自身もシングルマザーという境遇だけに、共感する部分は大いにあったようだ。

「真奈さんが“みんな他人だけど、親戚のように”という思いを話していましたが、私もそういう願いを持っているんです。子どもを一人で育てるのはすごく難しいと思うことがいっぱいあって、心がポキッとなりそうなこともあります。そんな時に、協力してもらえる人がいると本当に助かるんです。子どもと一緒にワチャワチャしてくれるだけで、どれだけお母さんが救われるか。

 子どもたちにとっては誰か分からないおじさんがやって来てブリをさばいてくれる場面がありましたが、私も土日は撮影現場に子どもを連れて行くと、みんなが遊んでくれるので本当に助かるんですよ。だから、真奈さんが作っている空間は、全シングルマザーの皆さんの代弁をしてくれている。それは勇気につながることなので、今回の放送を見て、こういう輪がもっと広がってくれたらうれしいなと思いました」

「子どもたちを楽しくハッピーにしたい」とこの事業を立ち上げた真奈さん。前田は自身の子どもに対して、どのように“楽しくハッピー”な機会を提供しているのか。

「あえてウソをつかないようにしています。夢だけを見せるのではなく、“これをしたら、こんな楽しいことが待ってるんだよ!”と、現実をすべて教えるんです。一人で寂しい思いをさせてしまい、我慢してもらうことが多いのですが、“楽しいことができるように、ママ頑張ってくるね”と言って、そのメリハリをすごく大事にするようにしています」

撮影現場でも、「本番が始まると端っこの方で待ってくれるんです。その代わり、大人たちが遊んでくれるので、“大人ってこんな感じなんだよ”、“大きくなったらお仕事があるんだよ”と伝えていますね」という。

そうして大人の現実を見せてきた結果、「“子どもだって大変なんだ!”、“小学校でストレスいっぱいなんだよ!”と大人っぽいことを言うようになりましたが(笑)、ちゃんと自分の意見を言える子に育ってくれました」と成長を実感。常日頃持っている「子どもと大人の環境をセパレートしない」という意識は、真奈さんにも近しいものを感じたそうで、「正解は分からないですが、同じ姿勢でやっている人がいると、これで良いのかなと思えました」と、安心した部分もあったようだ。

  • シェアハウスで子どもたちと遊ぶ真奈さん (C)フジテレビ

『ザ・ノンフィクション』が今の時代にある意義

『ザ・ノンフィクション』でナレーションを担当するのは、29歳で漁師になった女性を追った『葉山でひとり、女漁師』(2016年7月17日放送)以来、約9年ぶり。その間、「定期的にチェックさせていただいてます」といい、AKB48時代の仲間たちが担当する回も、「登場人物と境遇が近い人がやっていますよね」と見ているという。

視聴者目線としては、「自分の心に絶対響く、いろんな人の人生を見せてくださる番組だと思って、勉強になります。ドラマでさえ表現が制限されるようになってきましたが、ありのままのノンフィクションを知る機会が少なくなっていると思うので、こういう番組が今の時代にもあるのはすごくいいことだと思います」と、意義を感じている。

普段の役者の仕事とは違う難しさがあるそうで、「ちょっと壁にぶつかりながら、それを突破する感覚もあって、いい刺激になりました。また成長できたような気がします(笑)」と、得るものがあったようだ。

●前田敦子
1991年生まれ。千葉県出身。2005年、AKB48結成時からメンバーとして活動し、12年8月に卒業。07年の映画『あしたの私の作り方』で女優デビューを果たし、近年は『葬式の名人』『もっと超越した所へ。』『一月の声に歓びを刻め』などの映画、『ウツボラ』『かしましめし』『厨房のありす』などのドラマに出演。現在は、フジテレビ系ドラマ『人事の人見』に出演中。