梅雨の季節が到来し、高湿度が続く中で、すでに猛暑日を迎えている地域も多く見られます。この時期、特に注意が必要なのは高湿度と高温が組み合わさることで起こる「梅雨型熱中症」です。この季節を安全に乗り切るためには、どのような対策が必要なのでしょうか? 注意すべきポイントや健康維持のヒントについて、江戸川病院の井筒先生に解説いただきました。

■見落とされがちな“湿度の暑さ”に要注意

「熱中症は真夏の炎天下で起こるもの」と思っていませんか?

実は、まだ夏本番を迎える前の6月〜7月の梅雨の時期にも、湿度の影響で体調を崩す人が増えています。この時期に起こる熱中症は「梅雨型熱中症」と呼ばれ、気温がそれほど高くなくても湿度が高いだけで発症するケースがあるため注意が必要です。

この記事では、梅雨型熱中症の定義と特徴、そして一般的な熱中症との違いをわかりやすくご紹介します。

一般的な熱中症は、真夏の炎天下など、高温環境下での脱水や外部からの熱気によって体温上昇が主な要因となって発症します。

一方で梅雨型熱中症とは、梅雨時期多くにみられる、身体が暑さに慣れていない季節に高湿度な環境下で発症する熱中症のひとつを指します。外気温が真夏のように極端に高くなくても、湿度が高いことで汗が上手く出せず、夏前の時期で身体が暑さに慣れていないことも加わって体温調節が効きにくい状態に陥ってしまいます。そのため身体の中に熱がこもってしまい、熱中症の症状を引き起こす点が特徴です。日本では例年6月〜7月初めにかけての梅雨の時期に多く報告されています。

■なぜ“湿度”が危ないのか?

体温は、主に「汗を蒸発させること」で下がります。

しかし湿度が高いと汗が蒸発せず、体内に熱がこもって体温が下がらない状態になります。特に高齢者や子どもは体温調節機能が未熟または低下しており、湿度の高い環境では熱中症のリスクが急激に高まります。

梅雨型熱中症の特徴としては以下の点が挙げられます。

  • 気温がそれほど高くない日でも発症
  • 湿度が70~90%以上に達する環境下でリスクが上昇
  • 屋内(特に換気が不十分な部屋)での発症が多い
  • 身体がまだ暑熱順化(暑さに順応すること)していない時期に起こりやすい

そのため梅雨型熱中症は、室内でも誰にでも起こり得る「見えにくい熱中症」でもあり、特に高齢者や持病を抱える方では重症化リスクが高くなります。気温がさほど高くなくても、湿度が高い日はエアコンや除湿機の使用、こまめな冷水の水分補給が重要です。

以下に、梅雨型熱中症と真夏に発症する典型的な熱中症との違いをまとめました。

【比較項目】梅雨型熱中症/一般的な熱中症(真夏型)
【発症時期】梅雨(6月中旬~7月)/盛夏(7月下旬~8月)
【気温】25〜30℃程度/30℃以上、35℃超の猛暑日も
【湿度】非常に高い(70~90%)/高いが日によって変動
【発症場所】室内、日陰、換気の悪い場所/炎天下、屋外、運動・作業中
【リスク因子】高湿度、暑熱順化不足/高温、長時間の曝露、脱水
【自覚症状】だるさ、頭痛、食欲不振など徐々に進行/発汗停止、意識障害、けいれんなど急性症状が多い
【発症対象】高齢者、子ども、室内に長くいる人/屋外活動者、運動中の若年者にも

■梅雨型熱中症の症状

梅雨型熱中症の症状は、前述のように極端な高温環境下で発症するものではないため、じわじわと進行するのが特徴です。そのため様子を見ているうちに重症化してしまう懸念があるため、高温多湿の環境にいる場合には、異変を感じた場合早めに休み、高温多湿環境から抜け出すことが重要です。

具体的な症状は軽度~重度に分類されます。

軽度(I度):だるさや倦怠感など非特異的な症状が中心

  • めまい感・立ちくらみ
  • 筋肉のこむら返り・筋けいれん
  • 大量の汗
  • 倦怠感・体がだるい
  • 手足のしびれやふるえ

中等度(II度):日常動作中にふらつく、話しかけても反応が鈍いなどの変化に注意

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 皮膚の湿り気(汗だくでべたつく)
  • 集中力低下・判断力の低下
  • 頻脈(ドキドキする)
  • 体温上昇(37.5〜39℃程度)

重度(III度):すぐに応急処置(冷却・水分補給など)を行う必要があり、救急車を要請することも検討しないといけない段階

  • 意識障害(呼びかけに反応しない、言動が不自然)
  • けいれん・失神
  • 高体温(40℃以上)
  • ショック症状(血圧低下、皮膚が冷たくなる)

■梅雨型熱中症の予防方法と健康維持のポイント

【1】予防の鍵は「暑熱順化」と「湿度管理」

暑熱順化:体を暑さに慣らす
暑さに慣れていない時期は、発汗や血流調節がうまく機能せず、熱中症にかかりやすくなります。暑熱順化(しょねつじゅんか)とは、徐々に体を暑さに慣らし、発汗や体温調節機能を高める生理的適応を指します。

<実践方法(無理のない範囲で)>

  • 朝や夕方など比較的涼しい時間帯に20〜30分程度の軽い運動(ウォーキングやストレッチ)など、免疫力を整える
  • ぬるめ(38〜40℃)の湯にゆっくり浸かる入浴習慣で、軽く汗をかく習慣づけ
  • 室内でも窓を開けた空間で活動する時間を設ける(安全な範囲で)

暑熱順化には5〜10日程度かかるとされています。早めに準備を始めることが重要です。

【2】湿度を意識した室内環境づくり

高湿度環境では汗が乾かず、体温が下がらないため熱中症のリスクが高まります。梅雨時は、温度だけでなく湿度の管理が重要です。室温が25~28℃でも積極的に除湿を図りましょう。

<実践できる対策>

  • エアコンの除湿モード(ドライ)を積極的に使用する
  • 除湿機を活用し、室内湿度50〜60%を目安に調整
  • サーキュレーターや扇風機を併用し、空気の流れをつくる
  • 雨の日や湿度が高い日は窓開け換気よりも除湿優先

【3】日常生活でできる健康維持と予防習慣

水分補給は「喉が渇く前に」

  • コップ1杯(約150~200mL)を1〜2時間おきに摂取
  • 汗をかいた後は電解質を含む飲料(経口補水液やスポーツドリンク)も活用
  • 利尿作用のあるカフェインやアルコールは控えめにすることもポイント

衣類・清潔の工夫

  • 通気性・吸湿性に優れた衣服(綿や麻素材、機能性インナー)
  • 衣服が汗で濡れたままにならないようこまめに着替える
  • 汗を拭き、皮膚を清潔に保つ(皮膚トラブル・感染症の予防)

■見えない「湿度の暑さ」に備えましょう

梅雨型熱中症は、「まだ夏ではないから大丈夫」と油断しやすく、室内や夜間でも発症することがあります。体調を崩しやすいこの時期こそ、早めの対策と小さな習慣づくりが、健康を守るカギとなります。

エアコンは「冷やす」だけでなく「除湿」も重要な役割を果たします。日常生活の中に「湿度への対策」と「暑熱順化の意識」を取り入れて、見えにくい熱中症リスクから身を守りましょう。

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