第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦が6月21日(土)に開幕。この日は羽生善治九段―佐々木勇気八段による1回戦が岡山県岡山市の「ジップアリーナ岡山」で行われました。対局の結果、角換わり相早繰り銀のねじり合いから抜け出した佐々木八段が87手で勝利。一度もリードを許さぬ快勝で2回戦進出を決めています。

勇気調の相早繰り銀研究

36年連続36回目の出場となった羽生九段に対して、佐々木八段は初出場。昨年秋の竜王挑戦をはじめとする各棋戦での活躍が登場を後押ししました。振り駒が行われた本局は両者の息が合って角換わり相早繰り銀へと進展。事前研究を比較的しやすい形で、早いペースで指し手が進みます。羽生九段が両にらみの自陣角を放ったところで封じ手が行われます。

休憩ののち対局再開。開かれた佐々木八段の封じ手は香取りを手抜いて、羽生九段の自陣角に狙いをつける歩突きでした。穏便な飛車引きを避けて積極的にリードを奪いに行った格好で「前向きなほうの手を選んだ」との局後の感想からは、この手がある程度想定の範囲内であったことがうかがわれます。先手番を生かした佐々木八段の攻勢が幕を開けました。

飛車切りでつかんだ勝利

駒割は▲角△桂香の二枚替えで形勢もほぼ互角。1筋にできた後手のと金が働く前に手が作れるかが争点となっていますが、佐々木八段はここから明快な手順を用意していました。飛車を切り飛ばして銀と刺し違えたのが直後の角打ちに期待した好手。実質的な飛車銀両取りとなって先手優勢がはっきりしました。飛車を渡しても自玉に詰めろはかかりません。

終局時刻は16時44分(15時39分対局開始)、最後は羽生九段が投了。佐々木玉に詰めろはかからず、一方の羽生玉は一手一手の寄り形でした。本局は研究重視の序盤戦から難解な押し引きへと突入、爽快な飛車捨てで主導権を奪った佐々木八段が攻め切る快勝譜となりました。敗れた羽生九段は「真ん中から攻められまずくなった」と悔しさをにじませました。

佐々木八段は次戦で藤井聡太竜王・名人と顔を合わせます。

水留啓(将棋情報局)

  • 佐々木八段は局後「前に研究していてやりたい形のひとつだった」と研究の下地があったことを明かした(写真は第83期順位戦A級最終局のもの 撮影・編集部)

    佐々木八段は局後「前に研究していてやりたい形のひとつだった」と研究の下地があったことを明かした(写真は第83期順位戦A級最終局のもの 撮影・編集部)