映画監督の岩井俊二氏が26日、東京・麻布台ヒルズ ギャラリーで開催した「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」マスコミ内覧会&オープニングセレモニーにお笑いコンビ・爆笑問題の太田光とともに登場した。

「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」マスコミ内覧会&オープニングセレモニーに登場した岩井俊二氏

アニメ界の巨匠・高畑勲さんの生誕90年という節目の年に、6月27日~9月15日に東京・麻布台ヒルズギャラリーで展示会「高畑勲展 ̶日本のアニメーションを作った男。」を開催。『火垂るの墓』に着目した多くの資料を展示しているほか、『平成狸合戦ぽんぽこ』、『アルプスの少女ハイジ』のセル画・背景画が本展で初公開し、かつて『火垂るの墓』に原画スタッフとして参加した庵野秀明が描いた重巡洋艦摩耶のレイアウトを基にして描かれたハーモニーセルの初公開も目玉となっている。

そのオープニングセレモニーに、スペシャルサポーターで高畑勲さんやスタジオジブリとも深い関わりがある岩井氏が登壇。高畑さんとは遠い親戚だという岩井氏は、大学時代に初めて高畑さんと会ったといい、「軽い感じで会いに行ったら、めちゃくちゃ怖い方で……」と当時を振り返り、「怖かったですね。いかに好きなモノを作るってことがこの世界で大変なのかという話を2時間ぐらい、ほぼ叱られているような感じでした。映画作りの大変さや厳しさを一気に点滴を射たれような……それが本当に僕にとって唯一の映像の先輩が語ってくれた言葉なので、座右の銘じゃないですけど、ずっとここまで大事にしながらやってきた感じです」と今でも高畑さんの言葉が思い出されるという。

高畑勲イズムを信じていれば間違わない

影響を受けたシーンについては「『Love Letter』の最後のシーンは、『おもひでぽろぽろ』のエンディングをイメージして絵コンテを書いた覚えがあります」と明かしながら、高畑さんの好きな作品を「個人的には『太陽の王子 ホルスの大冒険』。リアルタイムだと幼稚園ぐらいでしたが、高校の時に好きな人たちが集まった上映会で初めて見ました。その時の衝撃というか完成度というかすごすぎて、本当に見続けている作品です」とあげた。

また、展示会でも公開される『火垂るの墓』についても言及。「2人の兄弟の物語を描くということが戦争を描くことになるのか、それに対する自問自答が高畑さんの中にあったのかと。戦争であれ戦争じゃない時代であれ、人を描くことが大きなショーで語られる違和感みたいなものを感じてたりしたと思います。1番忘れがたいシーンが、2人が大事にしていたサクマ式ドロップの缶を何も知らない駅員さんが野球のフォームで投げる。あの残酷な演出は強烈でしたね。高畑さんらしいアイロニックな眼差しがあってすごかったですね」と映画監督らしい視点で説明した。

また、岩井氏にとっての高畑さんの存在について「奇しくも遠縁の親戚で直接お会いするなど貴重な体験をさせていただきましたが、ずっと背中を追いかけて高畑勲イズムを信じていれば間違わないと思っていました。奇しくも親戚であり、子供時代からずっといてくれた作品を作り続け、僕らの成長にあわせて作ってくれました。自分の人生、我々世代にとっては、そういう歩みをともにしてこれた素晴らしい映像作家だと思います」と高畑さんの偉大な功績を称賛していた。