Hump Backが語る、第二章の幕開け、産休・育休を経たセルフタイトルへの覚悟

Hump Backの最新アルバム『Hump Back』が、3月26日にリリースされる。今作は、メンバー全員が同時に取得した約1年半の産休・育休を経てリリースされる復帰後一作目のアルバムであり、収録されるほとんどの楽曲が、出産や子育てといった大きなライフステージの変化の中で制作されたものである。

今回のメンバー3人へのインタビューの中で語られているように、彼女たちは、ライブシーンの最前線から離れていた間も、復帰後を見据えて新しい楽曲の制作を続けていて、そして、渾身の楽曲が束ねられた今回のアルバムに満を持してセルフタイトルを冠した。Hump Back第2章の幕開けを高らかに告げる今作には、出産や子育てと並行しながらも前進し続けてきた3人の懸命な歩みの跡が、何より、彼女たちが抱くロックバンドとしての気概と自信が深々と滲んでいる。このインタビューが、今作の真髄を紐解く一助になれば嬉しい。

―今回のアルバムには、期間限定でサブスクで配信されていた「明るい葬式」「3036」を含む全11曲の新曲が収録されています。はじめに、それぞれの曲が制作された時期について教えてください。

林萌々子(Vo・G):基本的には、産休・育休に入ってから作った曲ですね。ただ、「もしも僕が」はずっと前からあった曲で。

ぴか(B・Cho):あと、「十七歳と坂道と」は、ももちゃんが高校時代からありました。

―11曲中9曲が産休・育休中に制作された曲であることを踏まえると、今のバンドのモードを色濃く表したアルバムなのだと言えると思います。

林:半分結果論ではあるんですけど、残りの半分は、やっぱり1年半お休みをもらってるんで、曲はなるべく作れるだけ作って帰らないといけないなっていう思いはありましたね。やっぱり、それぞれ子育てが初めてで、どれだけ時間を取れるか本当に未知数だったので、どこまでいけるんやろうっていう気持ちを抱えつつの挑戦って感じで。いけるだけいってみよっかって。

ぴか:とりあえず、ガンガン曲作ってこうぜみたいな感じでしたね。

―ライブこそできないものの、産休・育休中も、皆さんそれぞれ、常に曲作りのことが念頭にあったと。

林:そうですね。むしろ曲作りに追われてたぐらい。オムツを変えながらも、頭にはずっとぐるぐるとありました。

―では、お休みの間も、3人同士でのコミュニケーションの頻度は高かったですか?

ぴか:はい。けっこうやり取りしてたよな。

林:うん。だいぶ。今までバンドをガツガツやってた時以上に密に連絡を取ったりしてました。必要なことから、必要じゃないことまで、コミュニケーションはしっかり取れた期間やと思います。

―偶然ではあると思うんですけど、皆さん、ちょうど同じタイミングでライフステージが大きく変わって、だからこそお休み中も、3人で歩幅を揃えながら同じ方向を向いて前進することができたのではないかと想像しました。

林:そうですね。例えば、もし1人だけが子供を産んでいたり、逆に誰か1人だけが子供を産んでいなかったりしたら、きっとだいぶバランスは変わってただろうなって思います。っていうのも、やっぱ子育てって、本当に想像以上に時間を取られるんですよね。その中で、もし私一人だけ子供を産んでたっていう状況やったら、たぶんもうちょっと甘えてたと思うんですよ。「子育てで時間取られすぎて、ごめん、ギター弾かれへんかった。」とか言っちゃってたかもなんですけど、3人が同じ状況の中で、夜中1時とかに、「新しいベースフレーズ、考えました」とか、「ドラムフレーズ、ここ、こう叩きました」とか送られてくるんで、「あ、サボれねえ」「言い訳できん」ってなって、それがすごい良いプレッシャーやったし、逆に、もう寝ながらギター弾いてるような状況でも、「みんなも今頑張ってんねや」と思ったら、頑張れたりして。

ぴか:分かるわ。スタジオとかでさ、2人がめちゃくちゃ弾けてるやんとか、叩けてるやんとかさ、焦るねん。めっちゃ分かる。

美咲(Dr・Cho):もう会うたびにめっちゃ気が引き締まるというか。

ぴか:やっぱみさちが一番大変やん。ドラムって、スタジオじゃないと叩かれへんからさ。

林:うん、ほんまにすごいと思う。

美咲:ぱっと練習できないのが難しいところではあるんですけど、時間取りつつやってますね。

―産休・育休に入る前と比べて、作曲の仕方に変化などはありましたか?

