キリンホールディングスと、キリングループの健康食品メーカー・ブラックモアズは3月5日、キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」を配合した「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」を台湾で発売した。日本で製造し、ブラックモアズ台湾のECサイトで販売している。
同日、キリンホールディングスはメディア向けに「ヘルスサイエンス事業戦略説明会」を実施。今後のヘルスサイエンス領域に関する展望について語った。
■キリンの「プラズマ乳酸菌」が台湾に初進出!
キリンホールディングスはビール中心の経営からの脱却を目指し、近年はオーストラリア最大手の健康食品メーカー・ブラックモアズを買収し、ファンケルを子会社化するなど、ヘルスサイエンス事業に注力。「プラズマ乳酸菌」を配合した商品の国内外への展開を進めている。特に一昨年8月にブラックモアズがグループ入りして以降は、アジアパシフィックを中心としたビジネスモデルの構築とシナジーを探索してきたという。
今回発売された「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」は、キリンとブラックモアズが初めて共同開発した商品。台湾での「プラズマ乳酸菌」配合商品の販売自体が初となる。台湾ではビタミン剤や栄養補助食品の需要が継続的に伸びており、特に「腸内関連商品」は台湾のサプリメント市場全体の約20%を占める大きなカテゴリーとなっている。また、台湾の訪日客も日本のサプリメントに強い関心を示していることなどから、台湾への進出に踏み切った。
事業戦略説明会に登壇した同社 ヘルスサイエンス事業本部長の吉村氏は、「キリングループは、世界のCSV先進企業を目指し、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。健康志向の高まりで市場が大きく伸長する中、キリン、ファンケル、ブラックモアズ、それぞれの成長とその統合効果によって、アジアパシフィック最大級のヘルスサイエンスカンパニーになることを目指しています」と説明。
ブラックモアズについては、「アジアパシフィックで広くお客さまと接点を持ち、ナチュラルヘルスにおけるリーダー的ポジションを築いていることが強み。ヘルスサイエンス事業のグローバル展開を牽引してほしいと思います」と改めて期待を口にする。
また、同社が目指す海外展開の例として、「まさに本日、ブラックモアズとして初めて台湾でプラズマ乳酸菌を配合したサプリメントを発売しました。テスト販売からの開始となりますが、台湾におけるプラズマ乳酸菌の需要を確認し、今後の展開を拡大につなげていきます」との展望を明かした。
昨年は事業構造改革に関わる費用を計上したことで、ヘルスサイエンス事業における利益はマイナス109億円となったキリンだが、2025年はヘルスサイエンス事業初の黒字化を目指す。 吉村氏は「市場の恩恵とそれを上回るトップライン成長を推し進めながら、同時にコスト削減も追求し、2030年には売上収益3000億円と事業利益300億円以上の収益低減を目指します」と力を込めた。
この日の事業説明会にはファンケルの代表取締役である三橋氏も参加。2025年は主に、「ブランドマーケティングカンパニーへの変革」、「海外需要の成長シナリオの策定と実行」、「中長期構想の策定」に取り組むと明かす。
2024年度のファンケルは紅麹問題や中国における規制によって成長は鈍化したが、売上収益自体は前年超えを達成。化粧品事業も新たに投入した薬用化粧液「toiro」やリニューアルを果たした美容液「コアエフェクター」などの商品が好調に推移し、前年を上回る実績を達成したという。健康食品事業も新たに発売した「プレミアムカロリミット」が好調で、カロリミットシリーズ自体の水準も大幅に上昇。紅麹問題で離れた顧客も概ね戻ってきつつあるようだ。
「2025年はブランドマーケティングカンパニーへの変革を最優先課題として取り組んでまいります。 具体的には、キリンのブランドマーケティングの知見や人材を積極的に投入し、これまでとは違うレベルでのブランド力の強化にスピード感を持って取り組んでまいります」(三橋氏)
さらに三橋氏は、「化粧品事業については、肌不調を解消するファンケルというポジションをしっかり確立する年にし、健康食品事業については、シニアと女性にリソースを集中し、健康サポート企業としてのブランドイメージを形成していきます」と主張。「ファンケルブランドは40~50代女性に高い支持をいただいていますが、人口ボリュームゾーンである55歳~64歳のプレシニア層の構成比はまだまだ低く、この層を獲得することで、全体の成長につなげていきたいと考えいます」と述べた。
ブラックモアズのCEOであるアラスター・シミントン氏は、「世界的な免疫市場は5兆円規模になっています」と語り、ここで存在感を示すにはイノベーションが重要だと指摘。「台湾でプラズマ乳酸菌の製品を発売したのもイノベーションの一環。製品だけでなく、啓蒙活動や情報提供もし、さまざまな面から健康をサポートしたいと思っています」と語る。
また、「キリングループとなってからは非常に順調に物事が進んでいます。ブラックモアズは国際的な経験が豊富にあり、アジアパシフィックでの経験は40年以上にもなります。リーダーシップを発揮し、キリンの後押しをしながらアジアパシフィックへの展開を進めていきたいと思います」と展望を明かした。