
2000年代のUSインディーロックを象徴するバンド、ライロ・カイリー(Rilo Kiley)。フロントパーソンのジェニー・ルイスとギタリストのブレイク・セネットを中心に結成された、ロサンゼルス出身の4人組は、2002年の『The Execution of All Things』や2004年の『More Adventurous』といった名作を通じて、多くの女性たちが活躍する今日のUSインディー・シーンに多大な影響を与えてきた。そんな彼らが、現地時間5月5日、17年の沈黙を破ってついにステージに帰還。再始動の地となったカリフォルニア州サン・ルイス・オビスポでは、再会の喜びを噛みしめるような一夜が繰り広げられた。
サン・ルイス・オビスポのFremont Theaterで行われたライロ・カイリー再結成ツアーの幕開けの途中、ブレイク・セネットがじっくりとスタンディングエリアを見渡した。「2025年の僕らのファンがどんな見た目になってるのか、ちょっと気になってたんだ」と、シンガー/ギタリストは語った。そしてバンドメイトのジェニー・ルイスに目を向けてこう続けた。「彼女の言う通りだよ。マジで、みんな全然変わってないね」。
前回ライロ・カイリーがライブを行ったとき、アメリカの大統領はジョージ・W・ブッシュで、マイケル・ジャクソンはまだ生きていて、高校の化学教師がクリスタル・メスの製造者になるという新しいAMCのドラマ(『ブレイキング・バッド』)が放送開始から数カ月というタイミングだった。つまり——このバンドが最後に一緒に演奏してから、本当に長い時間が経っていた。
最後のツアー(メジャーレーベルからのブレイク作にして最終作でもある『Under the Blacklight』のプロモーションを兼ねたもの)から17年が経った今でも、彼らの熱狂的なファン層はむしろ拡大しており、それはこの夜のFremont Theaterで痛感させられた事実でもあった。「今夜より前にライロ・カイリーのライブに来たことがある人?」とセネットが問いかける。「うーん、信じがたい人もいるな……(当時)3歳とかじゃない限りはね」。
ライロ・カイリーが解散して以来、ルイスはインディーロック界のアイコンとしての地位を確立してきた。いくつもの高評価を受けたソロアルバムを発表し、2021年にはハリー・スタイルズのオープニングアクトも務めている。そんな彼女はしばしばインタビューで、1998年にセネットと共にロサンゼルスで結成したこの愛すべきバンドの再始動について尋ねられてきた。特に2023年、彼女が『Give Up』の20周年を記念するポスタル・サーヴィスのツアーに参加したことから、ファンの間で再結成への憶測はさらに高まった。
「もちろん、やる気はあるわ」とルイスは以前、筆者に語っていた。「ただ、それには”正しい化学反応”と”正しいタイミング”が必要なの。あの曲たちをもう一度演奏することは、お互いにとって義務だと思う。だって、それがバンドであることの魔法だもの。ただ4人がひとつの部屋に集まって、そこから生まれるエネルギーこそが」。
Photo by Penelope Martinez
その”魔法”のような空気と高揚感は、サン・ルイス・オビスポの夜を通して終始漂っていた。地元の名所、マドンナ・インから運ばれてきたピンク・シャンパン・ケーキが、祝いの気持ちを象徴するかのようにステージ上に現れる一幕もあった。「みんなに切り分けて配りたかったんだけどね」と、セネットはバービーピンクのフロスティングにかじりつきながら笑う。「でも……ほら、いろいろと問題があるんだよ」。するとルイスがさらりと続けた。「これが”引退からのカムバック”ってこと。ケーキ付きってわけ」。
ルイス、セネット、ベーシストのピエール・デ・リーダー、ドラマーのジェイソン・ボーゼルは、まさに”眠れる心”に突き刺さるノスタルジアでこの夜を幕開けした。最初に披露されたのは、2002年のブレイク作『The Execution of All Things』のタイトル曲。完全な暗闇の中でそのイントロが鳴り響き、ステージにバンドが登場して新たな時代の始まりを告げた瞬間、鳥肌が立つような感覚が会場を包んだ。
ルイスは一晩中笑顔を絶やさず、モデロ(ビール)を掲げて観客に乾杯。ネイビーの水玉ドレスに、きらめくティアラ、白のフリル付きソックス、黒のエナメル・メリージェーン・シューズという装いでステージを華やかに彩った。彼女はたびたびステージ上を移動し、ウーリッツァーの前では「Silver Lining」と「I Never」を恍惚とした表情で演奏し、観客を魅了した。
