見る海は、岸から眺めるのと全く違うので、発想の転換にも繋がると思います。」
視点を変えてみるというのも良いですよね。当たり前すぎる日常も視点を変えるといろいろなことに気づきます。私も船の上から海が見たくなりました。
活動を通して目指すものは?
「『帆船やまゆり』を、あらゆる人たちの架け橋にしたいなと思っています。乗船には、制限がありません。中には車椅子を利用されている方もいますし、そういう意味では老若男女、障害の有無など関係なくみなさんに乗って頂いて貰える様にしています。我々が寄り添って、船にご案内できる架け橋に、この船を使って社会貢献していきたいと思っています。あとは、地元に住んでいても海に関わる機会が少ないっていう方たちが、海に関わるきっかけになればと思います。」
実は、私もそうでした。海の側に住んでいても、船に乗る機会はありませんでした。ましてやヨットハーバーは敷居が高いと感じていた一人です。今回取材ということで関わらせて頂きましたが、もっと早く来れば良かったと思いました。意外と敷居など無く、気楽に来ても歓迎されます。この記事を読んで頂いている方の中には同じことを思っていた方もおられると思いますが、一度ぶらりとヨットハーバーを訪れてみてください。海岸に出るのと変わらないくらい簡単ですよ。
ちなみに『帆船やまゆり』では、一般クルージングもやっています。最近では、海外の方などもクルージングしに来られるらしいです。
クルージングの楽しみについて教えてください
「サンセットクルージングというのがあるのですが、夏場になると日没も遅くなりますから、完全なサンセットにはならないのですが、船の上から見る夕暮れ時を体験して貰えます。その時は、あまりお堅いことも言わずにビールやお酒を買って来て貰って、船の上でビール片手に夕焼けを楽しんで貰います
私も、ほぼ毎日のように夕日を見に海岸まで行きます。湘南の夕日ってひときわ綺麗ですからね。私も船の上で夕日を見ながらビールを飲んでみたいです。素敵過ぎませんか!
地域活動について
「毎年江の島で行われるノルウェーカップヨットレースのVIP船として『帆船やまゆり』が使われます。また、地元の藤沢市立片瀬小学校では、3年生の課外授業でセーリング体験があります。他にも、養護学校や地元モンゴルの留学生の体験セーリングなど国際交流活動も行っています。」
地域に密着した活動をいろいろされているとのことです。地域と海の架け橋。もっともっと身近に感じて貰えるよう、地域活動に力を入れているとのことでした。
年間スケジュールは、例年3月下旬に決まるとのことです。・ノルウェー杯・一般クルージング ※2026年も4月末から11月いっぱいまで毎週土日を中心に一般の方の体験航海あり・片瀬小学校の課外授業・他
詳細は、『帆船やまゆり保存会』のホームページからご確認ください。
『帆船やまゆり保存会』イベント紹介
メンテナンス活動
「11月末から3月にかけては、メンテナンスの時期に入ります。何でもそうですが、例えば家だって住まないと朽ちてしまう。船だって動かしてないと傷んでしまうんです。だから展示ではなく動態保存を目指します。壊れたら直して、磨いて、動かします。もう古いので部品がなかったりする場合もあります。無ければ作れるモノは作る。『生きた船』として残していきたいと思っています。」
江の島ヨットハーバーには、驚くべきことに『帆船やまゆり』の建造された横浜市の造船所から一緒にやって来られた技術者が、現在も現役で修理の指揮を取っているそうです。みんながこの船を大切にしている。そんな人達の思いが、今もこの船を動かし続けているのですね。
今回、マスト外しを見学させて頂きましたのでご紹介します。
大型クレーン車が来ました。ヨットハーバーの中にある大型クレーンでも、『帆船やまゆり』の巨大なマストは重くて持ち上げるのが厳しいとか。
マストに登り、ロープをつなぎます。ちなみに、マストは15m、300kgあるそうです。
船の上の会話が聞こえてきます。「今日は風がないのでいいねぇ。」「あと50センチくらい下げて。」「はいok!」
マストと船体を繋いでいたワイヤーが次々と外され、マストが持ち上げられます。
そして船の外に降ろされます。
木製マストも部品達も、どれも美しい輝きを放っていました。
品のあるレトロな高級家具のようです。よく整備されているのがわかります。
マストを外された『帆船やまゆり』。ちょっと寂しそう。船体も、これからじっくりメンテナンスされていきます。
最後になりますが
「歴史的に貴重な『帆船やまゆり』を残すこと。そしてこの船を通して広く船の楽しさを広げる役割を果たしていきたいです。」
岡田理事長はじめ、『帆船やまゆり』に関わるみなさんの思いが伝わりました。恥ずかしながら、こんな近くに、こんな歴史的な船があることさえ知りませんでした。海を愛し、船を愛する人達に出会いました。
ご紹介したように、『帆船やまゆり』の管理・運営は、歴史的なモノをここ湘南に残す役割以外に、地域貢献その他と大変な作業でした。そしてこの記事を読んで頂いているみなさんにも、『帆船やまゆり』を通してもっともっと湘南の海を身近に感じて欲しいと思いました。(一般クルージングの参加費用の一部は、管理運営資金になります。)
今回、保存会の活動を見学させて頂きましたが、次回は乗船したいです。サンセットクルージングに参加したいです。みなさんも是非、クルージングに参加してみてください。海の魅力を再認識出来ますよ。
ということで、クルージングシーズンになりましたら船上からお届けします!
つづく。
NPO法人 帆船やまゆり保存会
アクセス
小田急江ノ島駅から徒歩10分住所:〒251-0036 藤沢市江の島1-12-2 江ノ島ヨットハーバー内駐車場:あり
お問い合わせ
NPO法人 帆船やまゆり保存会事務局電話番号 0466-90-3824FAX 0466-90-3825



























