女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。親を早くに亡くすなどつらい出来事も描かれ、戦争も描いていく本作において、阿部サダヲ演じるヤムおんちゃんことパン職人の屋村草吉が作品に明るさをもたらしてきた。2003年の『こころ』以来で22年ぶり3度目の朝ドラ出演となった阿部の起用について、制作統括の倉崎憲氏に話を聞いた。

  • 連続テレビ小説『あんぱん』屋村草吉役の阿部サダヲ

    連続テレビ小説『あんぱん』屋村草吉役の阿部サダヲ

112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。

倉崎氏は「僕はずっと、日本の朝には阿部サダヲが必要だと思っています」と言い、大河ドラマ『平清盛』(2012)で関わったときに感じた阿部の人柄の素晴らしさからも、阿部の出演を熱望したという。

「『平清盛』でご一緒させていただいたのですが、1年目のド新人の僕にすら、他のキャストやスタッフと平等の態度で接して、気にかけてくださって、すごく感謝していて、いつか自分が朝ドラのチーフプロデューサーとして企画ができるのであれば、阿部さんに出ていただきたいという思いがずっとあったので、企画が決まる前から阿部さんのマネージャーに電話して、何役かわからないですけど出てくださいとラブコールをさせていただきました」

そして、中園氏が考えたプロットに屋村草吉が出てきたときに、「言い回しやキャラクターが阿部さんっぽい」と思い、中園氏に提案したところ「いいですね」と賛同を得て、正式にオファーしたという。

「朝ドラはいろんな時間に見ていただけるものですが、やはり一番は朝に見るものだと思っていて、阿部サダヲさんを見て1日が始まるというのは、なんか素敵じゃないですか。そういう思いもあって、とにかく出ていただきたかった」

さらに、「風来坊でぶっきらぼうな一面もあるけど、根には人への愛がちゃんとあるキャラクター。誰かが亡くなったり、戦争も含めて悲しい部分も描かないといけないですけど、阿部サダヲさんの力を借りて、『あんぱん』を作品全体として明るくしていただきたいという思いも託させていただきました」と阿部への期待を述べ、「完成した映像を見ても、阿部さんに救われている部分が大いにあるなと。彼自身の芝居の明るさが、見てくださっている人たちを明るいマインドにしてくれているのではないかなと思います」と語る。

5月30日に放送された第45回では、憲兵に乾パンを作るよう命じられ釜次(吉田鋼太郎)たちが戸惑っていたところ、ずっと乾パン作りを拒否していた屋村が現れ、焼き上げた。朝田家は喜ぶが、その後、屋村は朝田家を出ていってしまった。

この展開に、SNSでは「ヤムおんちゃん、朝田家の為に乾パン作ってくれてありがとう」「ヤムおんちゃん帰ってきて」「ヤムおんちゃんの人生が気になる」「どんな過去を背負ってあるのか気になる」などと反響を呼んだ。

屋村の今後が気になるところだが、倉崎氏は「彼にもやはり過去があって、そこはちゃんと描きたいなと思っています」と話している。

(C)NHK