「もう流行!?」と驚く声が多い今年のインフルエンザ。子どもから大人まで幅広く感染が広がり、例年以上の警戒が必要とされています。なぜ流行が早まっているのか、今年の特徴とは? そして今からでも間に合う予防・免疫ケアの方法を中路 幸之助医師に聞いてみました。
吐き気・下痢も…“早すぎるインフル”流行の背景とは
――今年は例年よりも早くインフルエンザが流行していますが、その要因はどのように考えられますか?
国内外での感染者増加、特に海外からのウイルスの持ち込みが活発なこと。
新型コロナ感染対策の緩和に伴い、マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染予防意識が低下し、人の接触・移動が増えたこと。
猛暑の影響による体力・免疫力の低下や生活環境の変化。長期間の熱帯夜で睡眠不足となり、冷房の効いた密閉空間で過ごすことが多くなったため、ウイルス感染拡大に適した環境ができたこと。
夏の疲れ・栄養不足といった体調不良が免疫機能を弱め、感染しやすくなったこと。
新学期に伴う学校や保育施設での集団感染が早期拡大の引き金となっていること。
今年主流の「香港A型(A/H3N2)」は、重症化しやすく、ワクチンが効きにくいと言われていること。
これらの要因が複合的に重なり、例年より1か月以上も早く全国的なインフルエンザ流行が始まったと考えられます。
――今季の流行状況には、どのような特徴が見られますか?
2025年のインフルエンザの流行は、9月末から患者数が増加し、10月初旬には全国流行に入りました。特に西日本(沖縄、九州)で先行して患者数が増え、次第に東日本、大都市圏にも急速に拡大しています。10月末~11月初旬の報告では全国患者数5万7千人超であり、宮城県、神奈川県、千葉県、北海道、沖縄、東京などで流行が顕著です。
――今年のインフルエンザの症状に特徴はありますか?
例年どおり高熱(38℃以上)、倦怠感、関節痛・筋肉痛、頭痛が中心ですが、今年は特に吐き気や下痢など消化器症状を訴えるケースも比較的頻度が高めです。また、症状が軽く、インフルエンザと気づかれないまま感染を広げてしまう、いわゆる「かくれインフルエンザ」も増加しているようです。
――子どもと大人で、症状や重症化の傾向に違いはありますか?
子どもはインフルエンザにかかると、高熱が長く続くことが多く、38℃以上の突然の高熱や全身のだるさ、関節痛、筋肉痛、頭痛といった全身症状が強く出やすい傾向があります。また、嘔吐や下痢などの消化器症状も比較的よく見られ、特に乳幼児では症状が急激に悪化することがあるため注意が必要です。
さらに、子どもは急性脳症などの重篤な合併症を起こすリスクが大人より高いです。感染力も強く、家庭や学校での集団感染を引き起こしやすい特徴があります。
一方、大人は子どもと比べると症状の出方に個人差が大きく、高熱や倦怠感、咳や鼻水などの上気道症状が中心で、筋肉痛や関節痛などの全身症状も見られます。高齢者や基礎疾患を持つ成人では肺炎などの重症化リスクが高まるため注意が必要です。これらの特徴は診断や治療において重要な指標となります。
今から予防接種しても間に合う? 話題のフルミストの特徴は
――「もう11月だから予防接種は遅いのでは?」という声もあります。今からでも予防接種をする意味はありますか?
今からのインフルエンザ予防接種でも遅くはありません。
接種後およそ2週間で抗体が作られ、効果が発現します。最大効果は接種から2~4週間後に達し、その後3~5か月間は予防効果が持続します。したがって、11月の接種でも翌年の流行ピーク期間には十分な予防効果を期待できます。
11月の今からでも接種すれば、流行が本格化する12月以降に十分な効果を発揮し、重症化予防にも役立つと考えられ、遅すぎることはないといえます。特に高齢者、基礎疾患のある方、受験生などは早めの接種をおすすめします。
――ワクチンの効果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか? フルミストとワクチン注射に違いはありますか?
