フォード・モデルTのエンジンがまったく反応せず。その理由は?|『Octane』UKスタッフの愛車日記

『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、マークが昨年から悩まされている「1927年フォード・モデルTのエンジンがかからない問題」に対処する。

【画像】フォード・モデルTの不具合の可能性をひとつずつ検証して潰していく(写真3点)

モデルTは、一般的な車とは一線を画している。1920年代後半まで製造されていた。ただし、1908年に発売された当時、自動車産業はまだ手探りの状態だった。そのため、従来の変速機ではなく、プラネットギア(遊星歯車)によるトランスミッションを採用し、3つのペダルで操作する。現代の車に慣れた人にとっては、まるで教会のオルガン奏者並みの、頭の切り替えが求められる。

点火システムもまた独特で、エンジンのフライホイールに固定された磁石が、トランスミッションカバーに固定された鉄芯のそばを回転する際に生成される電流を利用していた。この電流は、カムシャフトの前部から駆動されるシンプルなタイマーを介して、各シリンダーに1つずつ配置された4つの個別のコイルを励磁(活性化)し、各プラグに火花を送っていた。

ここで過去形を使っているのは、私のモデルTは、1930~1980年代までのほぼすべての車に使われていた、より一般的な市販のコイル&ディストリビューターシステムへと換装されているからだ。しかし、昨年のクリスマス前に友人たちとの集まりに向けて出発しようとしたとき、モデルTのエンジンがかからなかったこともあって、「やはりヘンリー・フォードのオリジナル方式の方が良かったのでは…?」と思い始めたりもしていた。エンジンはまったく反応せず、数分間イライラしながら試行錯誤したが、結局諦めてそのときは2006年のボルボで出かけることにした。

2カ月後、春の陽気に誘われて、もう一度チャレンジしてみることにした。エンジンは依然としてドードー鳥のように動かなかったが、燃料と火花さえあればモデルTは動くはずで、可能性をひとつずつ検証することにした。最初の作業は、キャブレターのフロートチャンバーに付いている便利な小さな排出用バルブを使って中の燃料を抜き、燃料と水分が分離していないかを確認することだった。しかし出てきたガソリンは、現代の燃料と同じように均一で透明だった。

次に、ディストリビューターを確認した。ポイントのギャップが少し狭くなっていたので、ディストリビューターのドライブシャフトのカムロブの後部で接点を開いた状態にし、ギャップを再調整した。これは、モデルTのスターターハンドルを使用すれば、簡単にできる作業だ。ポイントが再び閉じた状態でもう一度イグニッションをオンにし、ポイントを軽く開くと、しっかり火花が飛んだ。

しかしその後、ちょっと嫌な予感がし始めた。スターターモーターでエンジンを回しながら、スパークプラグのリードをエンジンブロックに接地させてみた。本来なら、これによって端子からブロックに向けて規則的に火花が飛ぶはずだが、何も起きなかったのだ。

そこで、ヴィンテージカー専門店「オート・エレクトリック・サプライ」(autoelectricsupplies.co.uk)を営む、友人のマット・ブレイクに電話をかけた。彼のアドバイスは、「同じことをメインのコイルからディストリビューターへ繋がるリードの先端でも試してみて」ということだった。「もし火花が飛ばなければ、コイルが故障している可能性が高い」とのこと。さっそく試してみると、やはり火花はまったく飛ばなかった。

日曜の朝、期待半分で淡い望みを抱きつつ、地元の自動車部品店に駆け込み、新品の中国製コイルを購入した。それをエンジンに仮付けして、再びスターターを回してみたのだが…。エンジンは咳き込んだものの、すぐに止まってしまった。何度繰り返しても、結果は同じだった。エンジンは始動しようとはしているものの、どうしても動かなかった。

その頃には、スターターのプレススイッチが使い過ぎでかなり熱くなっていたので、いったん休ませることにした。車から降りてエンジンルームをもう一度じっくり見直した。そこで気づいたのは、ディストリビューターのキャップをベースに固定するはずの、バネ付きスチール製クリップ2つを固定し直していなかったことだった。そのため、エンジンを回すたびに毎回キャップがベースから外れてしまっていたのだ。

キャップをクリップで固定し直して、再び始動を試みた。…成功だ!エンジンがかかったので、レバーを動かし、スロットルを少し開けた。すると、しばらくむせるような音を立てた後、2.9リッターの大きな4気筒エンジンが、快調にアイドリングを始めた。

私はモデルTのリアにそっと手を添え、小声で「ありがとう」とつぶやいた。

文:Mark Dixon