ダイハツ工業が軽自動車「ムーヴ」の新型を発売した。従来型との大きな違いはスライドドアを採用しているところ。「カスタム」を廃止してワングレード、ワンシルエットのラインアップとしているところも変更点だ。
スライドドア装着は時代の要請?
「ムーヴ」は1995年に初代が誕生。累計販売台数は340万台を超える。今回のフルモデルチェンジで通算7世代目となった。
ダイハツは5月12日に新型ムーヴのティザーを開始。6月5日の時点で販売目標の2倍を超える予約受注を獲得したそうだ。新型ムーヴの月間販売目標台数は6,000台なので、少なくとも1.2万台は受注していることになる。
新型ムーヴでは「多くの消費カルチャーを経験してきた目利きの世代、中でも合理性とこだわりをもって商品を選ぶ『メリハリ堅実層』をターゲットに設定」したとダイハツ。これまでとの大きな違いは「スライドドア」が付いたことだ。
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新型「ムーヴ」は「L」(2WD:135.85万円、4WD:148.5万円)、「X」(2WD:149.05万円、4WD:161.7万円)、「G」(2WD:171.6万円、4WD:184.25万円)、「RS」(2WD:189.75万円、4WD:202.4万円)の4グレード展開
ダイハツのカテゴリーでいうと、ムーヴは「ハイト系」の軽自動車ということになる。もっと背の高い「タント」は「スーパーハイト系」だ。もともと、軽自動車市場ではハイト系が50%を超えるシェアを握っていたが、タントの登場以降はスーパーハイト系が伸びていて、現在ではこちらが主流となっている。
スーパーハイト系が増えるのと足並みをそろえるように伸びているのが軽自動車のスライドドア装着率だ。後席のドアを開くのに場所を取らず、子供も年配の方も安心して乗り降りができるスライドドアの利便性の高さは明白。今では軽自動車販売の約6割がスライドドア装着車になっているという。
ダイハツには「ムーヴキャンバス」というスライドドア装着車があるが、今回のフルモデルチェンジでムーヴにもスライドドアが付いた。新型の開発に当たったチーフエンジニアの戸倉宏征さんは、「ムーブらしさを継承、進化させながら、時代の変化に合わせて何を変えるか」が開発の課題だったと述懐している。スライドドアの採用は時代の変化に合わせた決断だったのだろう。
ちなみに、新型ムーヴと同じようなボディサイズのハイト系軽自動車といえばスズキ「ワゴンR」、ホンダ「N-WGN」、日産自動車「デイズ」/三菱自動車工業「eKワゴン」などがあるが、これらのライバルたちにはスライドドアが付いていない。少しキャラが違うが、同じようなサイズでスライドドアが付いた軽自動車には「ワゴンRスマイル」と「ムーヴキャンバス」がある。新型ムーヴがハイト系市場でどんな評価を受けるのか、ムーヴキャンバスとはどうすみ分けていくのか、そのあたりに注目だ。
ムーヴらしさとは? キャンバスとの違いは?
継承・進化させた「ムーヴらしさ」とは「クルマに求められるさまざまな要素を高いレベルでバランス」させているところだと戸倉さん。価格でいえば「ミライース」の方が安いし、室内の広さでいえば「タント」に分があるものの、ムーヴはそれらの要素をまんべんなく兼ね備えたクルマなのだという。
ムーヴの魅力は「スタイリッシュなデザイン」と「軽快でキビキビした走り」であるとのこと。その名の通り「動く姿の美しさ」にこだわったというデザインはムーヴキャンバスとの最大の差別化ポイントになる。
走りの面でいえば、新型ムーヴとムーヴキャンバスのプラットフォームとパワートレインは全く同じ。ただし、新型ムーヴには専用のチューニングを施し、乗り味に違いを付けている。具体的にはアクセルスロットル特性、ショックアブソーバー特性、ステアリング特性などを変えたそうだ。イメージとして、ムーヴキャンバスが「乗り心地」方向に振ったクルマであるのに対し、新型ムーヴは「操縦安定性」にこだわったクルマだと考えればいいだろう。
「DNGAプラットフォーム」の採用により、従来型より燃費が約10%向上していることも新型ムーヴのトピック。2WDのNA(自然吸気エンジン)同士で比べると、従来型は20.7km/L、新型は22.6km/Lとなっている。