
シンガーソングライターのMACOと聞いたとき、多くの人がイメージするのはラブソングではないだろうか。テイラー・スウィフトの「We Are Never Ever Getting Back Together」をカバーして一躍シーンに躍り出ると、メジャーデビュー後も着々とラブソングをリリース。2024年7月にデビュー10周年を迎えた今もなお、彼女は恋だの愛だのを歌い続けている。もはやMACOと恋愛は、切っても切り離せない関係といっても過言ではない。
2025年4月16日にリリースされた「だから終われない恋」も、ご多分に漏れずひとつの恋を描いた歌だ。しかも、平成がリバイバルでもてはやされる現代に、彼女はリアルタイムで〈I love you〉と歌っている。そこには、いったいどのような心理があるのか。昨年の5月に事務所から独立し、より自分らしい表現ができるようになったMACOに迫った。
―MACOさんは、2024年7月にデビュー10周年を迎えましたよね。ここまで活動を続けてきて、音楽における”MACOらしさ”ってなんだと思いますか。
MACO:歌うことのクセですかね。「この人、また恋愛の曲を歌ってるな」っていうところ。本当に書くことが、恋愛しかないんですよ。私のメモを開くと、全部が恋愛で埋め尽くされてます。
―他のテーマを書きたくなることはないんですか。
MACO:それが、本当になくて(笑)。友達とか家族にまつわる歌詞が、出てこないんです。たぶん恋愛脳なんですよね、私。「日記」の歌詞に〈後味の悪い夢みたんだけど/夢占いかなんかで調べたらいいの?〉っていうフレーズがあるけど、いまだにそういう節があって。「もう出て来なくていいよ」って思ってる元カレが夢に出て来たのをきっかけに、何本も歌詞を書いたこともありました。今の時代は、平成に流行ったような普遍的な愛や恋が届きにくくなっているように感じるけど、変わらずに届け続けています。
―普遍的な愛の曲が届きにくくなっている実感があるんですね。
MACO:ありますね。だから私は、流行りの音楽では埋められない空白を補う存在になりたいですね。
―それは具体的にどのようなイメージですか。
MACO:例えば最近の音楽は、中毒性もあるし、踊れるし、みんなが真似しやすいし、すぐトレンドにも上がりやすい。でも、寝るときや失恋したときに聴きたくなる音楽とは違うような気がしていて。私の人生のプレイリストに残っているのは、自分の青春時代だった人の曲なんですよね。普遍的な愛が、もうちょっとだけ届きやすい世界になったら嬉しいですね。みんなのプレイリストのなかで、いろんな時期のアーティストさんたちと肩を並べられたら、こんなに幸せなことはないなって思いながら、一生懸命に歌ってます。
Photo by tomoya nagatani
―新曲の制作についても伺わせてください。過去のインタビューで、制作のインスピレーションは実体験だとお話しされていましたが、それは今も変わっていないのでしょうか。
MACO:そうですね。98%くらい実体験かな。過去の恋愛を思い出しながら曲にしているんです。
―今も作詞はスマホでされているんですか。
MACO:はい。家で書くときもあれば、道端に立ち止まって書くときもあります。何も気にせず、書くこともあれば、「ここがサビなんだろうな」って思いながら書くこともありますね。お気に入りの作詞スポットは、キッチン。冷蔵庫の前の壁に寄りかかって、歌詞を考えるのが好きなんです。ちなみにスマホに打ちこむ時点で、気持ち悪いほどに感情が入ってます。
―スマホに歌詞を書いている時点で、凄まじい感情の波に襲われるのは、かなりしんどくないですか。
MACO:もう慣れっこだし、「書けてるからよし!」って感じですね。世に出るかはわからないけど、自分の気持ちが1回まとまったこと、歌詞が書けたことが単純に嬉しいんです。「言葉にできて、よかった」みたいな。話すことが苦手だから、文字にできると嬉しくなっちゃう。
―「だから終われない恋」は、どのような楽曲になっていますか。
MACO:実体験じゃないと、書けない歌詞になりました。自分が書きたかったことが書けて、とても嬉しいです。歌詞を書いていくうちに全部が思い出されて、あれもこれもってなっちゃって。思わず「もう1回リフレインしていいですか」って提案したんですけど、「ちょっとやりすぎかも」って止められました(笑)。言葉がギュッと詰めこまれたスタイルには、自分のロックやヒップホップが好きな側面が反映されていると思います。
―情景が思い浮かぶ、リアルな歌詞になっていますよね。
MACO:いまどき、サビで〈I love you love you〉って歌う人、あまりいないですよね(笑)。実をいうと、出だしの〈みっともないね またこんな歌 歌って〉というフレーズは自分に対する皮肉も入っているんです。「I love youって、また言ってんの?」「また失恋の歌を歌ってるなんて、くだらないね」って。さっきもお話ししたように、今は普遍的な愛が届きにくくなっている時代なわけで、ふと自分を顧みたときに「くだらないね、また恋の歌って」と思っちゃった瞬間があったんですよね。でも、「切ないときに聴くプレイリストに入るのは、やっぱりMACOだね」ってなって欲しい想いもある。だから、ここのフレーズには「私は変わらずにいくね」っていうマインドがこめられています。
