千葉県千葉市の"千葉みなと"エリアの魅力を体験できる夏の祭典「千葉港まつり」にて、「港湾施設見学会」が7月26日に開催された。
本イベントは、夏休み中の子どもたちに、港湾施設の見学を通して海の大切さや港の重要性について理解を深めてもらうために企画されている。抽選で選ばれた一般参加者らとともに、貨物を自走で積み下ろしする「RORO船」と千葉港信号所を見学した。
■RORO船「第三はる丸」を千葉港で見学
2万4800ヘクタールという日本一広い港湾区域を持つ千葉港は、北は市川市から南は袖ケ浦市まで、6市にまたがり海岸線延長距離は約133キロメートルに及ぶ。全国に18港ある国際拠点港湾のひとつだ。1954年の開港以来、京葉工業地帯の重要な物流拠点として成長を続け、取り扱う海上出入貨物の取扱量は23年連続で全国第2位となっている。
「千葉みなと祭り」で行われる港湾施設見学会は、子どもたちに船や港の仕事に触れてもらい、その魅力を感じてもらうためのイベント。
貸切バスで港湾施設を巡る見学ツアーで、近隣の自治体の小中学生と保護者を対象に、公式サイトのほか、自治体の広報誌などで一般参加者を募集している。過去には冷凍倉庫の施設見学なども行われていたそうだが、3年前からはRORO船の船内や荷役作業、千葉港信号所で港の管制業務を見学するという内容となっている。今年は約40名の定員に100人以上の応募があったという。
今回見学した大王海運の「第三はる丸」はトレーラーシャーシ100台、乗用車250台を積載できる全長154メートルのRORO船。RORO船はローリングオン・ローリングオフ型船舶の略称で、貨物を積んだシャーシや完成車といった貨物を自走で積み下ろしする方式の船。ガントリークレーンなどで貨物を積み下ろしする必要がなく、効率的に荷役作業を行えることを最大の特徴とする貨物専用フェリーだ。
長距離を大量輸送するためRORO船は大型船が多いが、旧「第三はる丸」のリプレース船として2015年8月に竣工した「第三はる丸」は、その中では比較的小さいRORO船だという。
大王海運では「第三はる丸」と2021年竣工の「第五はる丸」「第六はる丸」という3隻のRORO船で、千葉港、堺泉北港(大阪府)、宇野港(岡山県)、三島川之江港(愛媛県)の4港を週2往復で結ぶ航路を運航している。
■荷役作業の現場を見学! RORO船の社会的役割を学ぶ
RORO船は、陸上輸送と海上輸送を利用して目的地へ貨物を届けるシャーシリレー方式によって、集荷から配送までの一貫輸送が可能になることが特徴だ。
近年は陸上の交通網が寸断されてしまった災害時のBCP(事業継続計画)対策や、慢性的に不足するトラックドライバーの負担を大幅に軽減する輸送手段として、社会的に注目を浴びている。また、陸上トラック輸送と比較してCO2排出量を約5分の1以下に削減できることもRORO船による海上輸送のメリットだ。
四国中央市に本社を置く大王海運は陸上輸送と海上輸送を組み合わせたRO-RO船輸送サービスを2002年より開始。モーダルシフトの波を背景に、その先駆けとしてRORO船事業を拡大してきたという。
同社の担当者からRORO船の説明を受けた後、見学者たちは車両の積め込み作業や固定作業のデモンストレーションを見学した。RORO船は貨物デッキの各層が立体駐車場のようにスロープでつながり、牽引車の貨物や完成車が自走して積み下ろしがされる。シャーシの中には飲料、洗剤、ティッシュなど生活に身近な商品が積まれているという。
一連の荷役作業を担うのは港湾運送事業者。車を安全に誘導する作業員、海上での揺れに備えて車両を船に連結させて固定する作業員、専門のドライバーがチームを組み、限られた船内のスペースで安全・迅速に貨物を積み込んでいった。
その後、見学者たちは船員の居住区やアッパーデッキを通過して船橋へ。操船ブリッジを自由見学し、保護者と一緒にレーダーや船舶自動識別装置「AIS」などの機器の説明を聞いたり、ステアリングホイールを持って記念撮影したりする様子が見られた。
船の操船は舵を回すと船尾の下に付いている舵板が油圧で動く仕組み。「第三はる丸」の舵板は10畳分ほどの大きさがあるとのことだ。船の世界では右をスターボード、左をポートと呼ぶそうで、同船の“舵取り名人”によるデモンストレーションなども行われた。
■港の安全を守るポートラジオのお仕事
その後も喫水線の下に位置する最下層の5番デッキなど、1時間弱にわたってRORO船を見学した一行は再びバスに乗車。「SOLAS条約」で一般の立ち入りの制限がされた千葉中央ふ頭コンテナターミナル付近の区域を移動し、千葉港信号所へと向かった。
「SOLAS条約」は2001年の9.11同時多発テロ事件を機にできた、空港や港の安全強化のための国際ルール。この日、見学者にはビジターカードが特別に発行され、ポートラジオを運営する千葉港信号所の管制室を見学した。
ポートラジオは港湾における船舶の安全な運航と港湾施設の効率的な利用を目的に設置・運営される無線局。
陸上の道路のように、港などの海上では右側走行など一定のルールが定められた「航路」と呼ばれる道が設置されている場合がある。また、千葉港などの港には管制信号と呼ばれる信号も設置され、入出港する船が自由信号・入港信号・出港信号という3種類の管制信号に従うことで、船の世界の安全は担保されている。
ただ、小さな船は信号に関係なく自由に入出港ができ、船の運航スケジュールは海況や気象などの条件で変わったり、港での荷役の手配や準備などにも変更が生じたりすることもある。そのため視界の悪い夜間や濃霧といった場合でも、港の状況をリアルタイムで把握し、船に情報を共有することで安全な入出港を支援することが大切だ。
ポートラジオの主な仕事は、レーダーやAISなどの機器を駆使しながら港の状況を監視し、VHFという無線通信機で船舶や関係各所とコンタクトをとって、適切な注意喚起と誘導を行うこと。ポートラジオの運営は英語スキルも必要な業務だという。また、女性も多く活躍しているそうで、見学時は2名の通信オペレーターが実際の業務に当たっていた。
信号所の見学を終え、最後は出発地の千葉ポートタワーに戻り、4階の展望フロアで自由解散となった。
千葉ポートタワーは千葉県民500万人突破を記念し、日本一の面積を誇る千葉港のシンボルタワーとして1986年に開設された。日本で初めて免震装置のダイナミックダンパー(動吸振器)が採用・設置されたという高さ約125メートルのランドマークタワーで、展望フロアからは東京湾越しに富士山や千葉港を出入りする貨物船などを一望できる。
アジア諸国の発展に伴い、国際的なプレゼンスが低下しているとも言われる日本の港。官民の両面で国際競争力の強化に取り組んでおり、千葉港では取り扱う貨物量の増加や船の大型化への対応のため、2030年代前半を目標に埠頭を再編成する千葉港港湾計画が進められている。同計画では千葉中央ふ頭と出洲ふ頭の間の水域を埋め立ててヤードを拡張。岸壁の増深・延伸を実施することで荷役作業のさらなる効率化を図るという。














