神奈川県立こども医療センターで11月28日から始まった「こども医療スマイラル」。One Smile Foundationが開発した“笑顔を寄付金に変える”技術「スマイラル」を活用した取り組みだ。
センターを訪れる子どもや家族、そして職員たちの笑顔を検知し、そのカウントが寄付につながる仕組みで、クリスマスイベントが実施された12月12日にはすでに1万4,000円以上の寄付が集まっていた。
病院内で広がる“笑顔の連鎖”「こども医療スマイラル」を実施
自分の笑顔が、誰かの役に立つ。「スマイラル」とは、「Smile(笑顔)」と「Spiral(連鎖)」を掛け合わせた造語だ。笑顔が次の笑顔を生み、気づけば支援の輪がさらに広がっていく。そんな温かい願いが込められたプロジェクトである。
「こども医療スマイラル」のシステムは至ってシンプル。設置されたタブレット端末のカメラに向かって微笑みかけ、AIに笑顔が検知されると「1笑顔=1円」となって神奈川県立こども医療センターへ寄付される。
プロジェクトの進行は神奈川県政策局「いのち・未来戦略本部室」が担い、寄付金はスポンサーであるJA共済連神奈川が提供する。11月には、JA共済杯第46回神奈川県小学生バレーボール大会でもこの取り組みが実施された。
今回、スマイラル実施の舞台となったのは神奈川県立こども医療センター。外来受付前の待合スペースと、職員が行き交う事務局前にそれぞれ設置された。
外来受付前では、診察を待つ子どもたちが次々と足を止めては画面の前でにっこりと笑顔を作る。慣れない機械の前ではじめはモジモジしていた子も、親が試す姿を見ると「自分もやってみたい」と笑顔を浮かべる。スマイラルの周囲は小さな笑い声が絶えず、待合スペース全体がふわりと明るくなっているように見えた。
一方、事務局前に設置された端末は、センター内で働くスタッフたちのリフレッシュにもひと役買っていた模様。忙しい業務の合間にほんの数秒、笑顔を作る。それだけで仕事中の空気感も和やかになるという好循環が生まれていたようだ。
クリスマスイベントが行われた12日には、毎年恒例となっている米軍横田基地の米空軍太平洋音楽隊がセンターを訪問。サンタ帽と迷彩服に身を包んだ隊員たちはクリスマスソングを奏で、サンタクロースやトナカイ、さらには『スター・ウォーズ』のキャラクターたちまでが登場。病気と闘う子どもたちにプレゼントを配り、家族とも交流を深めた。
通常であれば物静かな雰囲気が漂いそうな病院のロビーも、この日は和やかで賑やかな雰囲気に包まれた。子どもたちも、陽気なキャラクターや不思議な機械(スマイラル)に興味津々な様子。クリスマスイベントとスマイラルが重なったことで、笑顔の相乗効果を生んでいたようだ。
神奈川県立こども医療センターの事務局長、中島秀和さんはスマイラルについて、「患者さんもご家族も、そして職員も楽しめる取り組み。厳しい病状を抱えるお子さんもいるなかで、こうした仕組みは励みになると感じています」と感想を述べる。
「ひとつの笑顔を1円の寄付に変えていく。とても良い取り組みですよね。笑顔は普通、自然に出るものですが、意識して作ることで結果的に笑顔の数が増えていく。良い循環が生まれていると思います。
私自身もスマイラルを使っていますが、職員同士のコミュニケーションのきっかけにもなっていますね。ちょっと意識して笑顔を作るだけで、気持ちにゆとりが生まれる。場の雰囲気も明るくなった気がします」(中島さん)
職員が笑顔になれば、それは患者へのケアの質にもつながっていく。スマイラルは、患者への支援だけでなく、現場で働く人たちのエンゲージメントを高める狙いもあるらしい。
外来受付前の端末は、親子のコミュニケーションを生む役割も果たしているという。
「親御さんがやると、お子さんもつられてやってみる。親子で笑顔を作るだけで、その場がパッと明るくなる。不安を抱えながら来院される方も多いので、こうしたきっかけはとても大事だと思います」(中島さん)
実は神奈川県立こども医療センターに設置されたスマイラルは、緻密に計算された“社会実験”の側面も併せ持っている。
期間中(11月28日~12月18日)を3つのフェーズに分け、最初は「笑顔を検知中」とだけ知らせる期間に設定し、次は「あなたの笑顔が寄付になります」と書き加えて、人の「誰かの役に立ちたい」という気持ちがどのように笑顔に影響するかを観察。そして最後が、今回のようなクリスマスイベントと掛け合わせた期間である。
「ただカメラがあるとき」と「自分の笑顔が病院の支援になると知ったとき」。人はどちらが多く笑うのか。アプローチを徐々に変化させることで、何が人の心を動かし、笑顔のアクションを引き出すのかを探っているのだという。
医療の現場には、どうしても緊張や不安が入り混じる瞬間がある。しかしこの日、センターの各所に設置されたスマイラルのデバイス前には、確かに笑顔の連鎖が生まれていた。今後は、JA共済連神奈川が神奈川県立こども医療センターに寄付金の贈呈を予定している。







