UNDEROATHが語るバンドの第2章、「進化するか死ぬか」の覚悟、CROSSFAITHとの絆

前作『Voyeurist』から3年と少々、アンダーオース(UNDEROATH)にとって通算10作目にあたる新作アルバム『The Place After This One』が登場した。火だるまになった人間の姿が収められたアルバム・カバーの写真のインパクトも強烈だが、作品自体も激烈さと奥深さ、さらには多様さを兼ね備えている。過去に度重なるメンバー・チェンジと解散、再結成を経ている彼らだが、そうした紆余曲折さえも今では説得力に姿を変えているのがわかる。

そんな彼らが去る2月、たった一回のステージのために久しぶりの日本上陸を果たしていた。CROSSFAITHの主催によるフェス「HYPER PLANET 2025」に出演のためだ。その公演当日にあたる2月2日の午後、幕張メッセのバックステージで、このバンドの顔であるスペンサー・チェンバーレイン(Vo)、アーロン・ギレスピー(Dr, Vo)のふたりに話を聞いた。彼らの口ぶりからは現在のバンドの充実ぶり、新作についての自信のほどがうかがえたが、その直後にステージ上で繰り広げられたライブ・パフォーマンスが、コンパクトな演奏時間ながらも破壊力満点の刺激的なものだったことも付け加えておきたい。

アルバム制作とバンドの現在地

―アルバムの音源を早々に聴かせてもらいました。一聴してアンダーオースだとわかるうえに、多様性にも富んだ作品になっていますね。

スペンサー:嬉しい言葉だな。俺自身もすごく満足しているよ。俺達はいつも誇りをもって制作に勤しんでいるし、自分たちが最高の出来だと思っている音楽が同時に最新の音楽でもあると信じている。しばらくパンデミックなどのために楽しくやれない時期が続いていたけど、バンドはいい状態にあるし、アルバム制作のプロセスも楽しかったよ。

アーロン:ホントに最高だった。こうして20年以上やってきて、今なお新しい音楽を作り続けていられるなんて、マジで幸運なことだと思うしね。

―昨年はずっとツアーが続いていましたよね。いつの間にレコーディングしていたんですか?

スペンサー:そのツアーの開始前だよ。

アーロン:だから去年の4月頃に録っていたし、実は5月には完成していたんだ。

この投稿をInstagramで見る Underoath(@underoathband)がシェアした投稿 「HYPER PLANET 2025」出演時のライブ写真

―前作の『Voyeurist』はコロナ禍の時期に録られたものでしたね。前作と今作とでは、何か具体的な制作上の違いはありましたか?

スペンサー:前作において重要だったのは「自分たちでやった」という点だと思う。(※同作はバンド自身によるセルフ・プロデュース)前々からそれを目指していたけど、それをやりきることがあの局面での俺たちには必要だったと思う。

アーロン:必要性ってものがバンドを次段階へと導いてくれる。長いことやっているバンドならば、一度くらいは自分たちだけの力でやってみるべきだと思う。

スペンサー:俺たちにはそれができる能力も養われていたし、制作を通じて多くのことを学ぶことができた。外部の人間、つまりプロデューサーの意見を聞くことは本当に役に立つということも過去の経験から学んできた。このバンドのメンバーはみんなクリエイティブで素晴らしいアイディアをたくさん持っている。だけど自力ではゴールまで辿り着けないケースもある。プロデューサーのような視点の持ち主がいることで、その楽曲、そのアルバムにとってベストなのはどんなアイディアなのかということを客観的に判断できる。どんなにいい曲でも、それがアルバムに合わないというケースもあるしね。だからプロデューサーがいてくれることで、俺たち自身は音楽そのものによりいっそう集中できるようになる。今回のアルバム制作はまさにそういう感じだった。

アーロン:確かに。実際、音楽作りが苦になるようなことはないんだけど、プロデューサーと一緒にやることで俺たち自身はいわば「ただのバンド」であれるんだ。そういう状況は新鮮だったし、クールだったね。

プロデューサーとの化学反応、変化を恐れない姿勢

―今回のプロデューサーはダネン・リード・レクター。彼と組んだのは初めてのことですよね? キーボードやプログラミングでも貢献しているようですが。

アーロン:そう。彼は俺の友人でね。以前、ナッシュヴィルに住んで活動していた時期があるんだけど、彼とは当時そこで知り合った。すごく俺たちの音楽にフィットするんじゃないかと前々から思っていたんだ。

スペンサー:何が起きたかというと、アーロンと俺は彼と何度か一緒に作業してみたことがあって、そこで試しに曲を作ってみたところ、俺たち3人の相性が最高だってことがわかった。あくまで楽しむためにやっただけのことではあったけど、「他のメンバーもここにいてくれたら良かったのに」と何度も思ったよ。

アーロン:うん。そこで3曲ほど一緒に書いたんだ。

スペンサー:最初の段階から波長が合ったし、他のメンバーたちからも「これはすごい!」という反応があってね。そういった出来事がアルバム制作に入る2~3カ月前にあったんだ。まさに絶好のタイミングだった。今ではすっかりお互い友達同士だし、彼も俺たちのファミリーの一員みたいなものだよ。

アーロン:すごくクールな流れだったね。

―それがアンダーオースの音楽にとって新たな要素のひとつになったともいえそうですか?

