パニック障害のある人に対して、励ますつもりでかけた言葉が、実は相手を深く傷つけてしまっていた…。こうしたケースは珍しくなく、自分が無意識のうちに相手の症状を悪化させてしまう可能性もあるのです。

本記事では、精神保健指定医監修のもと、パニック障害の人にかけてはいけない言葉を具体的に解説するとともに、安心感を与えられる言葉も紹介します。相手を思いやるコミュニケーションのために、ぜひ参考にしてください。

パニック障害とは

  • パニック障害とは

    パニック障害とは?

パニック障害は、突然激しい動悸や息苦しさ、発汗、めまいなどの症状が現れる「パニック発作」に見舞われる精神疾患の一種です。発作は数分から30分程度続きます。

また、いつ発作が起きるかわからないため、「またあの発作が起きたらどうしよう」という「予期不安」に悩まされることもあります。この不安から外出や人混みを避けてしまい、外出が制限されることで日常生活に支障をきたす場合も。

治療には、薬物療法で発作の症状を抑えつつ、認知行動療法などで不安への対処法を身につけるという、複合的アプローチが用いられます。

パニック障害になりやすい人の特徴

  • パニック障害になりやすい人の特徴は?

    パニック障害になりやすい人の特徴は?

パニック障害を発症しやすい人には、いくつかの性格的な傾向や特徴がみられることがあります。ここでは代表的な例を挙げて解説します。ただし、あくまで「傾向」であり、これらの特徴を持っているからといって必ずしもパニック障害になるわけではありません。

完璧主義

完璧主義の人は、常に高い基準を自分に課して努力し続ける傾向があります。そのため失敗を許せず、自分に過度なプレッシャーをかけてしまいやすいのが特徴です。結果として心身に大きな負担がかかり、ストレスが慢性的に蓄積することで、パニック障害を発症するリスクが高まるといわれています。

感受性が強い

感受性が強い人は、外部からの刺激や印象を敏感に受け取りやすい傾向があります。共感力が高く、他人の気持ちに寄り添えるという長所がある一方で、イライラや怒りなどのネガティブな感情まで取り込みやすく、自分自身の心に大きな負担を抱えやすくなります。その結果、ストレスが蓄積しやすくなり、パニック障害を発症するリスクが高まるといわれています。

日頃からストレスを感じている

人間関係や仕事などで強いストレスを日常的に抱えている人は、パニック障害を発症しやすい傾向があるといわれています。過度なストレスが長期間続くと、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、心身の不調につながります。その結果、不安や恐怖心が強まり、パニック発作の引き金となることがあるのです。

人の目を気にしすぎる

他人の目を過度に気にする人は、周囲の評価や反応に敏感になりやすく、不安や緊張を抱えやすい傾向があります。自信のなさから他人の意見に振り回されたり、批判や否定に強く影響を受けたりすることで、日常的にストレスが積み重なってしまうのです。こうした状態が続くと心の負担が大きくなり、パニック障害を発症する要因になることがあります。

遺伝

パニック障害には、遺伝的な要因が関与している可能性があるといわれています。親がパニック障害を発症している場合、子どもも発症する可能性が通常より高いとする研究結果も報告されています。

ただし、パニック障害を直接引き起こす特定の遺伝子はまだ解明されていません。そのため、家族に患者がいるからといって必ず発症するわけではなく、生活環境やストレス要因など複数の要素が重なって発症に至ると考えられています。

パニック障害の人に言ってはいけない言葉

  • パニック障害の人に言ってはいけない言葉は?

    パニック障害の人に言ってはいけない言葉は?

パニック障害を抱える人には、何気ない言葉がより不安や緊張を与えてしまう場合があります。ここでは、NGとされる言葉の例を紹介します。

症状を否定する言葉

「心配しすぎだよ」「気の持ちようだよ」といった言葉で、パニック障害の症状を否定するのは避けるべきです。こうした発言は、発作の再発を恐れる予期不安を強め、外出や人との関わりをさらに困難にしてしまうことがあります。

パニック発作は本人の意思でコントロールできるものではなく、強い身体的・精神的苦痛を伴います。そのため、症状を軽く扱う言葉は大きなストレスとなり、症状の悪化につながる可能性があるのです。

病気を軽視する言葉

「そんなの甘えだよ」「不安になるのは誰でも同じだよ」といった言葉は、パニック障害のつらさを正しく理解していない人が口にしがちなものです。パニック発作は通常の不安とは比べものにならないほど激しく、強い動悸や息苦しさなど身体的な症状を伴い、心身に大きな負担を与えます。