インフルエンザワクチンの効果が出るまでには、注射型ワクチンもフルミスト(鼻スプレー型の生ワクチン)もほぼ同じく、接種後約2週間かかります。この期間は体の免疫システムがワクチンのウイルス成分を認識し、抗体を作り始めるために必要な期間です。
効果のピークは接種後2~4週間で、最大の予防効果が期待できます。その後、効果は約3~5か月間持続し、注射型ワクチンは一般的に4~6か月の持続期間があります。
フルミストは免疫誘導の経路が異なるため、持続期間が約6か月から1年程度とやや長いとされています。フルミストの適応は、日本においては2歳から19歳未満の健康な子どもや若年層です。特に注射が苦手な人や、注射型ワクチンで接種部位が腫れやすい方に向いています。また、1回の接種で効果が期待されます。
一方、成人(19歳以上)や高齢者は適応外で、基礎疾患のある方や喘息、免疫不全、強い鼻閉症状のある方、ゼラチンや卵アレルギーの方は使用に注意や適応外となります。フルミストは弱毒化した生きたウイルスを用い、自然感染に近い形で鼻や喉の粘膜に免疫(特にIgA抗体)をつくるため、粘膜免疫が強化されます。
これにより、特に小児や若年層で注射型より高い予防効果が期待できると言われています。注射ワクチンは「不活化ワクチン」で、ウイルスを死滅させた成分を体内に注射します。主に血液中の抗体(IgG)を増やして全身免疫をつくります。接種時に痛みがあることが一般的ですが、幅広い年齢層で使用が可能です。
今からでも間に合うインフル予防と免疫力を高めるコツ
――予防接種以外で、家庭でできるインフルエンザ予防策を教えてください。
外から帰ったら手洗い・うがいをしっかり行いましょう。石けんを使って30秒以上の手洗いが効果的で、アルコール消毒も併用するとよいでしょう。マスクの着用で飛沫感染を防ぎましょう。特に家族に感染者がいる場合は家族全員がマスクをすることが重要です。
部屋のこまめな換気(1時間に1回、5~10分程度)と適切な加湿(室内湿度50~60%)でウイルスの活性を抑制しましょう。感染者は可能な限り個室に隔離し、共有物(タオル、コップなど)は分けるのも重要。ドアノブ、リモコン、スイッチなど手が触れる場所を定期的にアルコールなどで消毒しましょう。人混みを避けることも有効な予防策の一つです。
免疫力を保つ生活習慣のポイントとしては、十分な睡眠を取ることは免疫機能を維持・向上させるために重要です。睡眠不足は感染リスクを高めます。バランスのとれた栄養摂取を心がけ、特にビタミンCやD、亜鉛を含む食品を積極的に摂ることが推奨されています。適度な運動も免疫力強化に役立ちます。日頃のストレス管理も免疫力維持に有効です。
――最後に、これから本格的な流行期に入りますが、読者に伝えたい「いま最も大切な対策」を教えてください
これから本格的なインフルエンザ流行シーズンに入りますが、感染予防の基本をしっかり守ることが重要です。まず、予防接種は最も効果的な防御手段であり、例年より早く流行が始まった今年は、できるだけ早くワクチンを受けることが肝要と考えられます。ワクチンは接種から約2週間で効果が発現し、その後数か月の予防効果が期待できるため、まだ接種していない方も遅くはありません。
加えて、日常生活での基本的な感染対策である手洗いや手指消毒、マスクの適切な着用を継続することも重要と考えられます。特に人混みや公共交通機関の利用時、咳や鼻水の症状がある場合はマスクを着用しましょう。また、室内の換気や加湿を適切に行い、乾燥を防ぐことでウイルスの活性化を抑えられます。
さらに、十分な睡眠と栄養のバランスの良い食生活、適度な運動やストレス管理といった日々の生活習慣も免疫力維持に重要です。症状が出た場合は早めに医療機関を受診し、感染の拡大を防ぐために自宅での療養や周囲への配慮を心がけてください。これらを実践することが今年のインフルエンザ流行シーズンを乗り切る良い方法と考えます。
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