
2025年5月5日、フェラーリは伝説的スーパーカー「F50」の誕生30周年を記念し、エクスクルーシブなオーナーツアー「F50 レガシー・ツアー2025」をスタートさせた。舞台は芸術や自然、そして情熱的なドライビングで知られるトスカーナ地方。ジュネーヴ・モーターショーでの初公開から30年を迎えたF50を祝う特別な旅が始まった。
【画像】誕生から30年を経て輝きを増す伝説のスーパーカー、フェラーリF50(写真21点)
ツアーには、F50のオーナーたちが参加し、トスカーナ州南部のサトゥルニアから出発。マレンマやシエナ周辺の丘陵地、さらにトスカーナとエミリア・ロマーニャにまたがるアペニン山脈を巡る。最終日にはフェラーリの本拠地マラネッロを訪れ、ファクトリーでの展示とフィオラノ・サーキットでのパレード走行で締めくくられる。
この「レガシー・ツアー」は、2023年のF40、2024年のGTOに続く第3弾。フェラーリの歴史を彩ってきたスーパーカーの系譜を現代に蘇らせるイベントとして、オーナーとブランドの絆を深めてきた。
今回のハイライトの一つが、ピレリによってF50専用に開発された新しいP Zero Corsa Systemタイヤの初披露だ。フロント245/35 R18、リア335/30 R18というサイズで、F50のオリジナルスペックを忠実に再現しながらも、現代のコンパウンド技術によって安全性と耐久性を向上。サイドウォールには「Ferrari F50 Legacy Tour 2025」の刻印が施された特別仕様となっており、ピレリにとってもブランド初のパーソナライズタイヤとなる。
Collezioneシリーズに属するこのタイヤは、公道とサーキットの両方で高いパフォーマンスを発揮するよう設計されており、F50の持つ”走る喜び”を現代の路上でも忠実に再現するためにフィオラノ・サーキットでテストが行われた。
F50は、フェラーリ創業50周年を記念して1995年に誕生したモデルであり、その名にふさわしくF1テクノロジーを惜しみなく投入したスーパーカーであった。自然吸気V12エンジンは、1気筒あたり5バルブというレース仕様の設計で、総カーボンファイバー製のモノコックに縦置きでマウント。さらに、プッシュロッド式サスペンションや先進的なエアロダイナミクス技術、そして着脱可能なルーフを備えるタルガトップ構造など、ドライバーにレーシングカーに限りなく近いエクスペリエンスを提供していた。
F50にABSやパワーステアリングは搭載されていない。現代では稀有な、機械との真摯な対話によるドライビングが味わえることこそ、このモデルの最大の魅力である。総生産台数は349台。これは「想定される需要より1台少なく」というフェラーリの哲学によって決められた象徴的な数字だった。
レガシー・ツアーは、単なるドライブイベントではない。フェラーリが築き上げてきた”夢の歴史”を、現代の空気の中で再体験する、まさに”走る文化遺産”の巡礼である。2025年、F50が再び熱を帯び、時代を超えた輝きを放っている。