2004年作『More Adventurous』に収録された痛烈なナンバー「I Never」の演奏中、ルイスは歌詞の”告白”を指を折りながらユーモラスに数え上げていった——〈だって私は悪いことをした/嘘をついたし、騙したし、盗んだし/今あるものに感謝もしてこなかった〉。彼女の歌声は時を経てもまったく衰えておらず、これまで何年も聴き続け、そしてこの夜を待ち望んできた、私たちの記憶の中のレコードそのままの響きだった。
セネットもまた同じように喜びに満ちており、自身の楽曲「Dreamworld」と「Ripchord」をエネルギッシュに披露し、鋭いギターソロも何度も炸裂させた。特にルイスの胸を締め付けるバラード「Does He Love You?」では、曲の終盤でバンドがジャムセッションへとなだれ込み、セネットはボーゼルのドラム台の上に立ってプレイするという白熱ぶりを見せた。この夜、「So Long」が聴けなかったのは残念だったが、今後のセットリストには加わることを願いたい。『The Execution of All Things』の収録曲「Capturing Moods」とともに(〈どれだけ時間がかかっても、待つのは構わない〉という後者の歌詞は、今回の再結成にぴったりの一節だ)。
ルイスとセネットがかつて交際しており、長年にわたって意見の相違があったことは周知の事実。どうしても思い出されるのは2011年、セネットがある記者にこう語ったときのことだ。ライロ・カイリーをひとりの人間にたとえるなら「今ごろは死体安置所で足にタグを付けられて仰向けに寝かされてるだろう。最近の映画には死者が起き上がって歩くやつがあるけど、ああいうときって大抵、ろくなことが起きないんだよね」と、苦々しく話していた。だが、今やそうした確執は完全に過去のものとなり、二人の間には再び友情の火が灯ったことがはっきりと感じられた。曲の合間には笑い合い、冗談を言い合い、お互いの言葉に乗っかってはその場を盛り上げていた。
代表曲「Portions for Foxes」の前、ルイスがセネットに「ペダルがうまく動かない」と伝え、別のものを使わなければならないかもしれないと話した。すると彼は、「どっちにしてもカッコよくキマるよ」と、励ましの言葉を返した。長いブランクを経ての再始動ということもあり、曲の入りを間違えたり、ちょっとしたトラブルが起きる場面もいくつかあったが、それらすべてを彼らは愛嬌たっぷりに乗り越えていった。「Paints Peeling」でルイスが歌詞を間違えたときには、客席に向かって「んもう、全部うまくいくわけじゃないよね!」と笑い飛ばしていた。
アンコールでは、バンドがさらに時をさかのぼり、1999年にリリースされたレアなセルフタイトルEPから、遊び心たっぷりの「Frug」を披露した。(ここでちょっと書かせてほしいのだけど——ルイスが自身の出演映画『トゥループ・ビバリーヒルズ』のワンシーンにインスパイアされて丸ごと1曲を捧げているって事実、私は一生忘れられないと思う。こういう曲、もっと聴きたい!)
そして最後に演奏されたのは、ファンの間で愛され続けてきた「Pictures of Success」。2001年作『Take Offs and Landings』に収録されたこの楽曲は、およそ7分に及ぶ長尺で、ルイスが当初から持っていたソングライターとしての才能を鮮やかに浮かび上がらせた。それは、後に続く無数の女性インディー・ソングライターたちにとって、まさに”青写真”とも言える曲だった——〈私は現代の女の子、でもすぐにくじけてしまう/成功という絵の中に自分を入れてみるときに〉。
「ほんと、あっという間だったわ」とルイスは観客に語りかける——その場に集まった私たちも、まったく同じ気持ちだった。
Rilo Kiley Set List
”The Execution of All Things”
”Wires and Waves”
”Silver Lining”
”Spectacular Views”
”The Moneymaker”
”Dreamworld”
”I Never”
”Its a Hit”
”Paints Peeling”
”Close Call”
”Does He Love You?”
”Ripchord”
”With Arms Outstretched”
”A Better Son/Daughter”
”Portions for Foxes”
Encore:
”A Man/Me/Then Jim”
”Frug”
”Pictures of Success”