子宮頸がんは若い世代が多く発症していることで知られています。その一方で、たいていの場合ウイルス感染によって引き起こされるため、ワクチンで予防することができます。

将来の妊娠や出産にも影響を及ぼしやすいため、予防と早期治療が大切です。子宮頸がんを防ぐために、またかかったとしてもできるだけ早く治療に取り組めるように基本的なことを知っておきましょう。

■子宮頸がんはどんな病気?

子宮頸がんとは、子宮の入口である「子宮頸部」にできるがんです。毎年1万人ほどの女性がかかっていて、約3,000人が亡くなっています。診断の5年後の生存率は76.5%であり、早めに見つかれば見つかるほど命を救える可能性があります。なお、30代までのうちに子宮頸がん治療によって子宮を失い、妊娠できなくなる女性は年間約1,000人います。

<子宮について>

骨盤内にある臓器で、妊娠中に胎児を育てるための器官。大人の女性の場合、大きさは鶏の卵くらいです。「子宮体部」と「子宮頸部」に分けられます。

・子宮体部
袋状になっていて、妊娠すると胎児をその中で育てる臓器です。 なお、ここにできるがんは「子宮体がん」と言い、子宮頸がんとは区別されています。

・子宮頸部
子宮の入口で、子宮体部と膣の間にあります。 筒状になっていて子宮体部に近い部位と、膣の中に突き出た部位に分かれています。

<子宮頸がんの原因>

たいていの場合、子宮頸がんは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスに子宮頸部が感染し進行することで発生します。HPVはよくあるウイルスで、性的接触をすることで男女ともに感染します。そのため、性的経験がある女性はたいてい、一度は感染すると言う説もあります。なお、喫煙の習慣がある場合も発生するリスクが高まります。

<子宮頸がんの進行>

子宮頸がんは次のように発生し、進行していきます。

1.子宮頸部がHPVに感染する
感染した人のうち約10%に長期間感染が続きます。

2.CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)が発生する
1の感染が自然治癒しなかった人のうち、一部の人にがんになる前の状態として「CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)」「AIS(上皮内腺がん)」にかかります。

3.2が進行して子宮頸がんになる
CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)が数年かけて進行し、子宮頸がんが起こります。

子宮頸がんがさらに進行すると、子宮頸部の周りの組織に拡大したり、骨盤内のリンパ節や他の臓器に転移することがあります。

■子宮頸がんの症状

<子宮頸がんになる前のCIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)の症状>

この時期には症状がありません。膣に近い場所にできた場合は婦人科検診で比較的発見しやすいですが、筒状になった奥の部位にできると見つけにくくなります。

<子宮頸がんの症状>

初期ではほぼ自覚症状がありません。 進行するにつれて、次のような症状が起こるようになります。

・月経中以外や性交時に出血する
・茶色~濃い膿のような、臭いのするおりものが出る
・下腹部や骨盤、腰が痛む
・尿や便に血が混じっている
・下肢がむくむ

<症状があったらすぐ受診を!>

子宮頸がんは早めに見つかれば治療しやすく、予後もいいのが特徴です。その一方で進行して拡大・転移すると治療は難しくなります。普段から予防を心がけるとともに、前に挙げた症状があったら、命を守るため早めに婦人科を受診しましょう。

■子宮頸がんの予防方法

子宮頸がんの予防には、ワクチン接種がおすすめです。

<HPVワクチン接種について>

子宮頸がんのほとんどは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染することで起こるため、前もってHPVワクチン接種をしておくことで予防しやすくなります。

2023年4月からは「小学校6年生~高校1年生の女子」を対象に、子宮頸がんの予防効果が高い「9価HPVワクチン」接種が公費で接種できるようになりました。また、「1997年~2008年度生まれで、過去に2022年4月1日から2025年3月31日までにHPVワクチンを1回以上接種した女性」を対象に、公費での接種も行われています(2026年3月31日まで)。

<男子のHPVワクチン接種>

HPV感染は性行為によって感染するため、男女の間で感染を繰り返すこととなります。そのため、感染予防には男性がワクチン接種することも大切です。

アメリカ、イギリス、オーストラリアなど20か国以上の国では、公費でHPVワクチン接種が行われています。2020年12月以降、日本でも任意接種で男性が4価ワクチンを受けられるようになりました。なお、接種費の助成を行っている自治体も一部あります。

<子宮頸がん検診でやること>

HPVワクチン接種を受けても、完全にヒトパピローマウイルス感染症を予防できるわけではありません。そのため、子宮頸がん検診を受けることも重要です。

「子宮頸部細胞診・子宮頸がん検診」では、子宮の入り口である子宮頸部をブラシなどでこすって集めた細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞やがんになる前の病変の細胞を探します。 20歳を過ぎたら、症状の有無に関わらず、またHPVワクチン接種が済んでいる場合も、定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。

最後に子宮頸がんの予防法に関して、産婦人科の専門医に聞いてみました。

予防法に関しては、HPVワクチンに限ります。日本人のワクチン接種率が向上することにより子宮頸がんは確実に減らすことができる癌です。早期発見という点では、子宮頸がん検診を受診してください。出血やおりものがきになる際も婦人科受診をお勧めいたします。

ワクチンは今かかっているウイルスを無くすものではなく、新たに感染をおこさない、というワクチンです。またウイルスのタイプによってはワクチンを接種していても、子宮頸がんを発症することもありますので検診は今後も受けてください。

竹下 奨(たけした しょう)先生

一宮西病院 産婦人科/部長、産婦人科内視鏡センター長
資格:日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医