日本テレビ系『金曜ロードショー』(毎週金曜21:00~)では、映画『侍タイムスリッパー』を、7月18日に地上波初放送する。
今年の日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた時代劇コメディーの『侍タイムスリッパー』。制作費は通常の邦画の1/10以下、スタッフもわずかな人数という目を覆いたくなるような逆境の中で制作されながらも、出演者の持ち出しもいとわぬ努力と、監督のねばり、そして東映京都撮影所の全面的支援で、ようやく公開にこぎつけた。
しかし、上映されたのは当初1館だけ。そこから、鑑賞した観客の評判が評判を呼び、上映館はみるみる増え続け、ついには全国で380館の映画館で上映されるまでの規模に膨れ上がった。興行輸入も10億円を超える大ヒットを記録し、「侍タイ(さむたい)」の愛称で社会現象を生み出した。
ストーリーは、幕末の侍が雷に打たれ、なぜか現代の時代劇撮影所にタイムスリップ。突然自らに降りかかった理解不能な状況に戸惑いながらも、時代劇の「斬られ役」として第二の人生に奮闘する姿を描く。人間ドラマでもあり、手に汗握るチャンバラ活劇でもある。
主人公の会津藩士・高坂新左衛門は、ハリウッド映画『ラストサムライ』にも出演した“伝説の斬られ役”、故・福本清三さんからイメージを得て、彼を取り巻く人情あふれる登場人物たちや本格的な殺陣シーンと、時代劇への愛が存分に込められている。
監督は、普段はビデオ撮影業のかたわら農業を営む、安田淳一氏。自ら映画の製作・配給を事業とする「未来映画社」を設立し、47歳の時撮影した自主映画『拳銃と目玉焼』(14年)で、長編映画デビューを果たしたという遅咲きの映画監督だ。自主制作ゆえに監督がみずから制作資金の調達に奔走するも、「自主制作映画で時代劇を撮る」と言う無謀さと、撮影当時、コロナ禍の真最中という時期もあり資金集めが難航。諦めかけた監督に、「脚本がオモロいから、なんとかしてやりたい」と救いの手を差し伸べたのが、“時代劇の聖地”東映京都撮影所(通称:太秦撮影所)だった。
制作期間半年にも及んだ末になんとか映画は完成したが、その時の監督の銀行口座に残っていたのは、わずか7000円。「地獄を見た」と語る監督は、映画が当たらなければ、農業も続けられないと崖っぷちに追い込まれていたという。
主人公の会津藩士・高坂新左衛門を演じるのは、98年に日中合作映画『戦場に咲く花』でデビュー、以来、俳優歴26年、数多くのドラマや映画に出演しながらも、今回初めて主演を務めた山口馬木也。本作で第67回ブルーリボン賞の主演男優賞、第48回日本アカデミー賞でも優秀主演男優賞を獲得した。
高坂の敵役・風見恭一郎を演じるのは、82年に『OH!タカラヅカ』で映画デビュー、以降、現代劇、時代劇共に数多くの映画、ドラマで活躍する冨家ノリマサ。一歩間違えは漫画チックになりがちな難しい役どころを、持ち前の品位と華やかさで鮮やかに演じて見せている。
ヒロインの助監督・優子を演じるのは、安田監督の『拳銃と目玉焼』(14年)でデビュー、その後も本作を含め、安田監督作品には欠かせない沙倉ゆうの。劇中の役柄だけでなく、予算もスタッフも足りない本作では、実際に撮影現場での助監督の役目もこなしており、スタッフ兼役者としての参加となっている。
当初“伝説の斬られ役”故・福本清三さんが務める役だった殺陣師・関本役には、かつて福本さんと同じ「東映剣会」に所属し、1964年にデビュー以来60年ものキャリアを誇る重鎮・峰蘭太郎。「書道のような美しく鮮やかな殺陣」と称される“斬られ役”の確かな技術と、俳優としての演技力で、見事に福本の代わりを務め上げている。
【編集部MEMO】
安田淳一監督は、マイナビニュースの取材に、『侍タイムスリッパー』の魅力を、「ある人が、“あの中にいるキャラクターたちが、本当に生きているような気がしていて、あの人たちにもう一回会いに行くような感じなんです”と言っていたんです。そんなものなのかなと思っています。僕の場合は、『ルパン三世 カリオストロの城』が大好きで、最後の穏やかな追いかけっこのシーンを観ながら、“終わらないでほしいな。ずっとこの映画が続いてほしいな”と思っていました。その感覚を、この映画を何回も観るお客さんも持ってくれたのかなと、何となく自分の中で腑に落ちたというのはありました」と語っている。
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