
今年も4月11-13日の3日間にわたって、オートモビル カウンシルが幕張メッセで開催された。主催は実行委員会形式を採っているが、主体となっているのは日本の自動車雑誌の草分けのひとつ、カーグラフィック誌であることはご存知の通り。まずは第10回の記念開催を迎え、ジョルジェット・ジウジアーロ氏の招聘をも成功させた、株式会社カーグラフィックの加藤哲也代表取締役と同誌の小野光陽編集長に、敬意を表したい。自動車が単なる生活必需品や移動ツール、あるいは重要産業だとか経済活動の結果ではなく、造り手や乗り手の情熱の所産であることが、日本でも認知されつつあるのは素直に喜ばしい。
【画像】ジウジアーロがデザインを手掛けた多くの車両をはじめ、多彩なコンテンツで観客を魅了したオートモビル カウンシル2025(写真25点)
というわけで第10回をふり返ってみよう。幕張メッセの9/10/11ホールでまず来場者を迎えたのは、戦前に英国政府から認可されていた生産枠と当時からのデッドストック・パーツを用いて、新車として登録できるアルヴィスのコンティニュエーション・シリーズ。最新作の4.3L ランスフィールド・コンシールド・フードはアールデコ期の繊細なボディワークを3D計測とCADで正確に再現しながらアルミ叩き出しで実現したもので、その迫力に息を飲む。予約価格は9000万円だ。敢えてもう一台の見どころを挙げるなら、同社がヘリテージ・モデルと呼ぶ過去車両で、1928年式アルヴィス1.5L 12/15 FWDル・マンが展示されていた。これはル・マンでは珍しい前輪駆動車ながら、同年のル・マン24時間の1.5リッタークラスで1-2フィニッシュを飾ったモデルで、同じタイプの2座ボディは9台のみという貴重さだ。
その隣にはポルシェが、日本に導入されたばかりに新型マカンと同じく、ポルシェ・クラシックにてレストアされたレモンイエローのナロー911と、マルティニ・カラーの918スパイダー、つまりポルシェのハイブリッドとしてもっとも初期に属するモデルが置かれた。電動化の時代もクラシックの方向性はブレない、ポルシェらしい矜持を感じさせる展示だった。
オートモビルカウンシルは国産車メーカー各社にとっても、発信の場として機能し、新しい事業の契機となっている。昨年、パーツ供給や旧車レストア活動を「トヨタクルマ文化研究所」としてまとめたトヨタは、今年はさらに一歩踏み込んで「TOYOTA CLASSIC」を発表。これはトヨタ博物館や富士モータースポーツミュージアムを起点に、GRによる旧車パーツの企画販売、KINTOによる非オーナーでも旧車を楽しめる機会づくり、クラシックカーフェスティバルやオーナーズミーティングでの仲間づくりといった、トヨタ社内の各事業部門がオーナーや潜在的オーナーに対して旧車シナジーを創出する枠組みのこと。各工場から選抜された匠がレストアしたというセリカLB(リフトバック)の輝きもさることながら、KINTOの旧車レンタカー群から任を解かれてGRガレージ富山新庄で蘇ったA70スープラ、そして修復の難しい樹脂のインストルメンタルパネルを新手法で復刻したA80スープラも展示。いわゆるディーラー認定中古車といえる年限を超えても、修理ノウハウをもつ匠のメカニックが各地のディーラーにいる以上、オーナーにとっては合理的で、潜在的顧客も集客できる循環型モデルといえるだろう。
その循環型モデルの始まりは、もしかすると1989年発表のプロトタイプ「トヨタ4500GT」かもしれない。DOHC・5バルブのV8を搭載したトランスアクスルのFRで、スーパーコンピュータによる空力解析によるボディは、後のスープラに繋がっているという。
他にも注目度の高い、1964年のプロトタイプを展示したのはマツダだった。ジウジアーロが在籍した時代のベルトーネ作品、「S8P」をもち込んだ。後のルーチェやロータリークーペの素となった1台だ。
数台の展示で自社の車造りを印象付けたのは、三菱とホンダだった。前者はデボネア、ギャランGTO、ギャラン・シグマ、ディアマンテという各時代の高級車~スペシャリティカーを披露。チーム三菱ラリーアート総監督の増岡浩氏と、パリ・ダカール参戦歴も豊富な元F1ドライバー片山右京氏による、三菱車トークショーも繰り広げられた。ラリーアートはここ数年ワークス体制でアジアクロスカントリーラリーを闘っており、8月の第30回大会に期するところが大きい。この二人が集うということは、やはりパリ・ダカールへ照準を合わせているように見える。
対して後者、ホンダは発売間近の6代目プレリュードの露払いとばかり、初代から5代目までの歴代を一気に展示。電動サンループやABS、4WSなど国産車として先進機構を先駆けた歴史を紹介した。かくして6代目プレリュードが搭載する新たなe:HEVシステム、そしてHonda S+ Shift(ホンダ エスプラスシフト)に注目を集めるというシナリオだろう。
メーカーの展示する車両はヘリテージカーという括りだが、スペシャルショップやヒストリックガレージによる出展車両は基本、売り物であるのもこのイベントの魅力。注目を集めたところでは、ワイズの1977年式XJ-6C 4.2Lが1560万円、ガレーヂ伊太利屋の1938年式フィアット508シアータが2780万円といったところだ。
やはり今年はジウジアーロ御大の来日に合わせ、日産GT-R50 by イタルデザイン、いすゞ117クーペといった日本ならではの作品車そのものが多かった。「作品数×量産数」のスケールという意味で、ジウジアーロほどのデザインにおける成功例は今後も現れない。その意味を熟知し、会場へ足を運んだ人々が3日間で4万4963人を数えたというのだから、日本の自動車文化の成熟もいよいよ本格化してきたのだろう。
文・写真:南陽一浩 Words and Photography: Kazuhiro NANYO