luvが海外で大躍進、シティポップ新世代の世界進出を象徴する3つのアクション

先日発表されたRolling Stone Japanの「Future 25」にも選出された5人組、luv。メンバー全員2003年生まれ、結成1年でメジャーデビューを果たし、2月に1stミニアルバム『Already』を発表したばかりの新世代バンドだが、早くも日本国内にとどまらない活動と可能性を見せ始めている。

1. アジア各国で巻き起こるバズ

まずは『Already』からのリードトラック「Send To You」のチャートアクションから見ていこう。「銭湯ダンスチューン」として日本でもヒットを記録したこの曲は、TikTokやInstagramでのバズをきっかけにアジア各国のSpotifyバイラルチャートにランクイン。香港で2位、台湾で4位にランクインした他、韓国やシンガポールでも上位に入っていて、すでにSpotifyでの再生数は100万回に迫る勢い。フィリピンの人気ガールズグループBINIのメンバーであるCOLETが楽曲をポストしたことも話題となった。1970〜80年代シティポップの世界的なブーム、さらにはluvも影響を受けている2010年代の日本のバンドがすでにアジアでの人気を確立していることもあり、「シティポップ新世代」として、luvに大きな注目が集まっているように感じられる。

https://t.co/HHDLMC3lvg — C O L E T (@bini_colet) February 22, 2025

特に台湾での人気は非常に高く、すでにプレイリスト「Viral Hits Taiwan」のカバーを飾り、Spotifyのデータでは日本についでリスナー数が多いのも台湾。昨年発表のメジャーデビュー曲「Fuwa Fuwa」がすでに台湾のバイラルチャートで3位を記録し、「好人紀行」のミュージックビデオを台湾で撮影した際にプロモーションを行い、今年の1月には初の海外公演を台北で成功させるなど、やはり実際に現地に行っていることが大きく関係しているはずだ。近年日本ではそれほど知名度が高くないアーティストでも、TikTokなどを契機に海外でバイラルヒットを記録するケースは珍しくなくなったが、そのバズを一過性のもので終わらせず、いかに次に繋げるのかが重要であり、「Fuwa Fuwa」に続いて「Send To You」がさらなるヒットを記録しているluvの状況は理想的なものだと言えるだろう。

2. SXSWでの熱演にアメリカの観客も大興奮

アジアで楽曲が広まっている一方で、luvは3月に米テキサス州オースティンで開催された世界最大規模の音楽見本市「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に参加し、アメリカでの初ライブも行った。今年の「SXSW」は近年の世界の音楽地図の変化を反映する形で非英語圏のアーティストの割合が増え、日本からも多くのアーティストが渡米。過去にそれぞれ「SXSW」でショーケースを開催した「TOKYO CALLING」と「INSPIRED BY TOKYO」がタッグを組み、5月に授賞式が開催される「MUSIC AWARDS JAPAN」の主催でもあるCEIPA(一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会)とTOYOTA GROUPによる「MUSIC WAY PROJECT」のサポートでショーケースを開催(2024年の「Future 25」に選出されたVivaOlaらが出演)するなど、日本からもこれまで以上の注目を集めた。

「SXSW」ライブハウスElysiumでのライブ写真(Photo by David Brendan Hall)

luvはRivian Parkの野外ステージで開催され、各国からのアーティストが出演した「International Nights」と、ライブハウスElysiumで開催され、日本のアーティストが出演した「Presented By Sounds From Japan」という二つのショーケースに出演。現地でのライブ映像を見せてもらったのだが、アシッドジャズ由来のダンサブルなナンバーを軸に、メンバーのソロも交えながらの熱量高いステージを披露して、終演後にはメンバーに写真やサインを求める観客が楽屋出口に集まっていたという。個人的に特に印象的だったのが、スティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」と「はじめてのチュウ」のマッシュアップアレンジ。僕が昨年日本でライブを見た際もキャンディーズの「年下の男の子」をカバーしていて、彼らはこういった往年の日本のポップスを自分たちなりにカバーすることを楽しんでいる。「真夜中のドア」や「プラスティック・ラブ」だけでなく、シティポップブームで多くの日本語楽曲の知名度が高まっている中、こうした彼らのカバーは海外におけるキラーコンテンツにもなりうる可能性を感じた。

Photo by David Brendan Hall

3. 日本代表として『Spotify on PlayStation』に大抜擢

『Already』のリリースからちょうど1カ月後にあたる3月26日には早くも新曲「Rear」を発表。ピアノとゴスペルコーラスをフィーチャーし、『Already』でも示されていた「ネオ」ではない、よりオーセンティックなソウルに対する愛情を感じさせるこの曲は、「Spotify on PlayStation」のキャンペーンソングに起用されている。神奈川県にある「生命の星・地球博物館」で撮影されたプロモーションムービーには、メンバーの演奏シーンに加えて、「モンスターハンター」シリーズの最新作「モンスターハンターワイルズ」をプレイするシーンも登場。このキャンペーンに付随する形でプレイリスト「CITY POP from TOKYO」のカバーもluvが飾っている。

PlayStationは昨年12月より30周年記念プロジェクト「Project : MEMORY CARD」でYOASOBIとコラボレーション。昨年末に発表されたSpotifyのランキング「海外で最も再生された国内アーティスト」で、1位のYOASOBI、2位のAdoに続いて、3位がアトラスサウンドチームだったことも記憶に新しい。やはりゲームおよびゲームミュージックは日本を代表するカルチャーとして世界へと発信されていて、昨年20周年を迎えた「モンスターハンター」シリーズも世界的な知名度を誇る。〈ぼくらが今 遊ぶ廻る 音ならして 時差変えてく〉〈世界のだれかのもとへ おくりたいの〉と歌う「Rear」は、「世界進出」を大々的に掲げるのではなく、あくまで等身大で、遊ぶように音を届けていく、luvから世界へのラブレターのような一曲だ。

国内では3月20日からスタートした初の全国ツアー「Already Cruisin」が全公演ソールドアウトを記録し、4月以降は大型フェスにも多数出演と、日本と海外の状況がどちらも近しいスピード感で広がっているのも珍しい。「世界で聴かれる日本の音楽=アニメタイアップ」という図式が徐々に変わりはじめ、多様性を増す中にあって、まだアニメ楽曲を手がけていないluvがすでに国内外でこれだけ注目され、実績を残し、可能性を感じさせるということは、2025年ならではの「現象」と言えるのではないだろうか。

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Photo by David Brendan Hall

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「Rear」

配信:https://luv.lnk.to/Rear

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『Already』

再生・購入:https://luv.lnk.to/Already