スペンサー:そうだね。常に新しい何かを取り入れたいと思っているし。

アーロン:俺たちは同じアルバムを2枚作るようなバンドじゃない。進化するか死ぬか、だと思ってるんだ。わかるだろ? そういう姿勢でいつも自分たちを追い込んできたし、バンドってものはそうあるべきだと思う。そうあれてこそバンドとして健全な状態にあれるんだ。

スペンサー:このアルバムがこんなにも多様性に富んでいるのは、自分たちにとって居心地が良くないかもしれない領域にまで踏み込んで、臆することなくそれに挑めるくらい心身ともに健康な状態にあれたからじゃないかと思う。

アーロン:うん。そして、チャンスは掴むためのもの。「こんなことまでやって大丈夫かな?」と思えるようなことでも実際に挑んでみることが大事なんだ。

スペンサー:特に「All The Love Is Gone」や「Teeth」は、これまでのアンダーオースだったら作らなかっただろうし、自分たちを押し広げようという気持ちがなかったら生まれ得なかった曲だろう。アルバムの中でもその2曲は特に気に入ってる。

アーロン:要するに「伝統的なヘヴィ・ロックとはこういうものだ!」みたいな型に嵌まらずにおくことが大事なんだ。たとえば今作には、メロディックなボーカルとスクリーム以外にも、普通に喋ってるだけのような歌も入っていたりする。この手のバンドでこんなことをやっている人たちなんて皆無なんじゃないかな。

スペンサー:90年代のヒップホップ・アーティストみたいに、サンプリングされた音をリード楽器として使ったりもする。あれもなかなかクールな結果になった。

レーベル移籍、自分たちのやり方を貫く覚悟

―要するにこのカテゴリーにおける王道的な手法のみにとどまるつもりはない、ということですよね。新しいことといえば、今作はMNRK HEAVY(モナーク・ヘヴィ)というレーベルへの移籍後第1弾にあたります。

スペンサー:そのとおり。以前のレーベルとの契約が終わって、そことは再契約したくなかった。動きたかったんだ。同じ会社に長いこと留まるのが得策じゃないケースもある。特に昨今はフィジカルが以前のようには売れないから、どこのレコード会社も大変な状況にある。俺たちとしては売れている他の誰かの火種を借りて売れたいわけじゃないし、リスクを抱えてでもいろいろなことを試してみたくなる傾向にある。

アーロン:その意味では、今は様子見の段階にあるよ。まだアルバムのリリース前だしね。このレーベルと、この先どれくらい長い付き合いになるかはまだわからない。ただ、俺たちは好きなようにやらせてもらえてる。

スペンサー:そうさせてくれない会社とは契約しないよ。アンダーオースはお決まりのことはやらないし、金儲けのためだけに曲を作ることもない。その時期に世の中で起きていることや流行ってることのために、自分たちのスタンスを変えることもない。デフトーンズやナイン・インチ・ネイルズを見れば、その歴史に波と流れがあることがわかる。時期によってはその波に乗ることもあれば、理解されぬままスルーされてしまい10年経ってから「あれは名盤だった!」みたいなことになるケースもある。それは自分たちではどうしようもない部分だから、俺たち自身が心底やりたいことをやるしかないんだ。

アルバム・タイトルの真意、「次の20年」に向けて

―今作に掲げられた『The Place After This One』というタイトルには意味深長そうな響きを感じますし、その意味について深読みしたくなります。実際、どんな意味合いを込めてこのようなタイトルを付けたんでしょうか?

