東京商工リサーチは6月19日、「退職代行」に関する調査結果を発表した。調査は6月2日~9日、資本金1億円以上の大企業および1億円未満の中小企業を対象にインターネットで行われ、6,653社(大企業489社、中小企業6,164社)の回答を集計、分析した。
2024年1月以降に、「退職代行業者を利用した従業員の退職がありましたか?」と尋ねたところ、7.2%の企業が「あった」と回答。特に大企業では15.7%と高い割合に。
退職代行を利用した従業員の退職があった企業の業種をみると、百貨店などを含む「各種商品小売業」(30.0%)が最も多く、次いで「洗濯・理容・美容・浴場業」(20.8%)、「非鉄金属製造業」(20.0%)、「宿泊業」(19.4%)と続き、消費者と直接対面するBtoC業界での利用が多いよう。年代は「20代」が最多の60.8%。次いで「30代」(26.9%)、「40代」(11.0%)、「50代」(6.4%)と続いた。
利用者の心理的ハードルが下がるも、キャリア形成への悪影響も
次に、退職代行を利用した従業員の退職による業務への影響について聞いたところ、3割の企業に「退職者の業務カバーで、従業員の残業が発生した」(31.1%)ほか、「引き継ぎが円滑にできず、商品・サービスの提供に影響がでた」(23.4%)、「退職代行を活用しない退職手続きより時間がかかった」(21.8%)といった影響が。
また、採用活動への影響についても聞くと、2割(20.8%)の企業で「応募者の転職回数や職歴をより厳格に見極めるようになった」ことがわかった。
マスコミやSNSで社名が拡散し、少額で退職時の煩わしさを省ける退職代行は、若年層を中心に利用への心理的ハードルは下がっているが、安易な退職は良いことだけではなく、キャリア形成に悪影響を与えかねない部分も。企業側は、人手不足でも採用時の条件をより厳格にしており、キャリアアップを狙った次の転職が難しくなる傾向も出てきた。退職代行サービスの利用者は増えているが、一度立ち止まり将来設計を再確認するフェーズに入ってきたのかもしれない。