卒業シーズン真っただ中の今、商店街やショッピングモールには新生活のスタートにまつわる商品が売られている。そんな新たな一年の始まりに見たくなるのが、2016年に放送された『HOPE ~期待ゼロの新入社員~』(フジテレビ、FODで配信中)。

同作は現在ではドラマ枠のないフジの日曜21時台で放送されていた。ここは日本最長の歴史を持つドラマ枠TBS『日曜劇場』がドンと構える厳しい時間帯。そのため『HOPE』の放送時も、寺尾聰、多部未華子、新田真剣佑、村上虹郎、北村匠海、仲野太賀らが出演した『仰げば尊し』の陰に隠れて目立たなかった。

しかし、同作は見た人の満足度が高く、「隠れた名作」として称えられている。主演の中島裕翔は現在、『秘密~THE TOP SECRET』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中というタイムリーさもあり、ここでその魅力をピックアップしておきたい。

  • 『HOPE ~期待ゼロの新入社員~』 (C)CJ E&M CORPORATION. (C)FujiTelevision/KyodoTelevision

    『HOPE ~期待ゼロの新入社員~』 (C)CJ E&M CORPORATION. (C)FujiTelevision/KyodoTelevision

「一般企業の会社員」は希少な設定

簡単なあらすじをあげておくと、主人公は「囲碁のプロ棋士になる」という夢を挫折した一ノ瀬歩(中島裕翔)。目標を見失いアルバイトに明け暮れるだけの日々を送る歩に、総合商社・与一物産の採用試験というチャンスが舞い込み、1か月間のインターンシップを受けることになる。営業3課に配属された歩はその働きぶりと最終プレゼンでどのように入社をつかみ取り、いかに社員として活躍していくのか……。

2010年代に入ったあたりから「普通の会社員」「一般企業」を扱った連ドラが減り、医師や弁護士を筆頭に専門性の高い職業をフィーチャーした作品が大半を占めるようになった。だからこそ当作の「舞台は一般企業で、主人公は普通の会社員」という希少性は際立っている。

ストーリーの軸は“歩の成長”であり、感動のポイントは“社内の人間関係”。

歩は囲碁に打ち込んできたため、仕事にかかわる基礎知識がなく、コピーや電話応対すらできないところからスタート。高卒のため同期からも距離を置かれ、課長からは「明日から来なくていい」と非情宣告されてしまう。

歩はそんな逆境から採用をかけて日々の業務やプレゼンに挑んでいくが現実は甘くない。「踏ん張れ」がキーフレーズになっていたように、「いかに困難を乗り越えていくのか」という奮闘が丁寧に描かれた。いい意味で「ビジネス上のリアルを逸脱しないために、特別な出来事は起こらず、安易に恋愛要素を挟まなかった」ところも名作と言われるゆえんだろう。