林:もうめちゃめちゃ変わりました。そもそもうちら、もともとめちゃくちゃアナログな曲の作り方してたんですよ。スタジオで集まって、私が2人の前で「よしいくで」って弾き語りして、それをみんながiPhone向けて録音して、で、「ここはドラムがガーっていう感じで」とか、「ここはベースがめちゃ動いて」とか、ほんま全部アナログで伝えてやってて、それはそれで良かったとは思うんですけど、こういう状況になって、ちょっと切り替えていこうって話になって。みさちも全くパソコンとかできひんかった中で打ち込みを習得してくれて。

美咲:産休中に、友達にDTMを教わってから、今は曲作りはずっとパソコンでやってますね。DTMで、トラックごとに分けて楽器の音を聴くようになってから、ドラムのフレーズを練る時、今までより、もっとギターに寄り添わなとか、もっとベースに合わせたいなって、すごい考えれるようになりました。今までやったら自分が叩ける範囲でしかフレーズを考えられてなかったんですけど、今は、自分が叩ける叩けへん関係なしに、とりあえず理想のフレーズを考えて作って、その後ひたすら練習してって感じです。

ぴか:私も何曲か作っていて、今までは、ベースでルートを弾いてその上に歌を重ねながら作るみたいな感じやったんですけど、今後もっといろいろな曲を作っていきたいなって思った時に、マネージャーのシミちゃんがギターを貸してくださって、それから少しずつ、ギターでコードを1個ずつ弾きながら曲を作るようになっていきました。とは言え、やっぱりまだまだちょっとしか弾けないんですけど、これまでと曲作りにおけるイメージの広がり方が全然違いますね。

―子育てと並行して曲作りをすること自体が大きなチャレンジだったと思うのですが、そこにさらに各々の新しい挑戦が加わっていた、というのはすごく驚きでした。

林:合わせたわけじゃないんですけど、たぶん3人とも、それぞれが絶対ここでパワーアップして帰らなあかんみたいな気持ちがなんとなくあったと思います。というのも、15年ぐらいずっとバンドをやってきた中で、音楽シーンの移り変わりの速さっていうのはやっぱりずっと感じていたんですよね。その中で自分たちは、ライブハウスの前線でやってきたっていう自負がある一方、1年半空くってどういうことなのかっていうのも逆によく分かってたんで。その中で、じゃあライブ再開しますってなったとて、次々と新しいアーティストやバンドが出てくる移り変わりの速い音楽シーン、ライブハウスシーンの流れの中で、ただ戻ってくるだけじゃもうダメだっていうこともすごく分かってたのもあるし。

美咲:やっぱ帰ってきて、産休・育休前より、めっちゃかっこよくなってるやんって思われたいなっていうのは、すごい強く思ってました。そのために、できることを、少ない時間の中でしっかりやろうって思ってました。

林:あともう1つは、単純に音楽とかライブハウスからちょっと離れた状況になって、やっぱライブハウスでライブしたいとか、音楽って楽しいとか、そういう気持ちを再確認できて、改めてバンドを楽しむ体制が整ったというか。それが、自分たちの向上心に繋がったと思います。

ぴか:私も、めちゃくちゃライブしたいと思ってましたね。それこそ、けっこう負けず嫌いというか、とにかくベースいっぱい練習して、曲もたくさん作って、とにかく産休・育休中も、ずっと音楽に触れていたいみたいな気持ちでした。

―今回のアルバムの収録曲について、それぞれ具体的にお話を聞かせてください。例えば、1曲目の「オーマイラブ」は、歌詞を踏まえると、明確に、新しい家族が増えたからこそ生まれた曲なのだろうと想像しました。

林:ずっと前から、子供が生まれた時、自分はどんな曲を書くんやろうってすごい楽しみにしてたんですけど、いざ書き出すと、実際はそんなに変わんなくって。ですけど、「オーマイラブ」は、ほんまにね、今このタイミングだからこそ書くことができた曲なんやなと思います。

ぴか:この曲、すげえ林節やなって思って。アルバムとかシングルを出すにあたって、1曲は必ず、The Hump Backみたいな曲があるんですけど、今回はそれがこの「オーマイラブ」やな、みたいなのありますね。

―野暮な質問になってしまうかもしれないですけど、林節を、ぴかさんはどのように定義していますか?

