世界情勢の不安定化や為替の変動。金相場が過去最高値圏に突入している今、金市場の「今」と「これから」について、大手買取専門店「買取大吉」の鑑定士・木村健一さんにインタビュー。
相場の背景から、金を買うべきタイミング、売るべきタイミングまで、金のリアルについてうかがった。
トランプ関税で乱高下も、金相場はほぼ過去最高値
――まずは最近の金相場の動向について、改めて教えていただけますか?
今の金相場は約1万7,000円/1gくらいで、ほぼ過去最高値を維持しています。ただ、トランプ大統領の関税の話などもあって、相場はけっこう乱高下していますね。
今は少し戻ってきている感じですが、ここ1年間のスパンで見ると、かなり上がっている印象です。トランプ関税が経済にインパクトを与え、物価が上がり、株に投資していた人たちも金のほうに流れてきているんだと思います。2024年6月頃は1万1,000円/1gくらいだったので、1年で6,000円も上がっていることになります。
――すごいですね……。
2023年は8,800円/1gぐらいでしたから、上昇のスピードも加速しています。金は「プール4杯分」しか地球上に存在しないと言われていて、採掘できる絶対量が決まっているんです。残りはプール1杯分、これからは減っていく一方なんですよね。
直近では、中国人民銀行が金の保有数を増やすというニュースもありましたが、金の需要はさらに高まりつつあります。
――そう聞くと、早く買ったほうがいいんじゃないかと焦りますね。
最近は「高くなったから売る」というより、「高くなったからこそ持っておこう」という人が増えてきた印象があります。今は情勢が不安定なので、「安全資産として持っておきたい」と考える人が増えているのかもしれません。
――今後、金相場が変動するとしたら、どのような要因が考えられますか?
やはりアメリカの政治ですね。トランプ大統領が何か発言すれば、それだけで相場が動いたりするので。株価や金利、為替も連動しており、何か大きな発表があれば下がる可能性はゼロではありませんが、現状では大きく下がるリスクは少ないかなと思います。
あとは、戦争です。例えばロシアによるウクライナ侵攻が始まったときは、金価格が上がりました。ですから、またどこかで戦争が始まったりすれば、金価格に影響を及ぼす可能性があります。
今は「売り時」か、「買い時」か。鑑定士の答えは……
――今、金を買っているのはどういう人たちなのでしょう?
以前はどちらかというと年配層や、昔から保有していた人が多かった印象ですが、今は「金はまだ価値が上がるんだ」と気づいて、投資対象として興味を持つ若い層が増えている印象ですね。
先ほども言いましたが、投資対象を株式から金に移している人も多いと思います。1年で1.5倍くらい上がっているわけですからね。10年後には1グラムあたり3~4万円になっている可能性もないとは言い切れません。
――では、今は金の「売り時」なんですか?「買い時」なんですか?
どちらとも言えますね。売るなら過去最高値ですし、今後の上昇も見込めるから買うのも悪くない。ただ、株価と違って金はほとんど急落することはないですし、価値がゼロになることもありません。だから「現金で持っておきたくない」という人にとっては、保有するのも一つの選択肢だと思います。
――なるほど……。
ただ、使い道があるのであれば、保有している金を現金化してもいいのではないでしょうか。例えば入学金に使うとか、生活のために使うとか、そういう理由で売るのは全然アリだと思います。なので、持つのか売るのかは、その人のライフスタイルや資産設計次第という感じですね。
よっぽど「資産として長期的に保有していきたい」という明確なビジョンがあるなら、持っていてもいいのではないでしょうか。でも、特にそういうものがなければ、売ってしまって必要なことに使うことをお勧めします。
相場の高騰だけを見て「売る」「買う」と判断するのではなく、自身の生活設計や資産戦略と照らし合わせて判断する。資産として、あるいは現金化の手段として、賢く付き合っていくことが重要だ。