Amazonオーディブルで6月30日から配信される『リボルバー』で朗読を担当した中谷美紀。20代の頃に物語の舞台であるフランス・パリに住んでいたこともある中谷にインタビューし、フランスの魅力やパリ生活が自身に与えた影響について話を聞いた。

中谷美紀

中谷美紀

20代の頃に日本とパリの2拠点生活を経験

原田マハ著『リボルバー』は、ゴッホが自殺に使用したとされる拳銃「リボルバー」を起点にストーリーが展開する、アート史上最大の謎に迫るミステリー小説。ゴッホとゴーギャンという、生前顧みられることのなかった孤高の画家たちのヴェールを剥がす物語を、中谷が朗読で表現する。

中谷は22歳から8年間、物語の舞台であるパリに部屋を借りて、日本との2拠点生活を送っていた。そのきっかけについて「フランス映画が好きだったので、パリでフランス映画を字幕なしで見てみたいと思って」と説明し、日本でドラマや映画などの撮影が終わるとすぐにパリに向かっていたという。

そして、フランスに影響を受けて変わったことを尋ねると「フランス人は他人のことを気にしない人たちなので、とても気楽に生活できるようになりました」と答え、「自分の審美眼に従って生きればいいんだ」という心の解放があったと振り返る。

「フランスの方は髪の毛がボサボサでも気にしないですし、お化粧も適当ですし、私たち日本人のように雑誌が提供する情報に真面目に従ってトレンドを追うことはあまりないかもしれません。他人の価値観に縛られず、自分の審美眼を大事に、自らが本当にいいと思ったものを身に着けている印象で、そういった生き方も素敵だなと思いました」

フランスは芸術が社会や暮らしの中に根付いている

原田マハ著『リボルバー』

また、芸術大国フランスの素晴らしさも感じたという。

「3歩歩けば芸術家に当たるぐらい、誰もが芸術家を自称していて、国のサポートも素晴らしく、最低限の暮らしができるシステムが整っているんです。アーティストが格安で住めるレジデンスがあったり、コメディ・フランセーズの劇団員は国からお給料が出ているのにもかかわらず、さらなる待遇の改善を求めてストライキを起こしたり。また、映画のために国が多額の助成金を支出していて、芸術に対する人々の眼差しも温かく、大切な存在として扱われているなという印象がありました」

オルセー美術館で目の当たりにした光景からも、芸術が当たり前のように生活の中にあるということを実感したと語る。

「幼稚園児が15人ぐらい車座になって、ゴッホの『ローヌ川の星月夜』の説明を聞いて、本物を見て模写しているような姿は、ヨーロッパではよく見られる光景ですが、改めて感激しました。彼らが芸術家にならなくても、審美眼が幼い頃から養われているというのは素晴らしいことだなと。そうすると、他人の価値観に踊らされて、不確かな情報を盲目的に信じたり、詐欺に遭うということはなくなるのではないかなと思います」

そして、「企業に勤めるエグゼクティブたちもアートの会話ができないと一人前として認められないというのは、ある意味、うらやましいなと。アートへの扉が誰にでも開かれていて、社会や暮らしの中に、当たり前に根付いていることが素敵だなと思います」と語っていた。

  • 写真右は中谷美紀と原田マハ氏

■中谷美紀
1976年1月12日生まれ、東京都出身。1991年に芸能活動を開始し、1993年に女優デビュー。その後、数々の映画、ドラマ、CMなどに出演。映画『嫌われ松子の一生』(2006)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞ほか、多数の受賞歴を持つ。絵本、エッセイ集、旅行記の刊行など、その活動は多岐にわたる。著書に『インド旅行記1~4』『オーストリア滞在記』『オフ・ブロードウェイ奮闘記』などがある。
■『リボルバー』
著者:原田マハ ナレーター:中谷美紀
パリのオークション会社に勤務する高遠冴の元にある日、錆びついた一丁のリボルバーが持ち込まれた。それはフィンセント・ファン・ゴッホの自殺に使われたものだという。だが持ち主は得体の知れない女性。なぜ彼女の元に? リボルバーの真贋は? 調べを進めるうち、冴はゴッホとゴーギャンの知られざる真実に迫っていく。