草なぎ剛が主演を務めるカンテレ・フジテレビ系ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(毎週月曜22:00~ ※FODほかで配信)の第10話が、15日に放送された。

妻の死をきっかけに“遺品整理人”となったシングルファーザーの主人公が、遺品整理や生前整理を通じて、残された家族へのメッセージをひも解いていくというヒューマンドラマ。

これまで今作において、二重の意味で視聴者を“不穏”にさせていたのが御厨グループの存在だ。今回は、不穏の源についに“血が通い始めた”ことで、物語が単なる勧善懲悪を超え、より深みを増すクライマックスへと転じることに成功した回だった。

  • (左から)要潤、草なぎ剛 (C)カンテレ

    (左から)要潤、草なぎ剛 (C)カンテレ

「人間ドラマ」×「記号的悪役」の組み合わせの悪さが不穏に

繰り返し述べてきたように、今作は死を扱いながらも常に優しい世界観を保ってきた。だが、その優しさを脅かす異物として、御厨グループの自殺者隠蔽問題が存在していた。そしてもう一つ、ドラマとしての構造的な“不穏”さもあっただろう。主人公・樹(草なぎ剛)をはじめとする登場人物たちが丁寧に人間味を持って描かれる一方で、御厨グループの面々はどこか画一的で、わかりやすい悪役という“記号”のように映っていたのだ。その「人間ドラマ」と「記号的悪役」の食い合わせの悪さが、作品全体の丁寧さと乖離しているのではないか?という、メタ的視点での不穏さも、実は漂っていたように思う。

しかしクライマックス直前の前回と今回、それまで記号的だった“悪役”の背景が描かれたことで、キャラクターに一気に“血が通った”。働くことと生きることが同義であり、それゆえに自ら命を落とす者の弱さを理解できない父・御厨剛太郎(村上弘明)。そして、そんな父のゆがんだ支配を受け、苦しみを誰にも打ち明けられずにいた息子・利人(要潤)。特に利人は、自身の苦しみを家族に負わせたくないがゆえに、「子作りを拒否し、妻に冷たく接することで巻き込むことを阻止していた」という悲痛が明かされた点が衝撃的だった。

今作が実に巧みなのは、そんな悪役たちに“血を通わせる”ことで、善人に見せて手早く和解させる手段にしなかった点だ。むしろ、背景が明かされ人間味が露呈したことで、感情のもつれはより複雑化し、事態は悪化の一途をたどっていく。この展開は、前半までの優しい世界観が実はこの残酷な対比を描くための壮大な“フリ”だったのかと思わせるほどだ。世の中は“優しさ”だけでは成立していない――そんな社会の真理を、エンターテインメントとして突きつけられたような圧巻の描写だった。

樹の存在によって修羅場にならなかった

だが振り返れば、樹と真琴(中村ゆり)、そして利人が対峙(たいじ)した公園でのシーンこそが、今作のアイデンティティーだったように思う。それは本来なら不倫の三角関係であり、修羅場となって然るべき場面だったにもかかわらず、そこで利人が妻にも言えなかった弱音を樹に何げなく吐露できたのは、“優しい世界”の源泉である樹という存在がそこにいたからに他ならない。

優しさだけでは社会は回らない。だが、優しさが欠落したとき、そこはもはや人が生きる社会ではなくなってしまう。そんなメッセージを、3人の対峙と、今回もう一つの軸となった海斗(塩野瑛久)の疲弊していく姿を通じて、痛切に噛みしめることができた。

これまでの“不穏”が頂点に達し、すべての感情が露わになった状態で、次週、ついに最終回を迎える。この複雑に入り組んだ「生」と「死」、そして「愛」の物語をどう着地させるのか。今作らしいラストを見せてもらいたい。

  • (C)カンテレ