このような言葉をかけられると、本人は「我慢しなければならない」と思い込み、症状を軽視するだけでなく、適切に助けを求めにくくなるリスクがあります。結果として治療やサポートの遅れにつながるため、軽視する言葉は避けましょう。

安易な励ましの言葉

「頑張ればよくなるよ」「みんな経験しているし、何とかできるよ」といった安易な励ましは、パニック障害の人にとって逆効果になる場合があります。パニック障害の回復には時間がかかり、本人はすでに病気と真剣に向き合っているため、根性論のような言葉は「努力が足りない」と受け取られ、自己否定感を強めてしまうのです。

また、「同じ経験がある」という表現も、本人の苦しみが矮小化され「自分の辛さは理解されていない」と感じさせることがあります。その結果、孤独感を深め、症状の悪化につながる可能性があるため、安易な励ましは避けるようにしましょう。

能力や存在を否定する言葉

パニック障害の人は、症状の影響でこれまで難なくできていたことが、発作によって急に困難になる場合があります。そのときに「そんなこともできないの?」といった能力を否定する言葉をかけると、自信を大きく損なわせてしまいます。

また、「あなたが辞めたら困るよ」といった発言も、支えになりそうでいて実はプレッシャーとなり、存在そのものを否定されたように感じさせるリスクがあります。こうした言葉は症状を悪化させる原因になりかねないため、注意が必要です。

パニック障害の人がかけられて安心する言葉

  • パニック障害の人がかけられて安心する言葉

    パニック障害の人がかけられて安心する言葉

では、パニック障害の人にどんな言葉をかけると安心できるのでしょうか。ここでは、パニック障害の人が安心する言葉の例を紹介します。

いつもと同じ何気ない言葉

パニック障害の人に接するとき、「病気だから特別に優しくしなければ」と構えてしまうことがあります。しかし、過度に特別扱いすると、相手に「普通ではない」と意識させてしまい、かえって不安を強めることにつながります。

大切なのは、病気を理解したうえで普段と変わらない自然な声かけや接し方を意識することです。腫れ物扱いせず、日常と同じ言葉や態度で接することが、本人に安心感を与え、信頼関係を深めるポイントになります。

不安な思いに理解を示す言葉

パニック障害の人が「また発作が起きるのではないか」と不安を感じているときには、その思いを否定せず、理解を示す言葉をかけることが大切です。たとえば、「不安でつらいよね」「発作が心配で怖いよね」といった、今の気持ちをそのまま受け入れる言葉は大きな安心感につながります。

さらに、「無理しなくていいよ」「自分のペースで大丈夫」といった声かけは、緊張を和らげ、リラックスを促す効果もあります。相手の不安を否定せず、共感を示すことが、信頼関係を築く第一歩となります。

頑張りに寄り添う言葉

パニック障害の人は、いつ起こるかわからない突然の発作に日々向き合いながら、必死に耐えています。そんな気持ちを認める言葉、「大変だったね」「病気と向き合って頑張っているね」「その努力を知っているよ」といった声かけは、不安や孤独感を和らげ、支えとなるでしょう。

発作が起きても迷惑じゃないという言葉

パニック障害の人は、「発作で迷惑をかけるかもしれない」と不安になることがあります。発作は予測できず、無理に抑えようとすると逆に起こりやすくなることも。「発作は迷惑じゃないよ」「焦らなくて大丈夫」と伝えることで、相手は安心し、外出や人との関わりにも前向きになりやすくなります。

頼っていいという寄り添う言葉

パニック障害の人は、自分の不安や弱さを抱え込みやすい傾向があります。「つらいときは頼ってね」「ひとりじゃないよ」「しんどいときは遠慮なく言ってね」と伝え、悩みや不安を吐き出せる環境を作ることや、いつもそばにいることを伝えると、安心感を与え、心の負担を軽くしてあげることができます。

正しい知識を持ってパニック障害の人に寄り添おう

パニック障害に悩む人は、強い不安や孤独感と日々向き合っています。大切なのは、症状を理解しないまま言葉をかけて傷つけることではなく、避けるべき言葉と安心を与える言葉を知っておくことです。正しい知識を持ち、思いやりのある声かけを意識することで、相手が少しでも安心して過ごせるようサポートできます。寄り添う姿勢は、本人の回復を支えるだけでなく、信頼関係を深める大きな力にもなります。

公受裕樹先生より

パニック障害をお持ちの方は、「いつどこで症状が出るか、わからない」という特徴から、日常生活でも、常に不安と戦っています。そして、こうした状況であることを、周囲の方が正しく把握することが何より大事です。ぜひ本記事が、「パニック障害」について知るきっかけとなれましたら幸いです。

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