アーロン:人々は人生において、死において、すべてにおいて「次に何が起きるか?」ということに執着してきたと思う。ただ、それを知ることはできない。答えはなく、その代わりに疑問がある。

スペンサー:そう。次のことは誰にもわからない。ある意味すべては偶然によってもたらされる。それこそアンダーオースの第2章も、バンドがひとたび解散したうえで始まったものだ。ただ、今こうして『They're Only Chasing Safety』(2004年発表の第4作)の20周年記念ツアーをしていると、最新作とあのアルバムが俺たちの両極を成しつつも背中合わせの関係にあるような感覚を味わってきた。いわば、あのアルバムの20周年という節目に、アンダーオースの第一章が幕を閉じたかのような感覚でもある。そしてバンドは次の20年に向けて第2章を始めるわけだけど、それがどんなものになるのかは俺たちにもわからない。皮肉なことに俺たちは、知らず知らずのうちに、今の自分たちが迎えている局面に似つかわしいタイトルを付けていたというわけだよ。そのタイトルを決めたのは、各曲の歌詞を書く以前のことだった。いつものことなんだけど、いくつかタイトルの候補が出揃ったところで、どれが一番いいかみんなで意見を出し合うんだ。

アーロン:とはいえ、先にタイトルから決めて、それに沿ったアルバムを作るというわけではないんだ。

スペンサー:うん。だからそのタイトルがアルバムの方向性を左右するわけじゃない。あと、アルバムが世に出てからタイトルが新たな意味を持つようになることもよくあるね。

―なるほど。アルバム・カバーの写真も強烈ですね。人がふたり燃えていますが。

スペンサー:うん。しかもこれはCGでもAIでもないんだ。リアルなんだよ。「All The Love Is Gone」のミュージック・ビデオにもそのふたりが登場するんだけど、彼らは本物のスタント俳優なんだ。ビデオの監督が彼らを雇い、昔のハリウッド映画とかでやっていたように本当に火をつけているんだ。ただ、そういったジャケットやビデオに自分たちの主張が込められているというわけじゃない。そういうことは各方面の担当者に任せているし、提案されたものについて俺たちがクールだと思えばそれをやるというだけのことでね。

アーロン:なかには火を扱う専門のスタントマンもいるらしい。それを何て呼ぶのかは知らないけど(笑)。

―ところでさきほども話に出ましたが、あなた方は長らく『They're Only Chasing Safety』の発売20周年記念ツアーを続けてきました。あのアルバムに改めて向き合ってみて、何か新たな発見などはありましたか?

スペンサー:自分たちが歩んできた道程について祝うのは、気分のいいものだよ。しかもそれをファンと一緒に祝えるわけだからね。ただ、10代の頃に作ったものを演奏するというのは、えらく未熟だった頃の自分たちと向き合うようなことでもあるわけで……。

アーロン:特に歌詞についてはそうだな。

スペンサー:まさしく。あのアルバムの曲たちの歌詞を書いた当時は10代だったし、まだまだ人生経験も足りなかった。だから当時書いた歌詞を歌っても、それが自分の心に響いてこないところがある。あれは、ただただカッコいい音を出したいというガキっぽい衝動に突き動かされて作った作品だったし、そこに必ずしも深い意味があったわけじゃない。19歳の少年に人生の何がわかるっていうんだい? そういうことさ。もちろん当時の自分は全部理解できてるつもりでいたはずだけど、30歳、40歳になってくると、かつての自分が何もわかっちゃいなかったことに気付かされる。だけど俺たちからすれば、あのアルバムをもって本当にバンドが始まったようなものでもあるし、それから20年もの年月を経てきたことを祝えるのは純粋に嬉しいことだった。そういった節目というのは、すべてのバンドが迎えられるものじゃないからね。

アーロン:しかも今の俺たちは、何かしらのムーブメントの一部という感じじゃなく、本物のバンドであれている。

スペンサー:そのとおり。「いかにもWarped Tourに出ていそうなバンド」みたいに見られてるわけでもなければ、メタルコアの枠内でだけ語られるようなバンドでもない。一過性のバンドじゃなく、キャリアを積んだバンドになっているんだ。逆にいえば「ただのバンド」ということでもあるし、そう思えるようになるのはクールなことだと思う。若い時分は「このさき年齢を重ねていって老けていくなんて最悪だ」という考え方になりがちだけど、長く続けてこそ本当の意味でバンドになれるというのも事実だと思う。だから昔よりも今のほうがエキサイティングだよ。だって俺たちはただのガキじゃなくバンドであり、一生ミュージシャンであろうとしてるんだから。

アーロン:そう、この生涯を通じてね。もうプランBはないんだ。

―「もしも上手くいかなかったら」という代案は不要ということですね。あなた方はかつて解散を経ていて、来年には再結成10周年という節目を迎えます。これまでの9年のあいだに、バンドがよりバンド然としたものとして確立されてきたことがよくわかります。

スペンサー:よりバンドらしくなったことは間違いないね。要するに家をリフォームするようなものだったんだと思う。古い壁とかを全部取り壊して、何かを作り直す必要があった。俺たちには本当に強固な土台があったから、それだけは残しながらね。

アーロン:新しい壁、新しい屋根……。そうやってあちこち作り直したうえでペンキも塗り直した。そうやって俺たちは本物のバンドになったんだ。

「生と死」のアルバム、CROSSFAITHとの絆

―そんな今のバンドの状態が、今作には反映されているわけですね。いくつかの楽曲について訊かせてください。アルバムの幕開けを飾っている「Generation No Surrender」はオーディエンスを巻き込む力が強そうな曲。タイトルにもインパクトがありますが、歌詞的にはどんなことを歌っているんでしょうか?

