
今回の放送では、ジャズ・ピアニストの上原ひろみさんが出演。ジャズ界屈指のピアニストで作曲家のチック・コリアとの共演エピソードなどについて語ってくれました。
上原ひろみさん
1979年生まれ、静岡県出身の上原さん。6歳よりピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学ぶ。17歳のときにジャズ・ピアニスト界の巨匠、チック・コリアと共演。1999年にボストンのバークリー音楽院に入学。在学中にジャズの名門テラークと契約し、2003年にアルバム『Another Mind』で世界デビュー。2021年には「東京2020オリンピック開会式」に出演。また、2022年よりワールドツアーも本格的に再開。2023年には映画「BLUE GIANT」で音楽監督を務め、「第47回日本アカデミー賞」で最優秀音楽賞を受賞。新プロジェクト「Hiromi’s Sonicwonder」でも精力的に活動をおこない、4月にアルバム『OUT THERE』をリリースしました。
◆ジャズ界の巨匠チック・コリアとの出会い
唐橋:上原さんは世界的に活躍されているなかで、数々のジャズレジェンドたちとの深いご縁もお持ちです。今回は、ジャズレジェンドたちとのストーリーを伺っていきます。経歴を振り返りますと、上原さんは6歳からピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学んでいたんですね。そして、17歳のときに出会ったのが、ジャズ界の巨匠であるチック・コリア。デビュー前に会われていますよね?
上原:そうですね。東京でとある先生のレッスンを受けていたときに、同じビルでチック・コリアがリハーサルをしているという噂を聞きつけて、会いに行きました。
唐橋:当時からチック・コリアのことは?
上原:もちろん大ファンでした。ちょうどピアノがあったので「何か弾いてみなさい」と言われて弾いたら、チックが加わってきて一緒に演奏することになったんです。次の日チックのコンサートがあったのですが、「明日のコンサートに出られる?」と聞かれて、一緒に共演をしました。
唐橋:それはすごい展開ですね!
上原:すごくビックリしました。
唐橋:チック・コリアとお会いして、最初の印象はどんな感じでしたか?
上原:とても物腰が柔らかい、“優しいおじさん”って感じでした(笑)。雑誌や写真で見ると少し怖い方、寡黙なのかなと思っていたんですけど、実際はとてもお喋りで物腰が柔らかい方でした。
唐橋:「弾いてごらん」と言われて、すぐに演奏できました?
上原:オリジナルを弾いて、そのあとに即興演奏、ジャズ・スタンダードを一緒に演奏した記憶があります。
唐橋:そのときはどんなお気持ちでした?
上原:大先生と子どもって感じでした。すごい人は何でも合わせてくれるので、こちらとしては気持ちがよくなるだけでした(笑)。
◆共演するたびに「本物はすごいと思った」
唐橋:そこから10年後、チック・コリアとライブアルバムを出されましたね。
上原:そのときは本当に嬉しかったです。17歳のときは「本物ってすごいな」って感じましたし、同時にチックに対して喋る音楽の言葉がこんなにも少ないんだと痛感して帰ったんですよ。なので、次に会うときにはもっとピアノで話せるようになっていたいなと思っていました。その気持ちをずっと持ったまま活動して、2003年にデビューしたときに、ニューヨーク・ブルーノートかどこかでチックの演奏を見に行って。そこで「アルバムを聴いたよ」って話をしてくれたのですが、彼はそのとき“17歳のときに共演した私”と“デビューアルバムを出した私”が一致していなかったんですよね。そこから「東京JAZZ」で共演していただいたときに、やっと「あのときの子か!」とピンと来たみたいです。
唐橋:へええ!
上原:17歳のときよりはちゃんと会話ができているっていう気持ちがあったので、フェスが終わったタイミングで「一緒にアルバムを作らないか」と言っていただきました。
唐橋:あちらからのお誘いだったのですね。
上原:(誘いを受けたとき)嬉しくて、ビルの廊下を200mぐらいダッシュした記憶があります(笑)。レコーディングは1年後だったので、そのときにまた話せることを増やさないとなって思いました。いつも、自分は彼に対してどれぐらい音で話せるかってことをチェックしているんですよね。
唐橋:大変そうですね。
上原:チック・コリアはずっと新しい音楽の言葉が出てくるので、共演するたびに「本物はすごい」って思う人でした。彼との共演は、まるで巨大な図書館を歩いているような感覚になるんですよね。あらゆる本が彼のなかに入っていて、そこから彼独自の言葉もあり、いつもすごいなって思います。
<番組概要>
番組名:NOEVIR Color of Life
放送日時:毎週土曜 9:00~9:30
パーソナリティ:唐橋ユミ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/color/