北野氏が手掛けてきた作品は、『フェイクニュース』では、真偽不明のSNS投稿をきっかけにした真実を追究する記者の奮闘を描き、『フェンス』では米兵のレイプ事件から沖縄が抱える社会問題を浮かび上がらせるなど、今作も含め社会問題をドラマの中で描く“作家性”が見える。毎回どのような思いを込めているのだろうか。

「元々NHKで記者をやっていたからかもしれないのですが、世の中がどうやったらより良くなるのか?ということが企画の発想としてまずあります。報道はニュースなので、実際に物事を動かす力があると思っています。一方で、テレビドラマは人の心を動かすので、影響力がすごくあると思っていまして。俳優部の力、脚本家の力、スタッフの力で、自分の想像を超えていく瞬間があります。みんなの力で世の中にとって必要とされる物語を作っていけると思っているので、毎回そういったモチベーションで臨んでいます」

そう話すように、北野氏はNHKからフジテレビのドラマ部へ移籍したという異色の経歴。その転職の理由を聞いてみると、「昔からフジテレビのドラマが好きだったんです。『北の国から』や『早春スケッチブック』、『白い巨塔』もそうですし、岡田(惠和)さん脚本の『彼女たちの時代』や、坂元(裕二)さん脚本の『わたしたちの教科書』に『それでも、生きてゆく』と、幅広いジャンルのフジテレビドラマを見て育ってきました。あとはプロデューサーそれぞれの色が出ていて、“その人が作るもの”が分かる、面白いドラマを作る土壌がある会社だと思っていました。そんな中で、連ドラを作る機会をいただけるというので移籍しました」と打ち明けた。

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最終回で納得できる「日本一の最低男」「私の家族」の意味

最終回の見どころを聞いてみると、「今まできっと皆さんが疑問に思っていたタイトルの“日本一の最低男”って何だ?とか、サブタイトルの“私の家族”って誰の目線?だとか、主題歌がなぜCircus Funkなのかなど、そういうことが全部、最終回を見ていただいたら納得いただけると思います」と予告。

また、「選挙編」でクライマックスへ突入したことについて、「今起きている社会情勢や政治状況をニュースのようなスピード感でタイムリーに取り込んだものになっていると思います。とはいえ、今の選挙戦では現実の方が想像を超える出来事が起きていて、現実がフィクションの先をいっているように見えてしまうところがあるので、そうした現実をどう取り込んで、物語の力で超えていけるかみたいなところは意識しました」という。

最終回の脚本を担当するのは蛭田直美氏(大石哲也氏と共同)。第4話の一人で生きると決意した都(冨永愛)のカッコよさや、第6話のひまり(増田梨沙)の実父(奥野瑛太)が登場する“お父さんとパパ”の物語など、蛭田氏の執筆回は特に光るものがあった。

北野氏は「第9話から最終話までの選挙編も蛭田直美さんに書いていただいたんですが、僕はこれまでNHK時代に日本でトップクラスの脚本家の方々と一緒にお仕事させていただいたんですけど、蛭田さんはその方たちとも並ぶ、これからの日本の脚本家界を背負われる方だと思っています。そんな蛭田さんの新境地である最終回もぜひ見ていただきたいです」と太鼓判を押す。

ただのホームドラマであれば粗方のハッピーエンドは想像できるのだが、今作はその上で社会を斬る「選挙編」でクライマックスを迎えている。一体どんな結末を迎えるのだろうか。脚本家・蛭田氏の筆致、そして北野プロデューサーが注いだ熱い思いとともに最終回を期待したい。

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