「夏の甲子園」と聞くと、多くの人が青春や感動のドラマを思い浮かべるでしょう。 ですが、ファイナンシャルプランナーの視点で見てみると、この大会は「巨大なお金が動く経済イベント」でもあります。球児たちの努力の裏には、地域や学校、企業を巻き込むリアルなお金の流れが存在するのです。

出場するだけで数千万円? 1校のリアルコスト

甲子園に出場するだけでも、学校には大きな経済的負担がかかります。日本高等学校野球連盟(高野連)は、ベンチ入り選手20名と監督・責任教師の計22名に対し、旅費と1人1泊8,000円の宿泊費(2024年改定)を補助します。しかし、この補助でまかなえるのはチームのごく一部です。

応援団や吹奏楽部、保護者の交通費や宿泊費、応援グッズや現地での活動費はすべて自己負担です。宮城県の石巻工業高校では、応援バス13〜14台で700〜800万円、応援グッズで約1,000万円の支出があったと報じられています。2018年の秋田・金足農業高校は、準優勝時に全国から3億円近い寄付金が集まったほどです。

つまり、1回戦で終わっても数千万円、勝ち進めば億単位というのが現実です。公立校にとっては重い負担であり、OB会や地域企業の協力が不可欠なのです。

観客・スポンサー・メディアが動かすお金

甲子園は学校関係者だけでなく、観客やスポンサーによっても巨大な消費を生みます。 2024年の大会(第106回)では延べ67万人が来場、そのうち62万8,000人超が有料入場者です。入場料収入は約9億円にのぼりました。このほか、観戦に伴う飲食・交通・土産代を含めれば、大会全体で数十億円規模の消費が生まれていると見られます。

さらに、テレビ中継や広告収入は数十億円規模ともいわれ、甲子園は教育イベントでありながら、プロスポーツにも匹敵する経済集団としての側面を持っています。

地方が潤う? 甲子園景気

甲子園は開催地だけでなく、地方にも大きな経済効果をもたらします。2018年、「金農旋風」を巻き起こした秋田県では、ふるさと納税額が前年同時期比で約2倍に増加。2022年、仙台育英が優勝した際には、宮城県内で約160億円規模の経済波及効果があったとの試算もあります。

地元商店街では応援セールやパブリックビューイングが行われ、「売上が1.5倍になった」という声も。甲子園は地方経済の活力を引き出す装置としても機能しているのです。

お金の視点で見ると、夏がもっと面白くなる

甲子園は青春の舞台であると同時に、学校・地域・企業・ファンが支える大きな経済プロジェクトです。こうしたお金の流れに目を向けることで、ニュースやイベントの見え方が変わります。感動の裏側でどんな資金が動き、誰が支えているのかを知ることは、社会をより深く理解する第一歩になるのです。

今年もまた、甲子園は夢と経済が交差する夏の象徴として、私たちに多くの学びを与えてくれるでしょう。

この記事を執筆したファイナンシャルプランナー紹介


小峰一真(こみねかずま)
所属:マイホームFP株式会社