ぴか:超良いメロディー。この曲がアルバム制作の最後にできた時、これ求めてましたって感じでした。

林:この曲ができる前まで、なんか全曲いいけど、もう1発、Hump Backど真ん中の曲、これぞ”The Hump Back”と言えるような曲が欲しいなっていう話をずっとしてたんですよ。

ぴか:で、「オーマイラブ」ができたことによって、なんか全てうまくまとまった感が出てきて。

―「ヤドカリ feat.GIMA☆KENTA(愛はズボーン)」には、フィーチャリングとして、林さんのパートナーのGIMA☆KENTAさんが参加していますね。

ぴか:これは私が作った曲なんですけど、誰が男性の方をフィーチャリングしたいなって思いながら書いてて。フィーチャリングする相手としては、尻に敷かれている男性のイメージがあって。で、ちょっと探してたんですけど、一旦ちょっと、ももちゃんの旦那さんのGIMA☆KENTAさんに仮歌を入れてもらうかってなって。その仮歌を聴いて、うんうん、これだってなって、そのままお願いして。

―林さんとしては、当時のやり取りを振り返ってみていかがですか?

林:なんか、騙されたと思って(笑)。最初、男性の声のイメージっていうことで、じゃあうちの旦那に歌ってみてもらうわっていう感じだったんですけど、正式にフィーチャリングをお願いするって話になった時に、歌詞の中身がけっこう変わっていて。最初の段階では、男性の歌声が入っているのって一部分だけやったんですよ。それが、レコーディング数日前に、ピカから急に「ちょっと男の人が歌う部分増やしてみた」って来て、そしたら、もう最後がめちゃくちゃ掛け合いになってて。

ぴか:仮歌を聴いて歌詞を変えたくなっちゃうのって、けっこう作曲家あるあるやと思うんです。

林:超カップルという感じの歌詞で。ただ、ここはもう、恥ずかしがるほうが恥ずかしいなと思い、堂々とレコーディングで歌わせて頂きました。

―ライフステージが大きく変わったタイミングで制作された今回のアルバムに、こうして夫婦の掛け合いの曲が入るのも、とても素敵だと思いました。

ぴか:偶然やけど、必然だったかもしれないですね。

―今回のアルバムの最後には、先行で、期間限定でサブスクで配信されていた「明るい葬式」が位置付けられています。タイトルはもちろん、〈ロックンロールであの子を食わせてゆくのだ〉〈とにかく生き尽くすのだ〉など含め、渾身のパンチラインが詰まった一曲だと思いました。

林:もともと、「明るい葬式」っていうワードは、自分の中にずっとあったんですよね。そのワードを思い付いたきっかけとしては、3年前ぐらいに大学時代の友達が事故で急に死んでもうて。そいつ、もうすごい明るい奴やって。朝とか、「お、その髪型いいやん」「え、その服めっちゃ可愛いやん」みたいに、みんなのことを褒めながら歩いてるみたいな奴で。そんな奴が、急にぱって死んでもうて。で、お葬式になりましたって時に、なんか暗い感じで行きたくないなって思いながら向かったんですよね。他の友達もけっこうそういう感じやって。「もう、あいつさ」みたいな感じのテンションでお葬式を迎えたことをよく覚えていて。私も、何年後になるか分からへんけど、もし自分のお葬式があるってなった時は、なんか、誰にも泣いてほしくないなって思ったんですよね。友達とかが自分の葬式で泣いてる姿を想像したらすげえ嫌で。そう思った時に、「明るい葬式」っていうワードが思い浮かんで、いつかこれで曲を書こうって思ってて。で、やっと、なんとなく自分の中で歌詞が思い浮かび始めて形になったっていう感じですね。私の中でこの曲は、なんやろ、タイトルはちょっと物騒ですけど、すごい前を向いた曲というか。先ほど挙げてくださった〈ロックンロールであの子を食わせてゆくのだ〉という一節は、子供を産んでから付け足したような気がします。

