• 佐野晶哉 (C)フジテレビ

松本と言えば、圧倒的な演技力で幅広い作品に出演し、唯一無二の存在感で常に視聴者の心をつかむ。今回演じる朱羅は、決して言葉は多くはないが、瞬時に的確に判断し、患者と真摯(しんし)に向き合う強い目力が観る者を惹きつける。凛とした美しさや“静”と“動”のコントラストがとても心地よい。『わたしの宝物』で托卵を決断する女性を演じた松本だが、今作でどんな新しい世界に誘ってくれるのか…楽しみだ。

一方、研修医の保が朱羅に問いかける言葉は、一般の声を代弁していて現実的。そんな2人のコンビネーションが、ドラマのスピーディーな展開に一役買っている。マイペースで時に強引な朱羅に振り回され、葛藤する保の成長も楽しみだ。

朱羅を取り巻く環境は、穏やかではない。院長・不動をはじめ、朱羅の上司で救急科科長・大黒修二(田辺誠一)、外科科長・金剛又吉(鈴木浩介)、朱羅の師匠・多聞真(渡部篤郎)と、実ににぎやかで、個性的だ。そして理事長・阿含は、第1話で早くも次々と“切り札”を送り込む。

しかし、そんな環境にも動じることなく、感情的にすらならない朱羅。あくまでも「修羅場」に執着するその理由と、朱羅が経験してきた「修羅場」を早く知りたくなる。

  • (C)フジテレビ

医療ドラマであまり見たことがない病院セット

今作で目を引くのが、舞台となる病院のセット。今まで我々が目にしてきた医療ドラマのセットの多くは、白が基調で、形はスクエアだった。しかし、外壁のレンガが廊下や初療室、病室に取り入れられている。窓の形や格子、ドアの質感や灯りもクラシカルで、これまで医療ドラマであまり見たことがない。

階段の位置も特徴的で、そこにはステンドグラスの窓がある。救急科が待機する部屋も、雑然としていて生活感が伝わってくる。そのセットに佇む朱羅は、過去に何があったのかと想像を駆り立てられ、そして美しい。

かつて、『救命病棟24時』『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』といった救命医療ドラマの代表作を世に送り出したフジテレビ。このジャンルで新たな1ページを開く作品になることを期待したい。

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