「今も窮屈な思い」DeNA森原康平は「リリーフという仕事」にどう向き合う…

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 昨季、横浜DeNAベイスターズが26年ぶり日本一を決めたとき、マウンドに立っていたのが森原康平選手だった。昨季までの2年間で104試合に登板し、33歳となった現在でも、新たな挑戦へ突き進んでいる。インタビューの前編では、リリーフという仕事の難しさについて話してもらった。(取材・文:石塚隆、取材日:3月22日)

リリーフというポジションは「報われることが少ない」

 

――― 昨季、胴上げ投手となった森原選手ですが、今回は『リリーフという仕事』についてお聞きします。

 

森原 リリーフをやってきてまず思うのは、ネガティブになってしまうのですが「報われることが少ない」ということですね。リードの場面はもちろん、ビハインドや火消しで打者を抑えたとしても、チームが勝った場合、そのピッチャーのおかげだとはなりません。逆に打たれてしまえば「戦犯はお前だ」ということになることも少なくはない。極端に言えば、10試合無失点でも、1試合サヨナラ負けを食らったら「あいつはいつも打たれている」と評価されることもあります。

 

――― シビアな仕事ですよね。

 

森原 はい。ですから逆にリリーバー同士は分かり合える部分がとても強くて、ブルペンは団結するんです。ただ近年は、完全分業制も定着してきて、僕たちの仕事を理解してくれているのは肌で感じています。とくに昨季は、スタジアムのファンの方々が一緒に戦ってくれているのを感じましたし、とても心強かったです。昔は先発でダメだった人がリリーフにまわるといったイメージがありましたが、今は適材適所という部分で見てもらえていると思いますね。

 

――― 森原選手は学生時代からずっと先発投手で投げてきました。しかし社会人3年目、都市対抗野球に出場する日本新薬の補強選手になると、そこで初めてリリーフを経験したと聞いています。初めて救援で投げたときの感想は。

 

森原 誤解を恐れずに言えば「1イニングでいいんだ。楽だな」って思ってしまったんです。初登板では抑えることができましたし、1イニング全力でアウト3つ取るだけでいいんだって。10球ぐらいで終わってしまうし、すべてを出し切れる。それまで僕は先発として、3日間で3試合連続7イニング以上を投げたこともあったので、正直、本当に楽だなって。

 

 

――― そう考えてしまってもおかしくはありませんね。

 

森原 ただ次の試合、僕はホームランを打たれて負け投手になってしまったんですよ。そこで思い知らされました。楽だ、なんて思ってしまったけど、まったくそんなことはなかった。1球で勝つことはできないけど、1球で負けることがあると理解できましたし、1球の重さを痛感しました。補強選手に選んでくれた日本新薬にも申し訳なかったですし、これは本当に大変な仕事だと思いましたね。

 

 

――― その都市対抗野球の投球が評価されたことでドラフト指名され、東北楽天ゴールデンイーグルスに入団します。ルーキーの時からブルペンに入り、当時は150キロオーバーのストレートが持ち味でした。

 

森原 最初はとにかく社会人時代にやってきたことを出せるかどうかばかり考えていましたね。ただ、ストレートを軸に投げていたんですけど、150キロを出したとしても疲労が重なるとコントロールが乱れて、いとも簡単に打たれてしまう。結局思ったのは、学生時代から僕の持ち味は、コントロールだったということです。球速を出したいと力任せに投げては打たれるという経験をして、絶対にコントロールを丁寧にやらないとダメだと思ったんです。そこに気づけたのは大きかったですね。

 

――― とくに後ろのピッチャーは四球など出せませんからね。

 

森原 コントロールを確かなものにするには練習はもちろん、集中力も重要ですし、繊細な身体の動きも必要になります。単に力を入れて投げるのは楽なんです。けど、コントロールを確かなものにするためには、楽をして投げることはできない。だから今も窮屈な思いをして投げていますよ。自分はなにで勝負しているのか、そこだけは間違えてはいけないということです。

 

――― そして楽天時代は、先発にまわった松井裕樹選手に代わってクローザーに抜擢されました。その時の心境は。

 

森原 今でこそ、9回だろうがどこの回で投げようが「アウトを3つ取る」ということに変わりはないのですが、当時は自分より年下ですが松井裕樹はすごい投手だと思っていましたし、果たして自分に代わりが務まるのだろうかといった不安もありました。また首脳陣からの期待も大きく、これが力みにつながってしまった面もあったと思います。結局打たれてしまい務めを果たせなかったのですが、9回というのを特別視しすぎたのもいけませんでしたし、この経験が後につながることになりました。

 

――― やはり9回を任せられるクローザーは、心境はもちろん、掛かるプレッシャーが違う。

 

森原 もちろん違うは違うのですが、それをどう捉えるかは自分でコントロールできることなので、楽天時代はまだそれができなかったということですね。誹謗中傷などを受けることもありましたが、それも含めて非常に勉強になりました。(後編に続く)

 

書籍情報

『地道が近道 ゆるやかに成長し続ける”成功思考”』

定価:1980円(本体1800円+税)

 

僕がマウンド上で微笑む理由

成功者よりも成長者であれ

 

挫折・誹謗中傷も経験。

日本一の胴上げ投手による「メンタル強化書」

 

「勝ちゃえんよ」

結果を出す人は再現性が高い

まずすべてを受け入れる

真剣に失敗し、次に生かす

数年後をイメージしてゴールから逆算

 

振り返れば、僕の野球人生は決して順風満帆なものではありませんでした。

野球の才能面では、〝凡人〟だったと言ってもいいでしょう

そんな苦しい渦中であっても自分を支えていた言葉がありました。

「成功者より成長者であれ」です。この姿勢はアマチュア時代から変わりません。

思うのは〝凡人〟だからこそ得た感覚です。

 

本書では、僕の『心・技・体』における成長過程や、何を考えて日々生活し、取り組んできたのかを記していきます。

プロの道を目指しているけど自分では平凡だと思っている人はもちろん、社会生活を営む一般の方々にも生きていく上で少しでもヒントになればいいなと思っています。

 

【了】