
昨年の発売以来、原点回帰のスクエアなデザインや優れた悪路走破性により絶大な人気を誇っているトヨタのランドクルーザー250。じつは、2024年末に北米で行われたイベントでその魅力を倍増するコンセプトカーが発表されていたのをご存知でしょうか? 今回は、同車のデザインを手掛けた白井さんに開発の意図を聞いてみました。
トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
開発本部 内外装技術部 デザイン室
スタイルクリエイトグループ
白井一総さん
■アーマード・ランドクルーザー!!
コンセプトカーの名称は「MODELLISTA OVERLAND Vision Concept」。トヨタ車の純正パーツを手掛けるモデリスタが、昨年11月に米国ラスベガスで開催されたSEMA SHOW 2024に出品した注目車です。まずは、聞き慣れないオーバーランドという言葉の意味から聞いてみましょう。

「オーバーランドとは、砂漠や森林などを走り抜け、自然の中でキャンプなど行うライフスタイルのことです。アメリカやオーストラリアなどでは一般的に知られている言葉ですね」(開発本部 デザイン室 白井一総さん、以下同)。
ーー車両コンセプトである「Sophisticated Armored Gear」にはどんな意図が込められているのでしょう?
「SEMA SHOWに出品されるクルマは、パイプを曲げたカンガルーバンパーに代表されるような無骨なモノが多いんですね。一方で、モデリスタは従前から『洗練されたデザイン性』を掲げていて、例えば映画のアイアンマンのヘルメットのような、ソフィスティケードされた装甲をイメージしたワケです」
ーーソフィスティケードな方向はモデリスタならではということですか?
「そうですね。弊社では『Resonating Emotion』というデザインフィロソフィを掲げていて、ベース車と調和させつつ個性を際立たせることを重視しています。オーバーランドスタイルとして装甲はさせるのですが、そこは洗練された機能美として表現したいと…」
ーー具体的なカスタマイズとしては、とにかくショルダー部を囲む厚みのあるプロテクターが目立ちますが、これは何かモチーフがあったのでしょうか?
「先ほどのアイアンマンのような装甲をイメージしたのですが、当初はもっと車体全体を包み込むような案だったんですね。そこから過剰な部分を削ぎ落としてゆく中でこの表現に至りました」
ーー同じプロテクターでも、ショルダー部のものとドア下部のものでは質感が異なりますね?
「はい。最近の塗装のトレンドに『トーンオントーン』という手法があって、同じ色相の濃淡を並べることで変化を付けることができる表現です。今回ではツヤ有りとツヤ消しなど、同じブラックでも異なる素材感のパーツを並べることで平板な印象を避けているんですね」
■メッキ装飾に代わる新しいアクセント
ーー金属感の強いボディ色にはどんな意図があるのでしょう?
「今回はダークメタリック系のカラーですが、最近の北米のトレンドを見つつ選択した色ですね。また、映画のバック・トゥ・ザ・フューチャーに登場するデロリアンのようなヘアライン加工を施して、視覚的に堅く強いイメージを出しています」
ーーフロントのアンダーガードや、リヤの携行コンテナの斜めのラインを使った造形がユニークです
「ここは、ベース車の内外装に使われている多角形の造形を踏襲したデザインですね。この形は視覚的にもオフロードとしての力強さを感じさせますし、先のとおりモデリスタとしてベース車との調和も意識しているんですよ」
ーー要所にはグリーンのイルミネーションがありますが、これはモデリスタのイメージを意図したものですか?
「そこは、従来のメッキ加飾に代わる新しいアクセントとしてLEDを使っているんです。特に欧州市場など、メッキは環境負荷の大きい素材として認識されていることや、アルファードなど一部を除いて、最近のトヨタ車ではメッキを使わないクルマが増えていることがありますね」
ーーブラックのホイールは社外のモノでしょうか?
「はい。アメリカの『ブラックライノ』というメーカーの製品で、SEMA SHOWの会場でもよく見る人気のホイールメーカーです。いわゆるリードロック調のホイールでは、5本スポークなど機能に振ったデザインが多いのですが、同社の製品は意匠にも気を使っていて、今回のコンセプトに合っていたんですね。じつは、ここにもグリーンの差し色を入れているのでよく見てください(笑)」
ーーなるほど。コンセプトにもある「究極の遊びクルマ」のイメージがよく表現されていますね。本日はありがとうございました。
〈文=すぎもと たかよし〉
