日本テレビ系ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(毎週水曜22:00~)が、きょう14日にスタートする。

  • 杉咲花

    杉咲花

監督・脚本の今泉力哉氏は、杉咲花の主演が決まっていたところから描いた脚本だと言う。2人のお互いの信頼感を感じる作品であることに注目してほしい。杉咲演じる「土田文菜(あやな)」を通して、本当に実在する1人の女性の日常を覗いているような錯覚に陥ってしまうだろう。

そして文菜の周りの男性、佐伯ゆきお(成田凌)、早瀬小太郎(岡山天音)、山田線(内堀太郎)。彼らがいて文菜の「リアルな恋愛」が映し出される。

ゆきおと文菜は、偶然コインランドリーで出会う。そして偶然から会話が始まり、しばし一緒の時間を過ごす。そして、つきあうことに。なぜつきあうことになったのか。ゆきおにとって文菜に気づかされる「近くにある非日常」に注目だ。

小太郎は、文菜が学生時代アルバイト先で出会った年上の先輩で、文菜に好意を抱いている。小太郎と話す時の文菜の声のトーン、フランクな雰囲気は他のシーンとはまた違い、ちょっとした会話なのだが、2人が旧知の仲であることが見て取れる。

そして文菜が小説家の先輩の山田と会うシーンでは、会話が途切れた時の無言の時間や、「何?」「何でもない」といった会話がリアルだ。「視線のじゃれ合い」というセリフが出てくるが、2人の視線のやり取りはつい見入ってしまう。

それぞれの登場人物の関係性や会話、演技のすべてが自然体で、それが故にリアル感を生み、抵抗なくすっと入って来る。

今泉監督らしい、あえてカットを細かく割らず、各シーンを引いたサイズで、画を動かさずに撮ることで、自然な会話の流れや、距離感、感情を描き出している。「間」もあえて詰めることなくそのまま生かし、しかしそれが冗長すぎないので、効果的に心の内を表現している。

何か特別な事件が起こるわけではない。杉咲も脚本を読んで、「ささやかな瞬間ばかりが描かれた作品」とコメントしているが、普段ドラマではあまり描かれないであろう、ありふれた感情の機微が描写されている。「日常に感じていることも誰かにとっては景色」というセリフにも頷ける。

そして今泉作品と言えば「会話劇」だ。シーンの数も通常のドラマと比べるとかなり少なく、必要以上に丁寧な会話で紡がれている。また、どのセリフもいわゆる決めゼリフなどではなく、どこにでもありそうな言葉ばかりなのに、それらをドラマの中で聴くことへの新鮮さがあり、自然な流れの中でやりとりされる言葉や間合いから、今泉が役者をいかに信頼しているかが伝わってきて、魅了される。

主演の杉咲は、数々のドラマや映画でその卓抜した演技力が高く評価されている。昨年は『アンメット ある脳外科医の日記』(4~6月、カンテレ・フジテレビ系) や『海に眠るダイヤモンド』(10~12月、TBS系)で繊細な感情表現、丁寧な演技で視聴者を魅了した。

今回演じる文菜は、本気で人を好きになることに少し抵抗があって…それでも人は人に惹かれてしまう。ゆきおのことを知っていくこと、付き合っていくことは楽しみでもある反面、付き合ったらその先に迎えるかもしれない別れに不安を感じる文菜。冬と春の間を行き来するように、迷って、悩んで、“好き”が煮詰まっていく。それを体現する第1話となっている。

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