スペンサー:タイトルそのままさ。ちょっと皮肉っぽい内容ではある。同時多発テロとかパンデミックとか、俺たちはさまざまなことを経験してきた。俺たちが生まれた時点ではインターネットなんて普及していなかったけど、今では携帯電話ですべてが事足りる。

アーロン:必要なものすべてがバックパックに収まるんだ。

スペンサー:もしも今、何かが起きたなら、俺たちは自己判断でそれに対処していくだろう。というのも、ことに俺たちの国の政府からはずっと長きにわたり嘘をつかれてきたからね。真実なんてどこにもなかった。だけど今の俺たちは、もしもこの世の終わりが来ると告げられたとしても、そこから逃げずに立ち向かっていくと思う。俺たちにはそれくらいの力が養われているはずなんだ。

アーロン:同感だな。今の世の中、ニュースのサイクルもそうだけど、何もかもがとても速い。誰かに何かを言われて頭を下げて従うような状況にはないんだ。依然としてそういうスタンスの人たちもいるだろうけど、俺たちはそういうタイプじゃない。

スペンサー:まさしく。権力的な立場にある人たちが何を言おうが、俺たちにはもう信じられない。終末論的な仮定のシナリオにはもうウンザリしてるんだ。実際そういうクソみたいなことは、もう嫌というほど経験してきたからね。パンデミックの時期には「家から出ずにじっとしていろ」と言われた。仕事もなかった。何をすることも許されなかった。

アーロン:ツアーすることで生計を立てている人間にとっては危機的な状況だった。だけど今の俺たちは「何でもかかってきやがれ! 俺たちは準備万端だ」という気構えであれている。この曲で歌っているのはそういうことだよ。

―「Survivors Killed」についてもヒントをください。これまた強烈なタイトルですが。

アーロン:それについても、まさにタイトルそのままの内容だよ。そのストーリーは中毒体験に由来するものだ。実際、それによって多くの人を失ってきた。

スペンサー:あの曲の冒頭には〈クリーンになってから7年。2023年だけで8人の友人が同じ理由で死んだ〉という一節がある。アメリカでは今、フェンタニルという合成麻薬が氾濫していて、多くの人が命を落としている。薬物依存者にとっては恐怖でしかないだろうね。俺自身、13年間にわたり中毒状態にあった。バンド内でも話すことがあるんだ。「自分がたまたまいいタイミングで沼から抜け出せたからといって、そこに居続けている人たちより優れているというわけじゃない。そこで逆に罪悪感をおぼえることは?」みたいなことをね。この曲にはとても深みがある。歓びに満ちた曲でもあると同時に、内面的な悲しみ、精神的な崩壊がその裏側にはあるんだ。

アーロン:聴き終わったあとで、「ああ、俺たちは本当にそういったものを噛み砕いてきたんだな」と気付かされるんだ。

―そういった話を聞いていると、本当に”生と死”のアルバムなんだなと感じさせられます。ところで今回は、日本のCROSSFAITHの主催によるフェス出演のための来日だったわけですが、どういった経緯でこの話が決まったんでしょうか?

アーロン:彼らの側から声をかけてくれたんだ。彼らとは何年も前から知り合いだし、フェスやショウで何度も一緒になってきた。

スペンサー:彼らを引き連れてヨーロッパ・ツアーをやったこともある。結構長い付き合いになるんだ。

アーロン:10年以上になるんじゃないかな。彼らをアメリカに来させようとしたことも何度かあったし、同時に彼らの側もずっと、俺たちをこっちに呼び寄せようとしてくれていたんだ。だから彼らのことはアンダーオースのファミリーの一員だと思っているよ。

―そうした繋がりによって久しぶりの日本上陸が実現したことを嬉しく思います。ただ、次は是非、単独公演も観たいところですし。今作『The Place After This One』のツアーでの帰還を期待していますよ。

スペンサー:今年中にもう一度来られたりしたら最高だよね。そのためには、誰と話をつければいいんだ?(笑)

アーロン:俺たち自身、1日も早く戻って来られることを期待してるよ。だからそれを実現させるためにも、ニュー・アルバムを聴いてくれ(笑)。

アンダーオース

『The Place After This One』

発売中

再生・購入:https://underoath.ffm.to/tpato