地域の企業や仕事の魅力を知る課外授業として、千葉県千葉市の中学生が千葉港のマツダロジスティクス株式会社千葉センターを訪問する施設見学会が開催された。8月20日、千葉センターの専用岸壁に着岸した自動車運搬船「第三東洋丸」の船内を、夏休み中の中学生が見学した様子をレポートする。

■工業港として発展した千葉港、企業専用岸壁では完成車輸送も

東京湾の湾奥部に位置し、市川市、船橋市、習志野市、千葉市、市原市、袖ヶ浦市の南北6市にまたがる千葉港は、港湾区域面積が約2万4800ヘクタールに及ぶ、日本一の港湾区域を持つ港。海岸線延長は約133キロメートルで、2022年の貨物の総取扱量も約1億3600トンと名古屋港に次いで全国第2位となっている。 1954年の開港以来、臨海部の埋め立てと企業誘致により、工業港として発展してきたことから企業専用施設が多く、海運会社や荷主などを問わず利用できる公共岸壁は2%ほど。企業専用岸壁が約98%を占めていることも千葉港の特色のようだ。

ガントリークレーンを備えたコンテナターミナルや自動車船取扱岸壁も整備されており、千葉港のコンテナターミナルは首都圏内の立地や充実した交通網なども背景に、東京湾の国際物流拠点となっている。 千葉港は韓国、中国、台湾といった東アジアや東南アジアの各港を結ぶ定期コンテナ航路を持つほか、内航の各種貨物船も定期運航しており、完成自動車などの貨物が海上輸送されている。

定期内航船航路のひとつが、この日見学したマツダロジスティクスが運航する自動車運搬船などによる千葉港と広島港を結ぶ航路だ。 マイクロバスで千葉センターに到着した参加者たちは、まず船内見学に際しての簡単な注意点や同社の概要について30分ほど説明を受け、その後、船内の荷役作業や施設を約40分間かけて見学した。

マツダロジスティクスは1922年、広島で開業した戸田回漕店がルーツとなっている会社だ。回漕店は船舶と荷主との間に立ち荷物を取り扱う仲介業者のこと。1948年の戸田海運への社名変更などを経て、2013年に現在の社名となり、陸・海・空に展開する総合一貫物流企業となっている。

■広島と千葉を結ぶ専用船でマツダ車を海上輸送

現在、マツダロジスティクスの従業員数は約2,000人。北海道~九州に7つの事業拠点を構え、メキシコ、タイ、マレーシアにも海外拠点を有する。千葉センターは、広島の工場から運ばれてきたマツダ車の集積、ETCなどのオプション部品の設置、トレーラーでの販売店までの配送を担う、物流拠点としての機能を有している。

配船間隔は3便/週で、「第二東洋丸」「第三東洋丸」「光洋丸」の3隻が千葉港と広島港を行き来している。かつてはワイヤーロープで商品車を1台1台吊り上げて船に積み込んでいたが、時代が降るにつれて船も進化を遂げ、現在は商品車が自走して直接、船に乗り降りする方式で迅速に約600台を輸送できる巨大な船でマツダの完成車は運ばれている。

3隻のマツダ専用船のうち、今回見学した船は「第三東洋丸」という自動車運搬船。エンジンの最大出力は約7000馬力、18ノット(時速約33キロ)で、広島-千葉間を片道約30時間弱で航海する。各船員には個室が割り当てられ、3食の食事を提供する司厨船員も乗り込み、TVはもちろん、大きなお風呂やWiFiも使える環境だ。

千葉センターに船が入港するのは早朝4〜5時頃のため、船の入港の様子などは映像で紹介された。船の接岸は船長が最も気を遣う、船の運航で最も難しい場面とのことで、風の影響なども考慮し、入港態勢に入ってから約10分で船を接岸させる。

船を岸壁に横付けさせたら陸上の作業員と連携して係留ロープをピットに引っ掛けて船を固定。着岸作業が終わると、船内の商品車を荷揚げするために固縛作業を解除していくという。船内で車両を固定する固縛ベルトは1台につき前後2本ずつの計4本。その後は熟練のドライバーが船に乗り込み、誘導者の指示に従って安全第一で商品車を走行させて陸揚げしていく。

■給油作業も見学

ランプウェイから船に乗り込んだ見学者たちは、最初に実際の荷役作業の様子を見学した。荷役の作業時間は朝8時頃から始めて15時頃までに終了する。1隻あたり6時間ほどで積み下ろしが行われ、その日の夜には広島に向けて再び出港するそうだ。

作業を担当する車両ドライバーは通常の車の運転と違い、商品車の保護のためサイドミラーなどは使わずに走行させる。傷や汚れはもちろん許されない責任ある仕事だ。

操舵室へ向かう道すがら、燃料の重油を補給する様子も上甲板から見学できた。燃料は、燃焼時に排出される硫黄酸化物を低減させるため、油に含まれる硫黄分を低減させた重油を使用しており、消費量は広島~千葉の往復で、ドラム缶約280本分となる。

操舵室では「第三東洋丸」の福井船長らが様々な操船機器の説明を実施。生徒などからの質問を受けた。 荷役の作業場である車両甲板の換気ファンのコントロールや、水密区画の開閉の確認・操作も操船室からできるようだ。重要な船の機械装置を示すピクトグラムは、一つひとつ国際法で定められており、事故を未然に防げる仕組みとなっている。

夜間の操船室は、室内の明かりをつけると光がガラスに反射して外の様子が見えなくなるため、船員同士の顔も見えないほど真っ暗。夜間や視界が悪い状況で航行する際は、他の船に自船の存在や方向などを知らせる航海灯を点灯する決まりなどもあるという。 航海灯には船の左右を示す赤色の「左舷灯」と緑色の「右舷灯」などがあり、その配色は航空機の航空灯も同じ。

そのほか水深や海岸の地形などが記載された海図、事務作業用のパソコンや航海日誌についても紹介された。「第三東洋丸」の乗組員は航海担当が船長を含めて7名、エンジン担当が3名、司厨担当1名の計11名。広々とした船のようで、最後は食堂で休憩を挟んで下船となった。

販売店からの注文を受けて、広島と防府の工場で生産されたマツダ車が船で運ばれてくる。千葉センターの敷地内には陸揚げされた商品車を一時保管する倉庫があり、そこで保管して、オプション用品の取り付けた後、東日本エリアの各地へトレーラーで届けられる。