関東地方船員対策協議会と日本内航海運組合総連合会は、関東運輸局(国土交通省)の共催のもと、船舶エンジニア(機関士)を中心とした船の仕事の説明会「船の仕事を知る仕事フェア」を、12月19日、群馬県高崎市のたかさき書斎にて開催した。
2025年10月・11月と開催し、今回が3度目となる「船の仕事を知る仕事フェア」。今回の参加者は、以前の回に参加し、より船員の仕事に興味を持った20~40代の社会人が中心とのこと。
これまでに開催された同イベントでは、陸の仕事と海の仕事の違い、内航船の重要性や機関士の役割、そして船員としてキャリアアップするために必要な海技資格など、「船の仕事」の導入について解説を行っている。今回はさらに一歩踏み込んで、関東地方船員対策協議会のメンバーとディスカッションを重ねる形式で進められた。
社会人から船員へ、助成金や奨学金のサポートも活用
「興味を持ってきてくださった皆様には、今日の回で不安を解消してほしい」と関東地方船員対策協議会の会長であり、関東沿海海運組合の理事長を務める榎本回漕店 代表取締役社長・榎本成男氏が語るように、より具体的な情報を知りたい参加者から、率直な質問が寄せられた。
船員になるためには、基本的に海技資格が必要となる。海技資格を取得するには、海技教育機構や商船系大学、商船高専等といった船員教育機関に入り、2年以上かけて海技資格を取得する形が一般的だが、より短期間で六級海技士の受験資格を取得できる「六級海技士短期養成課程」がある。
これは、2.5ヶ月の座学と2ヶ月の乗船実習を修了し、その後6ヶ月の船社での乗船経験を積むことで6級海技士の受験資格が得られる制度だ。さらに課程修了者は、6級海技士試験のうち筆記試験が免除される。現在は、広島県尾道市の尾道海技学院と、九州・関西・沖縄に拠点を置く日本海洋資格センターで受講することが可能だ。
社会人が海技資格を取得してから船員に転職する場合、学費に加えて離職後から働き始めるまでの生活費など金銭面の不安も大きいだろう。失業保険や職業訓練給付金に関する質問に関しては、オンラインで日本海洋資格センターの担当者とつないでのアドバイスも行われた。
六級海技士短期養成課程は、厚生労働省から受講料の8割を助成する制度がある。例えば、日本海洋資格センター 九州校で受講する場合、受講料310,800円のうち、248,640円の助成金額(8割)を受けることが可能で、受講者の手出し金額は62,160円となる。また、受講費以外の諸費用や講習期間中の宿泊費・生活費といった費用については、海技教育財団による、最大120万円まで無利子で借りられる奨学金制度も紹介された。
年間で複数のコースが用意されているので、入学のタイミングは、離職の時期などから逆算して決めるとスムーズだろう。ハローワークによっては船員の職業訓練に関する知見が少なく対応が難しいこともあるため、「まずは、横浜にある関東運輸局海事振興部船員労政課に連絡をしてみたり、講座を開く日本海洋資格センターに相談するとわかりやすい」とアドバイスも行われた。
「働きながら海技士資格を取ることはできますか?」という参加者からの質問には「資格がないと部員(甲板員)としてしか働けないので、給与の上がり方が違います。早めに取った方が良いと思いますね。また、企業によっては入社後に資格取得支援を行う企業もあるので、直接相談してみては」と回答。将来船長を目指す場合など、キャリアアップのためには持っておきたい資格だ。
就職先の探し方は?
また就職先の探し方として、国土交通省の「海のハローワークネット」を紹介。これは求人内容から求人情報が検索できるサイトだ。
「求人票を見て、会社に問い合わせるときは何を聞きますか?」と、未経験の求職者ならではの質問に対しては、「どのような船があるか、乗船人数、休暇の割合などを聞きますね。休暇のことは遠慮なく聞いてほしいですし、『しっかり確認しているから、きちんとした人なのかな?』と会社側に受け取られるかもしれません」。
また、内航船員の働き方は2~3ヶ月船に乗り、約1カ月休むサイクルが多いため「休暇中の給料はどうなるのか?」という声も。「乗船期間中の乗船給と、下船している期間の下船給があり、おおよその給与や賞与は就職の問い合わせをした際に提示されます」と榎本氏。住んでいる自治体によって税金も異なるので、直接聞いてみるのがよさそうだ。
なぜ船員に興味を持った?
また、参加者に向けて「船員に興味を持った理由は?」と質問も行われた。未経験者も多いなか、一体どのような点に魅力を感じているのだろうか?
これに対して「乗り物と船が好きなので、海に関わる仕事をしたい」「2~3ヶ月乗船・1ヶ月休暇のサイクルを魅力に感じていること、また乗船中は船上で生活するので生活コストがかからずお金が貯めやすそう」「給与面と安定性。仕事がAIに置き換わっても、人が船に乗る必要があることに安定感を感じる」といった声が返された。
また群馬開催ならではの質問として「群馬に住んでいるが、九州など遠方の会社に就職ができるか。関東の会社のほうが有利か」という疑問も寄せられた。
これに対して榎本氏は「内航船は全国各地の港から港へ貨物を運ぶ仕事です。そのため、就職に際して住む場所と働く場所が近いか遠いかはあまり関係はありませんね」と回答。高崎から東京までは新幹線で約1時間。横浜・東京・千葉など、東京湾に近い場所の拠点を構える会社なら、交通の便も楽そうだ。
3回のセミナーを経て、参加者と多くの対話を重ねた榎本氏は「前回・前々回に参加し、深く興味を持ってくださった方々が本日は来てくださいました。当初は海の仕事の導入的なセミナーや企業説明会を行おうとも考えていましたが、参加される方を見て質疑応答の形式に変えました。今回は初めての取り組みなので、これからどのように周知し、母集団を増やし、どんなやり方をすればよいか、アプローチの方法を改めて考えたいですね」と今後について期待を寄せる。
また、本イベントを企画・運営したワークエントリー 人材サービス事業部 マネージャーの千野祐貴氏は「群馬県の特徴として製造業の比率が高いことから、機関士の仕事に重点を置いた仕事の案内を行いました。製造業で働く方もお越しいただきましたが、参加者の方々の反応を見ると"未経験からでも飛び込めること"にも魅力を感じられているようです」と振り返った。
海なし県・群馬で行われた「船の仕事を知る仕事フェア」。転職に向けて高い意欲を持つ方、現状の仕事と比較してじっくり悩む方、反応はそれぞれではあるが、船の仕事に興味を持った方にじっくり向き合うイベントだ。船の仕事に関する説明会は沿岸の地域で行われることが多いが、あえて内陸で行うユニークな取り組み、今後の展開にも注目したい。