―歌詞に関していうと、〈ねぇ、あいしてる〉が漢字表記で「愛してる」ではないのも気になりました。
MACO:これは「たぶん愛してなかったな」と思ったから、ただのひらがななんです。本当の愛って、真心というか、無償というか。一緒に生きることが、愛だと思うんですよね。仲のいいプロデューサーから、「愛とは、見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることである」というサン=テグジュペリの言葉を教えてもらったときに、「そうだよな」とすごく納得して。この曲の元になった恋愛を思い返してみると、お互いのことしか見ていなかった。全然愛してなかったなと思ったので、〈あいしてる〉にしました。「愛して」なかったから、そもそも恋は始まってなかったんです。でも、最後が〈終わりたくない たったひとつの恋だった〉になっているので、「終われない」と言いつつも終わってしまっているんですよね。
―独立後に初リリースとなった「MY LIFE, MY LOVE」とは対照的な1曲となりましたが、前作がハッピームードだったからこそ、今作で悲しげな雰囲気に振ったのもあるのでしょうか。
MACO:どちらかというと、「優先順位でいったら、次はこれでしょ」って感じ。「MY LIFE, MY LOVE」のチームと作った曲もストックにあったんですけど、この曲がずっと好きで、ずっと出したかったんですよね。あとは、春だからこそ、春っぽくない曲を出したかったというのもあって。ぶっちゃけ、私は春が好きじゃないんです。「もう寒いの終わり? もうちょっと浸らせてよ、この寒さに」とか思っちゃう。朝方になっても暗いままなのが、嬉しいと感じるタイプだから、明るくなる時間がどんどん早くなっていくと「うわあああ」ってなっちゃって。「だから終われない恋」が生まれたときに、それでも春が来る悲しさをこめられたらいいなと思いました。ジャケット写真の背景がブルーになっているのも、「切ない気持ちに相反して春は来る。見上げれば青いの、ムカつく。私は、こんなに切ないのに」という想いがこめられています。
―では最後に。以前のMACOさんは「みんな恋愛したほうがいい」と語られていましたが、今でも同じように考えていますか。
MACO:傷つけられて、哀しみでやられたり、食欲がなくなったりするから、健康には悪いかも(笑)。でも、悪いことばかりじゃないなって思います。私は恋愛脳だから、恋をすると全部がキラキラするんですよね。彩度が上がるっていうか。世界の色がちょっと変わって見えて、行きかう人みんなに「ありがとう」って思っちゃう。恋愛で悲しくなったときは、「クソ!」ってなりますけどね(笑)。とはいえ、今は「したほうがいい」というより「自由でいいんじゃない?」って感じかな。結婚の形も恋愛も。ただ、自分を特別な気持ちにさせてくれる人って、ご縁がある人だから。そういう出会いがあったときは、その縁を大切にしてほしいなと思います。恋愛でも、そうじゃなくても。
「だから終われない恋(英語タイトル:Cant End This Love) 」
MACO
配信中
https://macoinfo.lnk.to/dakaraowarenaikoi
MACO~CANT END THIS LOVE TOUR 2025~
5月4日(日) 東京・大手町三井ホール
開場15:45 開演16:30
問:ディスクガレージ https://info.diskgarage.com/
5月5日(月・祝) 新潟・NIIGATA LOTS
開場16:00 開演16:30
問:キョードー北陸 025-245-5100 (火~金12:00~16:00、土曜10:00~15:00)
5月25日(日) 名古屋・Electric Lady Land
開場16:00 開演16:30
問:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 (毎日12:00~18:00)
5月31日(土) 仙台・誰も知らない劇場
開場16:00 開演16:30
問:EDWARD LIVE 022-266-7555 (平日11:00~15:00)
6月7日(土) 札幌・PLANT
開場16:00 開演16:30
問:マウントアライブ 050-3504-8700(平日11:00〜18:00)
6月8日(日) 函館・CLUB COCOA
開場16:00 開演16:30
問:マウントアライブ 050-3504-8700(平日11:00〜18:00)
6月13日(金) 福岡・Gate's 7
開場18:00 開演18:30
問:キョードー西日本 0570-09-2424 (平日・土曜 11:00~15:00)
6月15日(日) 大阪・GORILLA HALL OSAKA
開場15:30 開演16:00
問:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (土日祝除く12:00~17:00)
6月20日(金) 広島・Yise
開場18:00 開演18:30
問:キャンディープロモーション 082-249-8334 (平日11:00~17:00)
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