ぴか:歌詞全体がパンチラインですよね。〈散々かいた恥を 日記に挟もう/見返して何度でも酒を飲もう〉とか。あと、私がこの曲の中で一番好きな歌詞が、2番の〈大したことない才能 だから怠惰はダメだ〉で、すごいパンチラインやなって。ももちゃんは、自分のことを思いながら書いたんかなって思うんですけど、なんかそれが自分にも刺さるというか。

―最後に、今回、このタイミングで制作したアルバムに、セルフタイトルを付けた理由について聞かせてください。

林:きっかけはぴかやったんですけど、ずっと、いつかセルフタイトルでアルバムを出したいっていう思いを持ってくれていて。今ってなったのは、やっぱり一番大きいのは、このタイミングだからだったのかなって。みんな出産を経て、全てにおいて、このタイミングのアルバム制作はスペシャルやったんですよね、自分たちにとって。で、そうやって作っていく中で、自分たちがすごい納得できる楽曲ができたし、バージョンアップした楽曲もできたし、今までどおり今まで以上のThe Hump Backの曲もできたし、っていう中で、Hump Back第二章が始まります、みたいな感覚が自分たちの中でやっぱりあって。セルフタイトルのアルバムを出すという覚悟が今の私たちにはありますよ、っていう意思表示の意味も含めて、このタイミングで付けました。

ぴか:私の中で、このアルバムは、『Hump Back』と書いて人生と読みます。ルビ振っといてください(笑)。

―バンドにとって、満を持してのセルフタイトルアルバムでもあり、そこにさらに3人それぞれの人生の重みが乗っていると思うと、改めて、今作に込めた皆さんの想いの大きさが伝わってきます。

林:これで味をしめて、次のアルバムが『Hump Back 2』になるかも。

ぴか:全然それもありえる。

―いよいよ春フェスシーズンに突入し、3月23日(日)には、「ツタロックフェス2025」への出演を控えています。きっと、復帰後のHump Backのライブを初めて観る人も多いと思います。

林:復帰後、初のフェスになるので、めちゃ楽しみです。ケータリングのご飯とかもいっぱい食べて、もうできる時間全て使って全部やり切ります。

<リリース情報>

Hump Back

3rdフルアルバム『Hump Back』

2025年3月26日(水)リリース

定価 ¥2750(税抜価格¥2500)

=収録曲=

1. オーマイラブ

2. 3036

3. ロケンロ

4. coda

5. もしも僕が

6. 十七歳と坂道と

7. woman

8. ヤドカリ feat.GIMA★KENTA(愛はズボーン)

9. たね

10. イスタンブール

11. 明るい葬式

<ライブ情報>

Hump Back pre. ”打上シリーズ2025”(全てワンマン公演)

"打上判所"

2025年4月5日(土)Zepp Osaka Bayside

"打上羊肉"

2025年4月11日(金)Zepp Sapporo

"打上手羽先"

2025年5月1日(木)Zepp Nagoya

"打上明太子"

2025年5月16日(金)Zepp Fukuoka

"打上文字焼"

2025年5月29日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)

前売りチケット:5000円

前売りU-18チケット:3500円

チケットURL:https://eplus.jp/hb/

Vポイント presents ツタロックフェス2025

2025年3月22日(土)23日(日)幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

主催:CCCミュージックラボ(株)/ライブマスターズ(株)

企画:CCCミュージックラボ(株)

制作:ライブマスターズ(株)

運営:(株)ディスクガレージ

特別協賛:CCCMKホールディングス(株)/ 三井住友カード株式会社

問い合わせ:info@livemasters.jp

【3月22日(土)DAY1】

indigo la End / オレンジスパイニクラブ / KANA-BOON / カネヨリマサル / CLAN QUEEN / Kroi

KOTORI / Chevon / SHISHAMO / トンボコープ / NEE / にしな / ブランデー戦記 / マルシィ / ヤングスキニー / WurtS

【3月23日(日)DAY2】

アルステイク / シンガーズハイ / SKRYU / Chilli Beans. / This is LAST / TETORA / Novelbright /

ハルカミライ / Hump Back / ハンブレッダーズ / FOMARE / プッシュプルポット / bokula. / moon drop / reGretGirl / レトロリロン / ガラクタ(Opening Act)

専用URL:https://eplus.jp/tsutarockfes/

1DAY券各日 U-18:9,300円(税込)/一般:11,800円(税込)

2DAYS券一般:22,000円(税込)