北海道電力は2025年7月16日、小樽商科大学にて「エネルギー特別講義」を行いました。商学を学ぶ学生は、今後のエネルギーについてどのように考察していくのでしょう。

本稿では、特別講義の一部始終を紹介します。

グリーントランスフォーメーション(GX)

いま注目されているGXとは、「化石燃料中心の経済社会を、クリーンエネルギーを中心とした持続可能な社会へと転換する取り組みのことで、2050年カーボンニュートラル実現に向け、日本を含め世界中で推進されています」と、講師である北海道電力の柴田さんから説明がありました。

北海道は165の自治体がゼロカーボンシティを宣言(2025年3月31日時点)しており、北海道電力は「既存発電所の最大限の活用、原子力発電の再稼働、再生可能エネルギー発電事業の拡大について取り組みを進めている」そうです。

  • 電気事業やエネルギーに関心があり、集まった学生たち

    電気事業やエネルギーに関心があり、集まった学生たち

当たり前にあるけど、実は大変。電気の供給

電気とは電子の移動によって発生するエネルギーのことで、社会を支える重要なエネルギー源。電気は発電所から送電線、変電所、配電線を経由して、わたしたちの手元に届いています。

  • 手回し発電機を使い、発電量(供給)と消費量(需要)のバランスを疑似体験

電力需要は季節や天候、時間帯のライフスタイルによって変化するため、それに合わせて、発電量の調整が必要。品質の良い電気を届けるためには、周波数が50ヘルツになるよう電力消費量にあわせて、発電量の調整をしているそうです。

  • 需要の変化が生じる理由、需給バランスをとる難しさをわかりやすく説明

    需要の変化が生じる理由、需給バランスをとる難しさをわかりやすく説明

発電方法には火力発電、原子力発電、水力発電、再生可能エネルギー(太陽光・風力)と、大きく4つあり、それぞれのメリット、デメリットを教えてくれました。

今後、日本のエネルギーはどうなるのか

日本は世界平均と比べてもエネルギー消費が多い国で、日本人の一人当たりの電力消費量は世界平均の約2.5倍も使用されています。しかし、日本のエネルギー自給率はわずか15.2%で、他の先進国と比べても低い水準にあるそうです。

学生たちには「電力需要を100%として、どの発電方法を使用して電力供給を100%にするか発電方法の割合を考えてみましょう!」というグループワークを行いました。

Aグループは、火力発電4割、原子力発電1割、再生可能エネルギー5割と考え、再生可能エネルギーを増やしたら、火力発電での安定した電力供給も可能になるのではと回答。Bグループは、火力発電3割、原子力発電5割、再生可能エネルギー2割とし、原子力発電の安全性を高めつつ見直していくのがいいとしました。

  • グループワークでは環境を考慮した意見が多いように見受けられました

    グループワークでは環境を考慮した意見が多いように見受けられました

どちらのグループも世界情勢や日本の地理、科学技術など多角的な視点で考察しているのが印象的でした。参加した学生は「電気の自給率や依存度などの現状の課題に触れることができた」や「エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減の同時実現を目指すという点で、どのようなことに取り組んでいるかがわかり、興味深かった」と感想を語ってくれました。

北海道電力が大学で講義を行う理由

今回、講師を務めた北海道電力の報道・エネルギー広報グループ 柴田晃里さんにお話をうかがいました。

--どのような経緯で講義を行うようになったのでしょうか?

弊社では長年にわたりエネルギー教育全般のお手伝いをしてきました。近年の世界情勢により電力需給ひっ迫やエネルギー価格の高騰が生じ、エネルギーの安定供給の重要性が高まっていると感じています。

また、カーボンニュートラルの実現に向けて脱炭素化への取り組みが加速化しており、将来の北海道を担う次世代層へエネルギーや環境問題について興味関心を持っていただき、一人ひとりが「自分ごと」として考えるきっかけとしていただくため講義を実施しています。また、学校側の希望に沿って講義を企画しています。

  • 講師を務めた北海道電力の報道・エネルギー広報グループ 柴田晃里さん

    講師を務めた北海道電力の報道・エネルギー広報グループ 柴田晃里さん

--小樽商科大学からはどのような要望があり、講座内容を決めたのですか?

小樽商科大学様の社会連携実践Ⅱbという科目の中で実施されている「オアソビプロジェクト」において、学生が小樽(又は北海道)のエネルギー・環境に関する課題・特徴・改善について市民に啓発し、エネルギーの観点から地域のウェルビーイングを高めていくためのブースを考える際のヒントとなる講義を実施してほしいという要望をいただきました。

--これまで行なった他大学からはどのような希望があったのでしょうか?

例えば、各種発電方法の仕組みやS+3Eの考え方についてのほか、大学生は1人暮らしを始める方が多くいるからと電気料金の仕組みや電気が届くまでのプロセス等、さまざまなご希望をいただいています。受講者側のニーズやグループワークを交えたり、クイズ形式を盛り込むなど、受講者と対話の機会を設けつつ、講義を楽しんでもらいながらエネルギーについて学んでいただきたいと考えております。

--今後どのような講座を展開していきたいですか?

弊社というより、学校のニーズに沿ったお力添えをしたいと思っています。今後どのような将来を選択しても、エネルギーや環境問題は身近にあるものです。限りある資源を有効に活用するなど、自分たちの未来をより良いものにするため、私たちの講義がエネルギーや環境問題について自分ごととして考えるひとつのきっかけとしていただきたいと思います。

学生時代に企業の講義を受けられるのは、業界研究にもなるいい機会といえます。今回の講義で、新たな視点や学びを得た学生の活躍が楽しみですね。